第11話

「つ、冷たいぞ…。お兄ちゃんは悲しい」



見た目もいいが、しー兄の売りは声。



高すぎず、低いすぎないその声は、耳元で低音ボイスが木霊する。



(無駄にいい声なんだよな………)



しー兄は、より一層腕の力を強めた。




さらに重くなったと思いながらも、そんなしー兄を無視して、靴を脱いだ。




「今日は、仕事じゃないの?」



「さりげなくスルーか?


夜から歌番の収録があるから、それまで家で待機」




抱きしめられたまま、兄を連れて、いや、引きづってリビングに向かった。




私としー兄がリビングに入ると、ソファでくつろぐ弟がそこにいた。




振り向いた彼のゆるやかなウェーブがかかった金髪が揺れる。




成長過程の華奢な体をソファに預けて寛ぐ姿はどこぞの貴族を思い浮かばせる。




「おかえり。



何くっつけてんの?」

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