〈メッセージを送信できません。〉

墓守

@MItuYa0122 2024年10月15日

先に断っておく。

ここに今から書き記される内容は全て現実に起きたことである。証拠は私の証言だけであるが、どうか信じて欲しい。


つい先日、私は親友とともに"ある都市伝説"について調べ始めた。

その親友は都市伝説や妖怪などの魑魅魍魎的なものが昔から好きで大学でも地域に関する民族学なんてものを学んでいたそうだ。

私は都市伝説なんて科学的根拠のないものは信用していなかったが、高校時代の親友への恩から時たまにその調査に付き合っていた。

調査といっても、誰のものかも分からない墓や古びた廃墟を歩いて回るだけのものだったが、親友にとっては余程価値のあるものだったようで、調査後はいつも行きつけの居酒屋で酒を奢ってくれていた。

……話を戻そう。

先日の恐らく9日だったと思う、親友が私の家を突然訪ねてきた。私の家に来ることは前々からあった。友人の私から見ても礼儀正しくて真面目な親友がなんの連絡もなく私を訪ねてきたことに多少の違和感を感じたが、特にどうと言うわけでもなく親友を自宅に上げた。

訪ねた理由を聞くと、親友は興奮した様子でスマホを取り出した。そこにはとあるホームページが表示されていた。


〈ウキヨグイ〉


真っ黒な画面にただその文字が浮かび上がっていた。明朝体で、白い文字だったと思う。そこら辺は記憶が曖昧だ。

親友にこれはなんだと尋ねると、興味深い都市伝説だそうだ。親友がここまで興味を示すのだから、よっぽどよく出来た創話なのだと私はあまり真剣には取り扱っていなかった。元々そんなもの信じていなかったから。

なんでも〈ウキヨグイ〉はインターネット上にある都市伝説らしい。ホームページにアクセスして、失踪してしまうとか。

馬鹿らしい。第一、失踪なんて起きていたら警察が黙ってないだろう。私はそのようなことを言って親友の目を覚まそうとした。しかし、親友は私の言葉など聞きもしなかった。今考え直してみると、この頃から親友は少しおかしくなっていたのかもしれない。今更考えたって遅いことだろうけど。

親友はこの都市伝説の調査に私の手伝いを要求してきた。親友にはこの先いくら償おうとも返しきれない恩があった。いや、親友にとっては脅しの道具だったのかもしれない。私は仕方なく今回も調査を手伝うことにしたのだ。本当に、何故この時留まらなかったのか。後悔してももう遅い。


初めの頃、調査は難航していた。この都市伝説、知名度が極端に低いのだ。親友はどうやってこの都市伝説を見つけ出したのか。あの時の私は微塵も気にしてなかった。

調査開始から1週間が経過したころ。

匿名情報サイトで〈ウキヨグイ〉に関する情報がヒットした。藁にも縋る思いで私たちはそのユーザーとの対話を試みた。〈ウキヨグイ〉に関する情報提供を頼むと、そのユーザーは快諾してくれた。私たちは後日、リアルで会うこととなった。

ユーザーが指定したのは都心のとあるカフェだった。私と親友は都心暮しだったということもあり、承諾した待ち合わせ。親友は子どもの頃のようにはしゃいでいたのを覚えている。そう、無邪気な子どものように。


待ち合わせ場所に着いた私たちたちは慣れないお洒落な店内を見回しながら待ち人が来るのを待った。待ち人は思ったよりも早くやってきた。というのも、慣れない土地なので迷子になっているという旨の連絡があったのだ。指定したのはそちら側なのに迷子になるとは一体どういうことなのだろう。今思い返しても、あの人はおかしい。おかしい言動をとっていた。なのに、私も親友もその事には気が付かなかった。


待ち人は若い女の人だった。年は私たちより随分と下に見えた。もしかしたら未成年かもしれない。しかし、彼女の落ち着きようがいかにも大人の雰囲気だった。こういうのもなんだか、かなり美人な人で私も親友も暫くの間見蕩れていた。このことが恋人に知れたら私も酷く怒られてしまうだろう。

さて、本題に入ろう。女性は数ヶ月前、当時付き合っていた恋人と共に〈ウキヨグイ〉のサイトにアクセスしたそうだ。興味本意や好奇心など、都市伝説を信じるものにありがちな理由だったそうだ。しかし、〈ウキヨグイ〉にアクセスした数日後、恋人の言動がおかしくなることが増えたそうだ。何もない壁を見つめて笑い出したり、突然泣き出したかと思ったら次の瞬間には生気が抜けたような無表情になったり。女性は恋人を病院にも連れていったそうだが、大した結果は出なかったそうだ。

その恋人は今?親友が尋ねた。デリカシーにかける発言だと思い、親友を少しばかりしかろうとした。この発言も、親友らしくない。女性は親友の質問に対し、不思議そうに答えた。


「ここに、いますよ」


女性が指を指したのは、隣同士で座っていた私と親友の間。しかし、私たちの間には誰もいない。この時、私はやっと自覚した。この女性には関わってはいけないと。〈ウキヨグイ〉の影響かはともかく、この女性は怖い。本能がそう思った。とにかく、この場から逃げないといけないと。


私は親友の手を引いて無理矢理カフェを出た。親友は女性の話の続きを聞くと私の行動に抵抗したが、私は必死で親友の手を引っ張った。カフェを去る直前、女性が真っ黒な瞳でこちらをみて、こう呟いたのだ。



「あ〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉な〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージたを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信でもきません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉な〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉か〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉ま〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッだセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉よ〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送。信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉〈メッセージを送信できません。〉





………………ここまで、よんで、くださり、ありがとう、ございま、した。



〈ウキヨグイ〉は、あなたに、とどきましたか?










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

〈メッセージを送信できません。〉 墓守 @ro1014

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ