第14話:天宇受売命(あめのうずめ)

「そなたの許嫁の世戸御雷よこみかづち が人間界のそなたの彼氏を雷撃で黄泉の国に送ったと?・・・」

「で、そなた世戸御雷よこみかづちをフったのか?」

世戸御雷よこみかづちがなんとかしてくれと泣きついてきたわ」


「はい、世戸御雷よこみかづちは私の大切な人を死なせた仇です」

「そんな人と一緒にはなれません・・・許嫁解消です」


「許嫁から一変して仇か・・・まあ神霊とて人を殺せばそれもしかたなかろう」


「ですから、私、あの人を・・・遊星を救い出しに黄泉比良坂まで行きたいんです」

「まだ黄泉の国には行ってないと思いますから・・・」

「ですから黄泉比良坂へ行くために異界神獣鏡をお借りしに来ました」


「人間の男なぞ、放っておけばよいものを・・・」

「私の可愛い姫巫女のたっての頼みとあらば無下にもできまい」


「異界神獣鏡は貸してやろう、持っていけ、それから私の薙刀なぎなた三日月丸みかづきまる」も持っていけ・・・おそらく黄泉比良坂には死霊や魍魎が徘徊しておるだろうから・・・もし襲われるようなことがあればそいつらを三日月丸で薙ぎ払え!!」


「ありがとうございます、三日月丸もお借りします」


「お前の愛しい男を救い出してこい」

「遊月、その男を救い出したあとは、どうするつもりじゃ?」


「私は、遊星とともに地上界に残ります」

「私がいないと、その人世をはかなんで死んじゃうかもしれない、めっちゃヘタレ

な人なんです」


「そのような頼りない男がよいのか?」

「そう言う人だから、私がそばにいてあげないと・・・」


「許嫁ではなくなった世戸御雷よこみかづちに遠慮することももうないからのう」


「私、彼を愛してるんです」


「そうか・・・手間がかかる男ほど可愛いと申すからな・・・」

「そうと決まれば善は急げ、黄泉比良坂にはここから旅立てばよかろう」

世戸御雷よこみかづちにはそなたに手を出さぬよう釘を刺しておいてやろう」


「はい、ありがとうございます、黄泉比良坂まで彼を助けに行ってきます」


遊月は「天宇受売命あめのうずめ」から異界神獣鏡と三日月丸を借りて、そのまま黄泉の入り口「黄泉比良坂よもつひらさか」がある島根県まで飛んだ。

ちなみに黄泉の国は、死者の魂が行くとされる冥界のような場所。


だけど異界神獣鏡使って黄泉まで言っても生き返らせることができないと魂だけ

現世に持って帰って来ても意味がない。

そこで役に立つのが遊星が今首から下げてる遊月から貸してもらった「翠宝の勾玉すいほうのまがたま


翠宝の勾玉は別名「死返玉まかるがえしのたま」と言って黄泉の国の死者を蘇られることができると言う唯一の神宝のひとつ。

勾玉は特別に「天宇受売命あめのうずめ」から遊月に授けられたもの。


翠宝の勾玉は本来、召喚のために使う勾玉だから、「天宇受売命あめのうずめ」もまさか遊月の愛しい人を蘇らせるために役に立つとは思いもしなかった。


「黄泉比良坂でもって遊星を生き返らせないと・・・早くしないと遊星の魂は

三途の河を越えて黄泉の国へ行っちゃうよ」


つづく。




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