第24話 敵襲
「よーし、本日の訓練は終了だ! 各自機体を格納後リンクを解け!」
訓練司令官からの号令が響き、今日の活動は終了となる。
オレは操作していた『23式戦車K54号機』をハンガーに格納させる。
「ふう、いろはちゃんすげえな。オレよりも2週間以上カリキュラムが進んでいるなんて。」
戦車とのリンクを解いた後、オートロックの外れた操縦筐体から降りて背伸びする。
「でも、逆に考えれば約2週間後にはオレもいろはちゃんと一緒に並んで訓練できるってことだよな。」
そういえばいろはちゃんが言っていたではないか。
『このスーツ、身体に密着してとてもエロいんですよぉ!』と。
つまり、そうなればオレはそんなパイロットスーツを着たいろはちゃんと二人並んで訓練を受ける訳で、いろはちゃんの身体に密着したすばらしいスーツ姿を毎日拝めるという事に!
でも待てよ?
そうなると、男性用のスーツも体の線がくっきり出るのか?
となれば、オレの
嫌悪感を抱かせないように目立たず主張せず、ひっそりと控えさせておくべきか?
それとも、積極的アピールでその存在を誇示するかのように主張させておくべきか?
まあ、任意で自在に大きさを調整できるとは言い難いのでそもそも杞憂なのか?
そんなアホなことを真剣に考えていたところ、不意に大音量の警報音が鳴り響いた。
『敵襲! 敵襲! 敵の大規模打撃部隊が最終拠点『キベッタの街』に侵攻中! 各員、第一種戦闘配置に付け! 繰り返す、総員、第一種戦闘配置!』
えー、なにこれー。
きいてないよー。
もしかしてこれも訓練の一環?
いや、それにしては基地内の緊迫感がすごい。
「吉岡3尉! 聞こえるか!?」
そして、いまだ装着したままだったヘッドギアに上官様からの声。
「貴職ら【覚醒】組には本来は人型活動機体を用いての『アセンドミッション』に就いてもらいたかったが、吉岡3尉のパイロットスーツの調整が間に合わん! 川島曹長はそのままアセンド! 吉岡3尉は先ほどの操縦筐体に戻り『23式戦車K54号機』で出撃! 総力戦だ! 頼む!」
おおう、結構深刻な事態?
オレは言われるがまま操縦筐体に戻り、さっきまで操作していた『23式戦車K54号機』とのリンクを再構成する。
その間に入ってくる情報によると、どうやら今回の敵の侵攻は過去最大規模であるらしい。
最終拠点『キベッタの街』とは、月裏面に作成された『戦地ブリルリアル』における、『世界連合軍』の日本支部における、最初にして最後であり、唯一の拠点。
VRMMO『ブリルリアルの栄枯衰退』における、ゲームスタート地点の始まりの街と同じ名前だ。
そういえば、たしかあのゲームはスタート地点が多数あって、リアルな出身国毎に推奨の街が設定されていた。
そのなかで日本のプレイヤーに推奨されていたのが『キベッタの街』だ。
同じ国のプレイヤーが集まることにより、翻訳ソフトの誤変換やラグによる影響を受けずにプレイヤー同士のコミュニケーションが図りやすいというメリットがあった。
うん、いくら言語が翻訳されていても、文化や風習の異なる他国の人といきなり交流するのは難しいからな。
アジアの大陸の大国のプレイヤーは何故か日本人を毛嫌いしてPKとか普通にしてくるし、半島の国のプレイヤーは高圧的に接してきたりするしな。
そんなことを考えているうちに戦車とのリンクが終了し、オレの意識は月の裏へと飛ぶ。
◇ ◇ ◇ ◇
「吉岡3尉、出ます!」
うん、某ロボットアニメのニュータイプみたいなセリフだ。
って、あまり緊張感もなく出撃しちゃったけど、ここって戦場なのよね。
『トランス』のオレはいくらやられようと命に危険はないが、『スペース』の人たちは生身だからそうじゃないんだよな。
そう思い気を引き締めながら戦車を前進させる。
周りを見ると、味方はまだ陣容が整っていないらしく、敵の先遣部隊に散発的に攻撃を仕掛けているような状況。
そして上からの指令は、『味方の陣容が整うまで、少しでも敵の進軍を遅らせろ』とのことで、それっていわゆる捨て駒ですよね? それとも特攻隊?
で、わらわらと進撃してくる敵の部隊。
それを見た時、思わず叫んでしまった。
「ゴブリンじゃねえか!」
うん、月面での戦いだから、敵は宇宙人っぽいフォルムか、新鋭的なメカメカしいものだとばかり思ってました。
敵を『魔物』って呼称している意味がようやく分かったぜ。
『敵は小鬼型戦闘ゴブリンタイプ、約8千! その後方に中型歩行豚戦闘オークタイプ3千! さらに後詰多数!』
おいおい、スタンピードどころじゃねえよその数は。
オレは必死に戦車の主砲を発射する。
だが、一発の主砲で敵1体を屠るだけでは効率的にどうしようもねえ!
待てよ?
さっきいろはちゃんは『人型活動機体』での『トランス』で魔法を発動していたよな?
だったら。
オレだったら、この『戦車』でも何かできるんじゃね?
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