「ひっくり返してやりましょうか」

「『「"ギアスファイト"レディセット!!」』」



白掟 優義徒【仮作■■■■使徒】

VS

タマモノマエ【妖怪奇譚あやかし絵巻】



女性が私たちの戦いを止めようとしますが、光の壁のような物に遮られてこちらに近づく事が出来ないようです……邪魔が入らないのは良い事ですね。

私の背後にはいつも通りに【ルシフェリオン】が、タマモノマエの方は……狐の形の光が浮いていますね。

【ルシフェリオン】の姿に気づいたタマモノマエがその表情を歪ませます。



『「よくもまあ、妾の前に姿を見せれたのう……」』


『まだあの事を怒っているのか?まあ、過ぎた事だから気にするな!今度、召喚者に詫びの品を持ってこさせよう』


『「要らんわ!その代わりにその顔面をズタズタに引き裂いてくれよう……!!」』



めちゃくちゃ怒ってますけど何したんですかねこの人……まあいいです、私が勝てば多分何とかなるでしょうし。



「私の先行です、ドローフェイズをスキップしてカウンターブースト!」



優義徒 第一ターン

ライフ:10

手札:5 ターンカウンター:2



手札は……芳しくありませんが動けない事は無いです。

神聖なるエンジェリルモンスターも既に一人来ていますしね。



「アーティファクト【大聖堂】を発動し、【聖なる導師】をサモン!ふふふ、ターン終了ですよ」



金髪のシスターが現れますが、私の方を心配そうに見つめてから腕を組んで祈りの姿勢を取ります……どうしたのでしょうか?



『「妾のターンじゃ、ドローせずにカウンターブーストじゃ」』



タマモノマエ 第一ターン

ライフ:10

手札:5 ターンカウンター:2



ふぅむと唇に指を当てながら少し考えているタマモノマエですが、にんまりと笑んでから一枚のカードを使いました。



『「【未完の大器ヌラリヒョン】をサモンじゃ」』



【未完の大器ヌラリヒョン】

緑 コスト:1 妖怪

A:0 B:2


このモンスターが場に出た時に幻影カウンターを乗せる。

このモンスターが場にいる限り、幻影カウンターが乗ったモンスターを相手は効果で選べない。

幻影カウンターが乗ったこのモンスターは場を離れる代わりにこのモンスターの幻影カウンターを一枚取り除くことが出来る。

一ターンに一度、Aアタック:0Bバイタル:1コスト:1の種族が妖怪のスネコスリトークンを一体場に出せる。



着物を着た可愛らしい姿の少女が現れたかと思うと手招きをします。

すると、少女の足元に擦り寄るように丸っこい毛むくじゃらの生き物が姿を見せました。



『「【ヌラリヒョン】の効果でスネコスリトークンを場に出してここでアーティファクト【妖変化の陣】発動じゃ」』



【妖変化の陣】

緑 コスト:1 アーティファクト・妖怪


一ターンに一度、自分の場の妖怪モンスター一体を選択する。

そのモンスターを破棄して、デッキから破棄したモンスターのコストに2足したコストの妖怪モンスター一体を場に出す。

ターン終了時にこの効果で出された妖怪モンスターはデッキに戻り、Aアタック:0Bバイタル:1コスト:1の種族が妖怪のスネコスリトークン一体を場に出す。



怪しい光が地面に落ちたかと思うと、何かしらの文字が書かれた円陣となります。

その真ん中にスネコスリトークンが飛び込んだかと思うと旋風が吹き荒れます。



『「【妖変化の陣】の効果発動じゃ!スネコスリトークンよ、【一陣の風かまいたち】となるが良い!」』



【一陣の風かまいたち】

緑 コスト:3 妖怪

A:2 B:1


このモンスターが場に出た時、相手の場のモンスター全てと相手プレイヤーに1ダメージを与える。

このモンスターは防衛出来ない。



草刈り鎌を持った真っ白な毛並みのイタチが現れたかと思うとその手に持った鎌を全身ごと回転しながら振り回してきます。

文字通りの鎌鼬、風の刃が辺りにばら撒かれてその内の幾つかが【聖なる導師】と私に直撃します。

切り傷が刻まれる感覚と痛みは有りますが、傷口が鋭すぎるせいか血は流れてきませんが……面白くなってきましたよ。



優義徒 ライフ:10→9



「ふふふ……痛い、ですね」


『「その割には笑っておるな……気色悪い男じゃ。【かまいたち】よ、奴のモンスターを攻撃じゃ!」』



金髪のシスターが投げつけた十字架と【かまいたち】の放った風の刃が交差して互いを撃ち抜きました。

……防衛では無い為に大聖堂の効果を入れても【聖なる導師】は落とされてしまいましたね。



『「これで妾はターン終了じゃ、歯ごたえがないのう……もっと妾を興じさせよ」』


「私は楽しくなってきましたよ?」



仮面を被っていなければ締まりのない顔を晒していた事でしょう……それほどまでに口角が上がっている事が自覚出来ています。



「私のターン。ドローフェイズをスキップしてカウンターブースト!」



優義徒 第二ターン

ライフ:9

手札:3 ターンカウンター:4



「さあ、おいでなさい【神聖なる使徒エンジェリルミカエリス】!!」



先にアーティファクトの方を破壊したかったのですが生憎と手札に破棄する事の出来るカードが無いので【ヌラリヒョン】の方を狙う事にしました。

【ミカエリス】の放った炎を器用に避けていく【ヌラリヒョン】ですが、着物の端が燃えていることに気づいてキャーキャー叫びながら叩いて消していますね。



『「熱いのう……風情が無い奴じゃ」』


「ふふふ……すいませんね、先ほどから気が昂って仕方ないのですよ」



ふと、人の気配を感じて参道の出口の方を見れば見知った顔がちらりほらり……なんで一緒にいるのか分からなさ過ぎてもう笑えてきます。



「おや、今来たのですか……ふふふ、まあいいですよ。巻き込まれない位置で観戦していて下さい」


白掟ハクジョウ様!しかし……!!」


「逆らうのですか?お前たち如きが……なんて、冗談ですよ笑って下さい」



……私が笑ってと言ってるのにあの子達は動かなくなってしまいました。

そんなに変な事言いましたかね?ああ、そうだフォローはしないと。



「心配してくれているのでしょう?大丈夫ですよ、とっても私は元気ですからね……ふふふ」



手札を確認しますが、これ以上は動けそうにありませんね……仕方ありません。



「バトルです、【ミカエリス】で【ヌラリヒョン】を攻撃」



剣を構えて滑るように近づく【ミカエリス】ですが、純粋無垢な瞳で見つめ返してくる【ヌラリヒョン】に罪悪感が湧いたのか切らずに抱えてポイッとタマモノマエに投げつけて処理していきました。



『「ちっ……まあ、良いわ」』


「これでターン終了です」



盤面は微妙ですね……タマモノマエのデッキは緑系のようですがどうにも手応えがない。

動くとしたらこのターンからでしょうが……これでどういうデッキなのか判別出来たら良いです。



『「妾のターン、ドローせずにカウンターブーストじゃ……ククク」』



タマモノマエ 第二ターン

ライフ:10

手札:3 ターンカウンター:4



『「貴様に見せてやろう、妾の真の姿を!!」』



濃緑のオーラが放たれ、タマモノマエの背後にいた狐の形の光が彼女に溶け込みます。そして一枚のカードが谷間から抜かれて"ギアスディスク"に置かれます。



『「ターンカウンターを四つ取り除く事で妾のコストは0となる!誓約コントラクトサモン!九重護りし秘匿の祝福。我が寵愛を受けたくば頭を垂れるが良い!!来たれ、我が分身【幻想金毛九尾ジョイントナインテイルズタマモノマエ】!!」』



幻想奇譚金毛九尾ジョイントナインテイルズタマモノマエ】

緑 コスト:8 英雄・妖怪

A:0 B:9


このモンスターはサモンされる時に自分のターンカウンターを任意の数取り除き、その数だけこのモンスターのコストを下げる。

このモンスターが場に存在する限り、自分が増やすカウンターの数を倍にする事が出来る。

このモンスターがカードの効果で場を離れる時、代わりにターンカウンターを二個取り除く事が出来る。



紅色の瞳を持つ、大きさはゆうに3mを超える巨大な狐が召喚されます。

その黄金の毛並みは先に行く程に淡くなり、白に近い色合いとなっています。その尾の数は九……フサフサとしたソレは【ルシフェリオン】の言う通りに枕にすれば極上の寝心地が約束されているでしょう。



『「不埒なことを考えておるようじゃな……まあ良いわ、スペルカード【妖秘伝ー屍魂術ー】発動じゃ」』



【妖秘伝ー屍魂術ー】

緑 コスト:0 スペル・妖怪


このスペルはファイト中一度しか使えない。

デッキからスペルを一枚コストを無視して発動出来る。

この効果で発動したスペルはファイト中使えなくなる。



『「スペルカード【緑の繁栄】をデッキから発動じゃその効果でターンカウンターを4乗せるぞ」』


「4つ……!?そのカードの効果では2つの筈ですよ……!」


『「ククク……妾の効果により妾が乗せるカウンターの数は倍に出来るのじゃ。ターンカウンターもまたカウンターよ」』



それはまた……強烈なシステムモンスターが来ましたよ。

カウンターブーストするだけで4つもターンカウンターが増えてしまう……サモンの時に消費したコストも【緑の繁栄】で帳消しになってしまいました。



『「まだまだゆくぞ?【紅蓮怪猫かしゃ】をサモンじゃ」』



【紅蓮怪猫かしゃ】

緑 コスト:3 妖怪

A:2 B:2


このモンスターが場に出た時、デッキからカードを一枚ドローして手札のカードを一枚、デッキの一番下に送る。



真っ赤に赤熱している鉄の輪が走り抜けたかと思うと、その輪からひょっこりと可愛らしい三毛猫が顔を見せます。

猫はいつの間にか咥えていたカードをタマモノマエに渡した代わりに、お駄賃として別のカードを咥えて行きました。



「そぅれ、【妖怪変化の陣】の効果発動じゃ。【かしゃ】よ【戦場の嘆き歌がしゃどくろ】へと化けよ!」



【戦場の嘆き歌がしゃどくろ】

緑 コスト:5 妖怪

A:3 B:1


このモンスターが場に出た時、自分の墓地の妖怪モンスターをこのカードのコスト未満の数字になるように二体まで選択し、場に出す。



陣に鉄の輪ごと入った【かしゃ】がにゃんと一声可愛らしく鳴いたかと思うとその周りを無数の骨が取り囲みます。

骨たちはやがて一塊となって巨大な骸骨の形になり、ガラガラと耳障りな音を立てながら動き始めます。



『「【がしゃどくろ】の効果により舞い戻れ【ヌラリヒョン】、【かまいたち】!」』



【がしゃどくろ】が地面に両腕を突っ込み、しばらくしてから引っこ抜くと右掌の上には昼寝でもしていたのか気持ちよさそうに伸びをしている【ヌラリヒョン】が、左手では【かまいたち】の尾を摘んで持ち上げています。

【ヌラリヒョン】の方は優しく地面に降ろし、【かまいたち】はポイッと放り投げている所に何かしらの序列を感じますね……怒った【かまいたち】が鎌をやたらめったら振り回してその風の刃が私と【ミカエリス】に襲い掛かります。



『「【ヌラリヒョン】に乗せる幻影カウンターは妾の効果で二倍の二個じゃ。そして、【かまいたち】の効果でダメージを受けるが良い!!」』



優義徒 ライフ:9→8



先程のように身を裂かれる感覚は有りますがやはり傷口が鋭すぎて血は流れません……血が流れればどうしても頭の回転が鈍りますからね、まだマシでしょう。



『「【ヌラリヒョン】の効果でスネコスリトークンを場に出し……バトルじゃ!我が妖怪達よ、総攻撃じゃ!!」』



瞬間、腹部を中心に衝撃が襲います。

吹き飛ばされて浮き上がる体、視界の端に映ったのは拳を振り抜いた体勢の【がしゃどくろ】……殴られたのかと理解した瞬間に

喉元からせり上ってくる何かを飲み下します。仮面を付けたままですからね……悲惨な事になる未来が見えましたよ。

アッパーカットで殴られた為に浮き上がった体に【かまいたち】の追撃が来ます。

軽やかに中空を駆け上がる【かまいたち】はその手に持った草刈り鎌を直接私の背に振るいます。派手に飛び散る鮮血とは裏腹に、浅く肉を切られた程度のようです……先程の拳の一撃と併せても再起不能の傷ではありません。

恐らくは、ライフが残るからこそ死ぬ事は無い。痛みは本物でも命を失うまでには行かないようにしている……何故なら、死んでしまえばそこで"ギアスファイト"が終わってしまいますからね。



優義徒 ライフ:8→5→3



地面に落ちた時の衝撃も思った程ではありませんでした……浮遊したまま【ルシフェリオン】が私の元へ駆け寄ります。



『召喚者、生きているか』


「死んでしまったら返事出来ませんよ」


『それもそうだな……だが無理はするなよ。降参すれば死にはしない……奴の虜になる術を掛けられるかもしれんが一度なら私が退けられる』


「なるほど……もしもの時はお願いしますよ【ルシフェリオン】」


『任せるがいい我が召喚者よ……まあ、お前と私ならばあの狐に間違いなく勝てるだろうがな!!』



『ハハハハハ』と高笑いしている彼に苦笑が零れます。本人的には元気づけているつもりでしょうが、なんというか……面白いですね彼。

ゆっくりと立ち上がり、衣服に着いた砂埃を払ってから盤面を眺めます。

ターン終了を宣言しているようで【がしゃどくろ】の姿は無く、【タマモノマエ】、【かまいたち】、【ヌラリヒョン】、そして二体のスネコスリトークンと【妖怪変化の陣】が相手の場に存在しています。

こちらは【大聖堂】と【ミカエリス】のみ……ライフ差は大きいですが【ミカエリス】が残っているのは大きいです。

ターンカウンターはまだ心もとないですが……逆境に立たされている筈なのにすごく楽しいです。

さあ、ひっくり返してやりましょうか。









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