「招かれたって何に……?」
──時は少し遡る。
ーーーーー
アタシ達が
「ほんなら、兄ちゃん達ともお別れやなー」
「鏡富市に帰ったら今度は
「忙しくなければな」
「……また、会おう」
そして残ったのはアタシたち三人。
このまま一度帰っても良かったけど、
「修行の時は仕方ないけども、
「ウチの住まいと伏見稲荷結構近いし、起きたら"アポロ"から連絡来るし直ぐに合流したらええ。調子良ければウチらが伏見稲荷に着いた頃には起きてくるやろうしな」
「
「大丈夫や大丈夫。"アポロ"はまあ、頼りにならん事も多いけどアイツが何も言うてこーへんうちはなんも心配あらへん」
信用してるんだかしてないんだか分からないけども、そのまま押し切られてアタシ達は車で移動する事に。
殆ど外国の人ばかりのその町は辺りに赤い提灯や狐の書かれた垂れ幕があったりして何だかお祭りみたいね……香ばしい匂いが辺りに漂っていて、店先で何かを串に刺して焼いているのが見える。
「
「アレな、スズメや」
「スズメぇ!!?あのちゅんちゅん鳴いてるスズメっぺか!?」
スズメと聞いた瞬間に、すごい勢いで
「スズメってな、農作物食い散らかすんや。伏見稲荷は農業の神
「確かにスズメにはうちのおっとうにおっかぁ悩まされてたけんども……流石に食べはしないっぺな」
「ガッハッハッ、まあ食べたら美味しいで。いるか?」
アタシと
それがおかしいのかケラケラ笑っていた
「…………侵入者、またかいな」
「
「ゴメンな。ちょっとここら辺で待っといてーな、直ぐに戻るさかい!」
そう言い残すとすごい勢いで走っていった
「どうしたんだっぺな
「分かんないけど……どうする?待っておく?」
お小遣いはまだ有るから買い食いとかをして時間を潰す事は出来るけど、何だか胸の奥がざわめく。
「今のって……?」
「……なんでまた貴様らがここにいるんだ」
声を掛けられたから振り返ればそこには先ほど別れたはずの二人が……なんで
「あれー?また会ったっぺ〜」
「お二人も観光……ですか?」
渋い顔をしていた
「はく……知り合いと連絡がつかなくてな、この近辺に来たのは間違いないんだが……」
「……心配だから、俺たちは……ここに来た」
「それは心配ですよね……もし、良かったら探すのアタシ手伝いたいです!」
「わたすもお手伝いするっぺ!四人寄ればきっとすっごい文殊の知恵になるっぺな!」
「それはそういうことわざではないが……いや、今は素直に手伝ってもらおう。よろしく頼む」
そう言って頭を下げてくる
「ちょ、ちょっと頭上げて下さいよ!?」
「変な物食べたっぺ……?」
「食っとらんわ!!」
「……そういえば、朝から"
「それはダメっぺ!あそこのスズメ焼き食べるっぺな!」
「要らんわ!!何食わせようとしてるんだこの小娘は!!?」
ああ、良かった。イメージ通りに戻ったわ……
ぷりぷりと怒っている
「……すまない、あの人はその……悪い人では無いんだ。少し……熱くなりやすい」
追い掛けるアタシに
「そんなお二人が探してる人って……職場の同僚さんなんですか?」
「同僚と……上司だ。同僚は……頭が良くて、上司は……恩人だ」
しみじみと言う恩人という単語に色んな感情が篭っている気がした。
その人も良い人なんだと思う……だから、この人たちは直ぐに探しに来たのね。なら、早く見つけて安心させてあげなきゃ!
しばらく手分けして探したのだけれど、町の方にはそれらしい人はいなくて……大きな鳥居の前で合流した時には皆も同じ感じだったみたい。
「後探していないのは……山の方か」
「こっちから行けそうっ……」
変に声が途切れて、ふと見れば
「
「っ待て!!」
彼女の姿を探して大鳥居に走るアタシを追って
大鳥居をくぐった瞬間、耳元で鈴の音がなった気がした。
気がつけば辺りから観光客達が消えていて、目の前には呆然と立ち尽くす
「
「み、
涙目で抱きついてくる
「……出られません、
「この結界に取り込まれたか……?もしや
何かを呟いていた
慌てて追い掛けるアタシ達はそのまま参道を走っていく。
どこまで走っても人がいない……有名な千本鳥居があるゾーンも走っていく中でアタシはいくら走ってもちっとも疲れない事に気づいた。
でも、
「……すごい、な。体力が……よく、持つ…なんて」
「いつもはそんな事無いのですけど……何だか、ここだと元気が湧いてくるんです」
ゼィゼィヒューヒューと死にそうな呼吸をしていた
「……おい…あの……糸目…………どこ…行った?」
「糸目って……あれ?
振り返っても誰もいない。
「ミイラ取りがミイラか……または、あの糸目の少女が招かれたのか……」
「招かれたって何に……?」
「……この結界空間の主にだろう。そこは知らん」
これ以上、迷子を増やさない為にアタシ達はお互いの手を握って歩く事にしたの……横一列だから普通だったら他の人の迷惑になるけど、仕方ないわよね。緊急事態なんだから。
「誰かいる……
「
小さな影に向かって、恐らくは人名を叫ぶ
その声に弾かれたように頭を上げてこちらを見るのは……黒い髪の少し陰気そうな、多分アタシ達より年下の少年だ。
心細かったのか手提げ鞄を強く抱き締めたままポロポロと涙を零し始めている……まさかあの子が探していた同僚か上司の人?
「きし、さま……?ううう、怖かったデシ……誰もいなくて、大司教サマも…いなくなっちゃって……うわぁぁぁぁん!!」
「よく一人で耐えた、偉かったぞ
安心させるように抱き締めて、複雑そうな面持ちで少年──マネゴト?くんの背をポンポンと撫で叩いている
マネゴトくんが落ち着くまで少し時間が掛かり、鼻をズピズピ鳴らしながらようやく会話が出来るようになった頃には良いところを見せた
「それでお前は何故ここにいる?ホテルであの方といる筈ではなかったのか?ん?それに
「えっと……その…大司教サマに……言いくるめられちゃった……デシ」
「二人揃って?」
「ううう……」
「
「……分かってる。だが、こいつは曲がりなりにも我ら
「ごめんなさい……あの…なんで、あの子と……一緒…なんデシ………?」
「……チッ、成り行きだ成り行き。今はその事は関係ないだろう」
明らかに内輪話が聞こえているけど……カルマってなんか聞き覚えがあるのよね。
首を捻って思い出そうとした瞬間に、山頂の方から凄まじい爆発音と緑色の光の柱が見えた……距離は、結構近い。
「何あれ!?」
「あそこが本丸か……行くぞお前たち。貴様も来い、リボンの少女!!」
強引に腕を掴まれて、痛いけどもアタシはその言葉に頷いた。
マネゴトくんの方は
無言で歩いてくアタシ達……そこに近づいていくと男性の笑い声と衝突音、そして争うような声がだんだんと大きくなっていくのがとても恐ろしかった。
「──のターン。ドローフェイズをスキップしてカウンターブースト!さあ、おいでなさい【
山頂に着いた瞬間に閃光と共に現れたのは赤みがかった白いローブを纏った長剣を振るう深紅の髪の少女。
その少女が剣を振るうとその軌跡をなぞるように炎が走って辺りを焼き尽くさんばかり燃え盛る。
それにゾッとするような美しい微笑みを浮かべて対峙するのは緑髪に金髪が所々混じったような色合いの髪を結い上げた着物姿の大人の女性……何故か、アタシはその人が
『「熱いのう……風情が無い奴じゃ」』
「ふふふ……すいませんね、先ほどから気が昂って仕方ないのですよ」
所々切り裂かれたような傷のついた真っ白なローブに真っ白な仮面……アタシはソレをどこかで見た事がある。けれども思い出せない……もどかしい。
白いローブの男性はこちらに気づいたようでヒラヒラと気安く手を振ってくるのが見た目とのギャップもあって怖い。
「おや、今来たのですか……ふふふ、まあいいですよ。巻き込まれない位置で観戦していて下さい」
「
「逆らうのですか?お前たち如きが……なんて、冗談ですよ笑って下さい」
冗談には全く聞こえない声色だった。
石のように固まっている三人をクスクスと笑いながら怪人は何が楽しいのかくるりとその場で一回転してみせる。
「心配してくれているのでしょう?大丈夫ですよ、とっても私は元気ですからね……ふふふ」
うっそりと仮面越しに笑う怪人……やっぱりアタシは、この人を知っている。
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