「今悪口になったわ」

「私のターン……チッ、やりづらいな。ドローだ」



兜仮面&蛇仮面 第三ターン

ライフ:20

兜仮面手札:5

蛇仮面手札:4ターンカウンター:4



私の扱う【黒曜騎士オブシディアンナイト】はデッキに各種一枚しか入れられないという制約が有る代わりに破格のステータスと効果を得ている。切り札の効果を達成するには墓地に異なる名前の【黒曜騎士オブシディアンナイト】を揃えなければいけないがその時に一枚でも同名のカードが複数存在してはいけない。

普段なら制約が有るから気にならない条件だが、このタッグファイトでは話が別だ。

サーチ先を途絶える訳には行かないからと惹琴マネゴトがほぼ同じデッキを握っている為に気を使ってプレイしなければいけない。何でタッグファイトなんて提案したんだ私は……



「……スペルカード【騎士勲章授与ナイトセレモニー】を発動する」



騎士勲章授与ナイトセレモニー

黄 コスト:2 スペル・騎士


自分の場の騎士モンスター一体を手札に戻して発動出来る。

そのモンスターのコスト以下のアーティファクトを一枚手札に加える。



【トリスタンIXナイン】がこちらに恭しく礼をすると自分の腕に生えていた黒い結晶をこちらへと手渡す。

それに私が触れれば結晶は一枚のカードへと姿を変える。



「【トリスタンIXナイン】を手札に戻す代わりに破棄し、デッキからコスト3のアーティファクト【騎士よ邪悪を絶てラウンドオブカース】を手札に加える。そして【トリスタンIXナイン】よりコストが1大きい黒曜騎士オブシディアンナイトモンスターである【黒曜騎士オブシディアンナイトガウェインスリー】をデッキから場に出す」



黒曜騎士オブシディアンナイトガウェインスリー

黄・黒 コスト:4 騎士

A:2 B:4


このモンスターは自分の場に黒曜騎士オブシディアンナイトモンスターがいるならば場に出せない。

このモンスターの攻撃時に発動する。このモンスターのBバイタルを任意の数字分減らし、その分だけこのターン中、このモンスターのAアタックを上げる。

このモンスターが破棄された時、手札またはデッキからこのモンスターよりコストが1大きいまたは2小さい黒曜騎士オブシディアンナイトモンスター一体を場に出す。

このモンスターはデッキに一枚しか入れられない。



先端に湾曲した、ギロチンのように見える刃が付いた大剣を構えるのは両腕を黒い結晶に侵食されている騎士だ。

刈り込まれた短い金髪を逆立たせて目の前を見据えている。



「アーティファクト【騎士よ邪悪を絶てラウンドオブカース】を発動し……バトル!」



騎士よ邪悪を絶てラウンドオブカース

黄・黒 コスト:3 アーティファクト・騎士


自分の場に存在するモンスターが騎士モンスター一体だけならば、そのモンスターは二回攻撃を行う事が出来る。

二回目の攻撃を行った場合、そのモンスターに3ダメージを与える。



【ガウェインスリー】と【騎士よ邪悪を絶てラウンドオブカース】のコンボはそのまま通常のファイトならばゲームセットに持ち込める必殺のコンボだ。

万が一防がれたとしても後続による追撃で確実にダメージを与えられる……逃がしはしない!



「【ガウェインスリー】でダイレクトアタック!さらに攻撃時に効果発動!Bバイタルを3下げてAアタックを3上昇させる!」


「させない!カウンタースペル【妖精の悪戯ピーカーブー!】!」



妖精の悪戯ピーカーブー!

青・緑 コスト:1 スペル・妖精


相手の攻撃宣言時に自分の場にモンスターがいない時、発動出来る。

手札からコスト1以下の妖精モンスター一体を場に出す。

この効果で出した妖精モンスターはターン終了時に手札に戻る。



【ガウェインスリー】が攻撃しようと剣を振りかぶった時に突如として現れる【凍土の妖精アブソリューション・スプライト

驚いて身を引いた瞬間、彼の顔面に用紙が叩きつけられる。



「効果で手札から【凍土の妖精アブソリューション・スプライト】を出すわ!その効果により【ガウェインスリー】をフリーズよ!」


「やってくれたな……だが、スペルカード【黄禍絢爛】発動!」



【黄禍絢爛】

黄 コスト:4 スペル


自分の場のコスト4以下のモンスター一体を選択して発動する。

そのモンスターを破棄する事でそのモンスターの元々のステータスと同じステータスの黄禍トークン二体を場に出す。



用紙を破り捨てた【ガウェインスリー】が怒り狂いながら叫ぶとその影が二つに分裂して黄色い【ガウェインスリー】となる。

黄色い【ガウェインスリー】達は本体から力を奪い取ると剣を重ねた。その重ねられた剣を踏み台に、獅子を模した鎧の騎士が跳ね上がりながら現れる。



「【ガウェインスリー】を破棄して黄禍トークン二体を場に出し、さらに【ガウェインスリー】の効果でコスト2の【黒曜騎士オブシディアンナイトユーウェインVIシックス】を場に出す!」



黒曜騎士オブシディアンナイトユーウェインVIシックス

黄・黒 コスト:2 騎士

A:3 B:3


このモンスターは自分の場に黒曜騎士オブシディアンナイトモンスターがいるならば場に出せない。

自分の場にこのモンスター以外のカードが二枚以上存在する時に発動する。デッキからカードを二枚ドローする。

このモンスターが破棄された時、手札またはデッキからこのモンスターよりコストが1大きいまたは1小さい黒曜騎士オブシディアンナイトモンスター一体を場に出す。

このモンスターはデッキに一枚しか入れられない。



「【ユーウェインVIシックス】の効果で二枚ドローし、バトル続行だ!【ユーウェインVIシックス】で【凍土の妖精アブソリューション・スプライト】を攻撃!」



【ユーウェインVIシックス】の武器は獅子を模した鎧の両方の手甲ガントレットに付けられた四本爪の鉤爪だ。

妖精スプライト】が手裏剣のように何枚も投げつけてくる紙を全て切り裂き、そのまま本体もなますに切り裂いた。



「黄禍トークン二体でダイレクトアタック!!」


「くぅっっ!まだっまだぁ!!」



翠子&水兎 ライフ:17→15→13




「ふん、口程にも無いな悪の手先の小娘共め」


「そ、そういう言い方無いと思うっぺ!口悪ぃっぺな!!」


「悪口には悪口よ翠子ミドリコさん!!アンタみたいな奴に言われたくないわ!えーっと……このっ仮面の不審者!!!」


水兎ミトちゃん、それ悪口じゃなくて事実だっペ!!」


「お前の言葉で今悪口になったわ糸目女ぁ!!」


「い、糸目……気にしてるのに」


翠子ミドリコさんの糸目はいつも微笑んでるみたいなアルカイックスマイルのアレよ!!女の子のチャームポイント理解しないなんてさてはアンタモテないわね!!」


「モテなんて知らんわ!!白掟ハクジョウ様に好かれれば私はそれでいい!!」


「良いから騎士サマはとっととターン進めろデシ!!小学生と喧嘩するなよ社会人!!!」



まさかの横からの口撃に私の勢いが削がれる……くそ、惹琴マネゴトめどちらの味方のつもりなんだ。



「チッ、分かっている……ターン終了だ」


「わたすのターンだっぺ!ドローして……ターンカウンターは【豊穣の糧】の効果で増えないっぺ」



翠子&水兎 第三ターン

ライフ:13

翠子手札:5

水兎手札:1 ターンカウンター:6



「(何度も何度も強いモンスターが来るっぺ……そう言えば"オウドウ"さん言ってたっぺな。展開の補助してるアーティファクトを潰せって)……よーし!【妖精の恵み】の効果発動だっぺ!このカード自身を破棄して二枚ドローっぺな!」



こちらの場のカードを見て小さく頷いている糸目女に嫌な予感が走る……狙ってくるか。



「【豊穣の神主ハーベスティア・プリースト】をサモンだっぺ!」



豊穣の神主ハーベスティア・プリースト

緑 コスト:3 巫女・繁栄

A:2 B:2


このモンスターをサモンした時にデッキから【豊穣の慰霊祭】【豊穣の収穫祭】【豊穣の地鎮祭】から一枚を選択して手札に加える。



「効果で【豊穣の地鎮祭】を手札に加えてそのまま発動するっぺ」



【豊穣の地鎮祭】

緑 コスト:3 スペル・繁栄


相手の場のアーティファクト一枚を選んで発動する。

そのアーティファクトを破棄する。



「対象は……【騎士は消して引かずラウンドオブシール】!」


「させるか!スペルカード【騎士よ盾となれナイトオーダーセカンド】!」



騎士よ盾となれナイトオーダーセカンド

黄 コスト:4 騎士


自分の場に騎士モンスターがいる時に発動出来る。

自分の場のモンスター一体を破棄する。このターン、自分の場の騎士カードは場を離れない。



大きな鈴の着いた棒を振り回しながら現れた狩衣を纏った男性が、地面を踏み締めながら何かを大きな声で唱える。

すると、地面がたわんで波のようになってこちらに押し寄せてくる。

【ユーウェインVIシックス】がその波に向かって黄色い【ガウェインスリー】を投げつければソレを生贄と認識したのか、地面がパックリ割れて飲み込み、そのまま波は治まった。



「むー……なら、こっちだっぺ!【豊穣の狩人ハーベスティア・ハンターツクモ】をサモンだっぺ!」



豊穣の狩人ハーベスティア・ハンターツクモ】

緑 コスト:3 野獣・繁栄

A:2 B:1


このモンスターが相手にダメージを与えた時に発動出来る。

相手モンスター一体を破棄してそのBバイタルの数だけ任意のカードに豊穣カウンターを乗せる。



木々が生い茂ったかと思うと、その間を飛び交ってからマタギのような格好をした二足歩行するキツネが姿を見せた。

【ツクモ】は猟銃を構えたかと思うとその銃口をこちらへと向けてくる。



「バトルだっぺ!【豊穣の神主ハーベスティア・プリースト】で兜の人を攻撃だっぺ!」



鈴を棒から取り外したかと思うと、それをノックするようにこちらに打ち込んでくる狩衣の男性……やりたい放題だな、コイツ。



兜仮面&蛇仮面 ライフ:20→18



「続けて【ツクモ】も行くっぺ!」



猟銃が火を噴く。嫌な予感がした私は頭を左へ傾けると銃弾が仮面の端を掠めてそのまま背後の柱にめり込んでいった……嫌な音が仮面から響き、どうやらヒビが入ってしまったのだと分かる。



「実体化している……やはりネームドは影響を受けやすいか」


「ぴゃああああ!!?は、柱に傷付いちゃったっぺ!」


「攻撃が本当に起きてる……!?コレって、ソコロワと百火ヒャッカが戦った時と同じ奴じゃないの!?」



場が混沌としてきている中、懐に入れた携帯端末から着信が入る。

相手は……駆魔カルマだ。



「少し待て……」



少女達に背を向けて耳に携帯端末を当てれば、そこから駆魔カルマの大声が耳をつんざく。



「やっと繋がった!!!!白掟ハクジョウ様が大変な事になったから帰って来てくれよ!!!」


白掟ハクジョウ様に何があった駆魔カルマ!!!!!!」


「兎に角やべぇから早く来てくれよ!!アタシ達じゃこれからどうしたらいいか分かんねぇんだよ!!!」



パニックを起こしているのか話の内容が不鮮明だ。だが、白掟ハクジョウ様が危機なのは分かる。

惹琴マネゴトに視線を向ければ頷いて、"ギアスディスク"の強制終了ボタンを押す。

モンスター達の姿が消えて文字通りに"ギアスファイト"が強制終了させられる。



「モンスター達消えちゃったっぺ……」


「アンタら、逃げる気!?」


「貴様らより優先すべき事が出来ただけだ!!蛇仮面、行くぞ!!」



元引きこもりの小学生である惹琴マネゴトはそのままの歩幅では私に追いつけない。故に、その体を米俵のように担いで走り出す。



「ぐっうぇ!?乱暴に扱うなデシ!!」


「やかましい!!舌を噛むなよ!!」



少女達の間を抜けて、清水の舞台の端に足を掛けて跳ぶ。

一瞬の浮遊感の後に落下へと転ずる。重力に引かれるまま、木々が私たちに突き刺さる前に【ユーウェインVIシックス】がセットされたままの"ギアスディスク"を操作する。



「着地は任せたぞ【ユーウェインVIシックス】!!」



その言葉と共に蓄積された"サモンエナジー"を使って【ユーウェインVIシックス】が実体化する。

成人男性とそれに抱えられた男児を軽々と受け止め、一歩二歩と森を抜ける為に駆け抜ける。



「マジ許さねぇデシ……いきなり飛び降りる奴がいるか普通さぁ」


「言えば抵抗するだろうが貴様」


「そりゃそうデシ!!」



軽口を叩き合うも互いに反応はイマイチで、上の空なのが分かる……白掟ハクジョウ様がお互いに心配なのだ。

定例会で何も無いと思っていたのだが……心配だ、すごく心配だ……白掟ハクジョウ様。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る