「わたしの天使を返してもらいましょうか……!」
「……ターン終了です」
「よーしよし、じゃあ私のターンだ」
ほぼ白のカードで構成されている私の
ターンカウンターを8まで貯められたら【レミュリエス】が覚醒して詰みます。
それまでにライフを削りきらなければ行けませんが現状のライフはお互いに初期値です。盤面も私の方には
「折角だし、使わせてもらうね。ドローせずにカウンターブーストだ」
アポロ 第三ターン
ライフ:10
手札:7 ターンカウンター:4
「【
【
白 コスト:4 使徒・信者
A:3 B:3
このモンスターが場に出た時、相手の場のモンスター一体を封印する。さらに白のモンスターが存在するならば相手はスペルカードを使用する時に必要なターンカウンターを+1する。
このモンスターは白のモンスターとのバトルでダメージを受けない。
このモンスターはターンカウンターが8以上の時に場から破棄する事で【
白金の髪の少女が描かれたイラストは確かに愛らしいですが効果はいやらしいことこの上ないです。
封印の対象として選ばれたのは【ザドキエル】ですね……妥当です。封印されたというのを分かりやすくする為に【ザドキエル】のカードを裏にします……一瞬、イラストが悔しそうな表情に見えたのは気のせいでしょう。
「じゃあ【名も亡き太陽神】の効果だ……『予言しよう、コスト1の【白き制裁】』がデッキトップだよ」
「貴方、イカサマとかしていませんよね?」
「まっさかぁーぜーんぶ自前の勘さ」
デッキトップの【白き制裁】を破棄し、同じカードをアポロさんは手札に加えました。アド差がどんどん開いていきます……
判明している二枚のスペルカード【白き制裁】と【白夜創成】はどちらもこちらのプレイを阻害するカードです。
前者はスペルを、後者は場のモンスターの効果の無効及び封印が行えます……正直、大分厳しいです。
「……私のターン、【ザドキエル】の封印を解除の為にターンカウンターを消費します。さらにドローです」
ユギト 第三ターン
ライフ:12
手札:1 ターンカウンター:4
引いた札は更なる展開を約束してくれる札でした。
「私は【
「仕方ないねー【ミカエリス】の効果に合わせて【白夜創成】を発動だ」
【白夜創成】
白 コスト:4 スペル
相手の場のモンスター一体を選択する。選択されたモンスターの効果を無効にして封印する。
【ミカエリス】の効果による【名も亡き太陽神】の破壊は行えませんでしたが、大聖堂の効果が誘発されました。
サーチは好きです……運を天に任せないのが良い。
「私がサーチするのは「スペルカード【殉ずる魂】」で……す」
宣言したカードを全く同じタイミングでアポロさんも言いました。
イタズラが成功したような楽しげな顔で彼は微笑みます。
「そのカードで【敬虔な信徒】を破棄して、【レミュリエス】を封印。そして【ザドキエル】の効果も合わせてカードを二枚サーチするんだろ?破棄の方は発動コストだからサーチは止められ無いのが辛いねーHAHAHA…………まあ、スペルの本体の方は【白き制裁】で止めさせてもらうよ?」
「っ……どうぞ」
【殉ずる魂】
白 コスト:1 スペル・信者
自分の場の信者モンスター一体を破棄して発動する。
相手の場のモンスター一体を封印する。
【白き制裁】のコストとして【星見の前触れ】が破棄されていきました。
【殉ずる魂】のコストで【敬虔な信徒】を破棄したので破棄された【信徒】自身と【ザドキエル】の能力のトリガーが引かれます。
「【敬虔な信徒】の効果で【封魔の祈り】を、【ザドキエル】の効果で【
「とことん封印を狙ってくるねーまあいいよ、来なよ」
「バトルです、【敬虔な信徒】で【レミュリエス】を攻撃……【大聖堂】の効果で受けるダメージを1引き、さらに攻撃解決後に【封魔の祈り】で【レミュリエス】を封印します」
「流石にそれは止められないなー、やられちゃったねぇ」
ここまでカードを切ってようやくの封印です……【レミュリエス】の覚醒までのターン数を伸ばす事が出来ましたが代償は大きい。こちらも【ミカエリス】が封印されている為に覚醒までの時間が伸びてしまいましたが……リカバリーは出来ます。
「ターン終了です」
「ねーねー少しは雑談に応じる気は無いのかな?」
「……ファイト中はファイトに専念したいのです。特に、気の抜けない相手ならば尚更」
「おお……私の評価結構上がってるんだねぇ嬉しいねぇー」
「ここまでファイトが強いならばその道でも生きていけたのでは?」
「HAHAHA、プロサモナーなんかになったら趣味じゃなくて義務でファイトしなくちゃあいけないじゃないか!私はね、趣味として"ドレッドギアス"を楽しんでいるのさ」
アポロ第四ターン
ライフ:10
手札:5 ターンカウンター:5
【レミュリエス】を封印から解放し、さらにカウンターブーストを行ったアポロさんは悩んだ風に口元に手をやっています。
「さて、困ったね……このまま睨みあったままというのも面白くないからね。少し、派手に行こうか。【名も亡き太陽神】を対象に
【
白・赤 コスト:5 ユニオン
このユニオンは太陽神と名のつくモンスターにユナイト出来る。
このユニオンがユナイトされた時に相手の場のカードを一枚破棄する。
このユニオンをユナイトされたモンスターの
・このモンスターが攻撃した時に発動出来る。相手の場のモンスター全てに2ダメージを与え、この効果で破棄した数だけ相手プレイヤーにダメージを与える(上限五点)
「ユニオン……!?何ですか、そのカードは」
「これから世界に生まれる可能性の一つさ、特定のモンスターと合体させる事で進化を発揮するカードで、合体先のモンスターが破棄されるとユニオンカードも破棄される……使用条件が厳しいだけに、強力な効果を秘めているのさ……先ずはユニオン時の効果で【大聖堂】を破棄しようか」
他のTCGで言う所装備魔法……とかそういうカードなのでしょうか。
合体先のステータスを上昇させ、さらに新たな効果を与えるこのユニオンカードは新しい戦術を産めそうです……なのですが、いきなり初見の相手に出して来ないで下さい。販促的に私がこのユニオンカードによって敗北する流れじゃないですか……!!
「盤面に触りつつその上でモンスターに付与されるこの効果は……"ヒャッカ"少年の【クリカラ】と似た効果ですね……」
「あれれー?そういえばそうだねー、不思議なこともあるもんだ」
白々しい事この上ないです。
【大聖堂】を破棄しつつそう、心で吐き捨てる私を彼は面白そうに見てきます。
「笑いながら怪訝そうに見てくるなんて器用だよね……じゃあバトルだよ。【名も亡き太陽神】で【ザドキエル】を攻撃。ユニオン効果で"ユギト"くんの場のモンスター全てに二点ダメージ。【敬虔な信徒】が破壊されるからー……ついでに一点ダメージも食らってね」
ユギト ライフ:12→11
「【ザドキエル】の効果を二種発動です、先ずは【敬虔な信徒】が破壊されたのでデッキから【
【
白 コスト:4 使徒・信者
A:3 B:3
このモンスターが場に出た時、ターンカウンターを一つ増やす。さらに相手の場に緑のモンスターがいるならば相手は次のターン、ターンカウンターを増やせない。
このモンスターは緑のモンスターとのバトルでダメージを受けない。
このモンスターはターンカウンターが8以上の時に場から破棄する事で【
ターンカウンターを増やしてこれで5です、このまま行けばアポロさんより早く使徒たちを覚醒させられます。
「ふーん?まあいいか、私はターン終了だよ」
「私のターン、ドローせずにカウンターブーストです」
ユギト 第四ターン
ライフ:11
手札:1 ターンカウンター:7
これで7……次のターンで一気に決められます……!
「次のターンでキミのターンカウンターは8を超えるね、私よりも先に」
「そうですね、そうすれば打点は10を簡単に超えますから貴方は敗北しますね」
「まあねぇ……でも、私が先にターンカウンターを8にすれば話は変わるよね?」
一枚のカードがアポロさんの手札から抜かれます。
「スペルカード【
【
白・赤 コスト:3 スペル・神器
相手がターンカウンターを増やした時に発動出来る。
自分のターンカウンターを同じ数だけ増やす。
息が止まります。
シンプル故にどうやっても曲解出来ないその効果はアポロさんの【レミュリエス】を先に覚醒させる為のダメ押しでした。
目を見開いて固まる私にアポロさんは静かに告げます。
「次のターン、キミが【レミュリエス】を封印させても私はそれを解除した上でターンカウンターを8にする事が出来る……詰みだよ、"ユギト"くん」
「………………」
「困ってる困ってる、可愛いね」
思考は停止しかけていますがそれでも震える指先はカードを握ったまま、プレイを続行しようとします。
「【
「キミが引くカードは【
「っ!【
【
白 コスト:4 スペル・天使
自分の場の全ての天使モンスターのコストを足し、それを2で割った分だけ次に出す天使モンスターのコストを減らす。
自分はバトルフェイズを行う事が出来ない。
この効果でコストを減らした天使モンスターはターン終了時に破棄される。
「コストを4減らし、【
「それで?もう出来ることはないよね?」
「……ターンっ終了です」
追い詰められている、盤面もそして精神的にも。
果たして私は上手く笑えているのでしょうか?辛うじて出した【ルシフェリオン】を効果で破棄してそのまま【ルシフェル】へと進化させました……効果により全てのモンスターが封印されます。けれども、それでも焼け石に水です。
【ルシフェル】を出した影響か、胸に痛みが走ります。
ユギト ライフ:11→5
「ふふ、私のターンだ。ターンカウンターを消費して封印を解除……対象は勿論【レミュリエス】だ。そしてドロースキップでカウンターブースト」
アポロ 第五ターン
ライフ:10
手札:3 ターンカウンター:8
クイックイッと指を出されているのでご所望の【白のレミュエル】のカードをサブケースから出して渡しました。
「【ルシフェリオン】と違って、この使徒達はデッキに覚醒先を入れなくても良いのが使いやすいよねーさあ、覚醒だよ」
【
白 コスト:8 使徒・天使
A:6 B:6
このモンスターは【
このモンスターが場にいる限り、相手が自分のターン中に使えるカードは三枚だけになる。白のカードが相手の場にあるならばこの時使えるカードは一枚だけとなる。
このモンスターは相手の白のカードの効果を受け付けず、白のモンスターとのバトルでダメージを受けない。
このモンスターが場に出た時、コストが8以下になるように相手の場の白のカードを封印する事が出来る。
「【ルシフェル】のコストは10だから封印は出来ないね……まあ、気長に削ろうか。バトルフェイズ、【レミュエル】で【ルシフェル】を攻撃」
「【ルシフェル】は破棄される代わりに私のライフを半減する事で生き残ります……っ!」
ユギト ライフ:5→2
本来ならば【ルシフェル】の効果で相手のモンスター全ての
「苦しそうだね、大丈夫かい?」
「ご心配っ……なく、慣れてますから」
「……慣れちゃダメだよ、痛みになんてさ」
胸を抑えている関係で俯いている私にアポロさんの表情は伺えませんが、その声色にはあまり感じたことの無い色を感じました。
テーブルファイトのお陰か比較的痛みが少ないのもあり、深呼吸を数度して落ち着きを取り戻せました。
「賭けファイトでさ、キミにお願いしようとしてる事……教えてあげるよ」
「……私の能力の範疇を超えていないならば賭けファイトなんてしなくとも善処しますよ?」
「HAHAHA、キミに……いや、キミにしか出来ないことだけどきっとキミは嫌がる事だよ?」
『悪者ぶるのは辞めなよ』
「………………はぁ?」
「ほら、やっぱりそういう反応するー……私はね、キミも"
「それで……?」
続きを促せばアポロさんはらしくない、寂しそうな表情を浮かべますが、直ぐにいつものように笑いかけました。
「このまま行けば、キミの未来は真っ暗闇さ。私は……キミが今ならまだ道を変えようとするなら協力するつもりはあるし、力もあるつもりだよ。未来は決まってない……もう苦しまなくていいんだ、楽しもうよ人生を、"ドレッドギアス"を遊ぶみたいにさ」
「楽しもう……ですか」
ジッと自分のデッキと【ルシフェル】のカードを見つめればほんの少し、光ったような気がしました。
「そうさ、無理して悪者を演じる必要なんてない。本来のキミはそんな子じゃないだろう?」
「そう、ですね……無理しているように、私は見えますか?」
「見えるね、やりたくない事をしてるんだろう?辛いよね……」
悲痛そうに憐れむその顔に無性に腹が立ち、そして……急に可笑しくなりました。
「ふ、ふふ……はは、アハハハハハ!!!」
クスクスゲラゲラヒイヒイ言いながらひっくり返りそうな勢いで笑う私にアポロさんは目を丸くしています。
「ちょ、ちょっと!?大丈夫かい!!?」
「ハーハー……ああ、失礼大丈夫ですよ。ちょっと面白かったので……ふふ、勘違いしてますよ"アポロ"さん」
「勘違い……?」
「嫌々してるんじゃないです、楽しんでいるですよ私は。初心を思い出させてくれてありがとう"アポロ"さん」
「……楽しんでいるだって?」
「私はね、貴方が思うよりずっとやな人間なんですよ……そりゃあ悪い事をしたら心は痛みますが……ええ、認めましょう。それ以上に楽しいですとも」
ニッコリといつものような笑みを浮かべれば今度は逆に彼の動きが止まります。
心の中まで読まれていたと思っていましたが……そうではなかった、ならばまだ……私は負けない。
「続けましょう、私のターン…………ドロー」
ユギト 第五ターン
ライフ:2
手札:1 ターンカウンター:8
デッキトップから脈動を感じます、引いたカードは先程手に入れた……しかし、入れた覚えの無い逆転の
「自分の場の青のカードを破棄する事で【
【
黒・青 コスト:8 悪魔・使徒
A:6 B:6
このモンスターをサモンする時に自分の場の青のカードを一枚破棄しなければならない。
このモンスターがサモンに成功した時、相手の場のモンスターのコントロールを一体得る。
このモンスターがいる限り、元々の色が青を含むモンスターをコントロールしていないプレイヤーはカードを手札に加える代わりにデッキの一番下に送る。
破棄の対象は【ルシフェル】、ライフを半減する事で生き残り続けるこの人はこのようなコストにする時に最適なモンスターとなります。
ユギト ライフ:2→1
「
「貴方の勘が外れただけですね、仕方ないですよ。勘なんですからね」
早鐘のように打つ心臓の痛みも今や愛おしく、笑みを浮かべたままに【レミュエル】のカードを指差します。
「さあ、私の天使を返してもらいましょうか……!」
「……対抗札は無いね」
「ならばバトルフェイズ、【レミュエル】と【ルシフェル】で攻撃です」
アポロ ライフ:10→6→4
ファイトを終えた直後、力が抜けました。アドレナリンが切れたからでしょうか?瞼が酷く重く、襲い来る睡魔から逃れられそうにありません。
「"ユギト"くん…!?ねえ、ちょっと!!?」
焦るアポロさんの声を子守唄代わりに、私は意識を手放しました。
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