「情報を手に入れたのでしょう」/「アンタの部下になったつもりは無い」
ここ最近、ヒャッカ少年は調子に乗っていました。
反逆の六英雄【クリカラ】を手に入れてから連戦連勝の彼は【クリカラ】さえ出してしまえば勝てると思い込んでいます。
そろそろ分からせられるなぁと"ミラージュ"で天狗になっている彼にお灸を据えるのはやはりというかキョウマくんのようですね。
「貴様が持っている例のカード……渡してもらうぞ!」
ある日の"ミラージュ"に乗り込んできたキョウマくんは例の如く、黒色の金属球を地面に叩きつけて黒い霧を発生させてヒャッカ少年を強制的に"ギアスファイト"に取り込みました。
「な、なんだっぺかー!!?」
「聞いた事があります、"闇のファイター"と呼ばれる悪者がターゲットを逃がさない為に使う道具です」
「なんですって!?なんで"闇のファイター"が"
「恐らくは……どこからか"ヒャッカ"少年が持つ【クリカラ】の情報を手に入れたのでしょう。ソレを手に入れる為にきっと来たのですよ」
『お前が情報源だ』というキョウマくんの視線が痛いです。
ミト嬢、マイバラ嬢の心配そうな視線と裏腹にヒャッカ少年はやる気満々です。
「"闇のファイター"だろうと俺と【クリカラ】の力なら負けるわけないぜ!!」
「力あるカードに溺れた愚か者が……蹴散らしてやる!」
「「"ギアスファイト"レディセット!」」
炎柳 百火【革命竜の復活】
VS
黒鉄 恐馬【血濡れの復讐譚】
ヒャッカ少年の"ギアスモンスター"は相変わらず【クリカラ】ですね。
対するキョウマくんの"ギアスモンスター"は【
「行くぜ、俺のターン!ドロー!」
百火 第一ターン
ライフ:10
手札:6 ターンカウンター:1
「俺は【火ネズミ】をサモン!そしてスペルカード【
【
赤 コスト:1 スペル・炎
手札または場から火か炎モンスターを一枚破棄して発動出来る。
相手プレイヤーに1ダメージを与える。
「手札から【
「いきなりか……まあいい」
百火 ライフ:10→12
恐馬 ライフ:10→9
燃え盛るブタさんが自分の足をヒャッカ少年に投げつけてから、キョウマくんにしがみつきます。
そのまま燃え尽きた彼に敬礼しながらヒャッカ少年は豚足を頬張っていますね……ついに抵抗感なくなりましたか。
「俺はこのままターン終了だ!」
「俺のターンだ!!ドロー!!」
恐馬 第一ターン
ライフ:9
手札:6 ターンカウンター:1
「【
【
黒 コスト:1 野獣・血
A:1 B:2
このカードをサモンした時に、破棄しても良い。
そうした場合、相手はデッキから一枚ドローして自分はデッキから
嘶きと共に赤い液体に濡れたたてがみを振り回す馬が荷馬車を引いて走り去って行きました。
「【
「へっ、偉そうなこと言ってそれで終わりか「【ピエール】の効果発動!!」!?」
「ターン終了時、自分のライフが相手のライフより3以上少ない場合、一度だけこのモンスターを墓地から場に出す事が出来る!」
【
黒 コスト:4 人・血
A:3 B:2
自分または相手のターン終了時に自分のライフが相手のライフより3以上少ない時に、ファイト中一度だけ発動出来る。このモンスターを墓地から場に出す。
このモンスターがバトルを行い、勝利した時にこのモンスターの
馬車を切り裂いて、一人の貴族のような出で立ちの男性が降り立ちました。長剣を両手に一本ずつ構えてニヤリと笑っています。
「一ターン目からコスト4のモンスターを出してくるとはやりますね彼」
「そんなの言ってる場合じゃないですよユギトさん!」
私の楽観的な言葉にミト嬢の鋭いツッコミが飛んできます。
それに苦笑いで返しつつ、二人の様子を見比べました。ヒャッカ少年には慢心の色が強く見えます……絶対のエースの存在に頼りきっている。対するキョウマくんは私に負けた件もあり、油断は一切ありませんね。全力で潰しにいってます。
「っ、でもそれがどうした!俺のターン、ドロー!!」
百火 第二ターン
ライフ:12
手札:5 ターンカウンター:2
「俺は【
【
赤 コスト:2 野獣・火
A:1 B:1
このモンスターが戦闘で破棄された時に発動出来る。相手のモンスター全てに1ダメージを与える。
尾に火の着いた橙色の毛のイタチがその場で一回転しながら現れます。
そして、ヒャッカ少年が指差した先──【ピエール】へと走り出します。
「【
「愚かだな……迎え撃て【ピエール】!」
飛び掛るイタチを一刀両断する【ピエール】……だが、イタチは文字通りの最後っ屁をかましました。
「【
「だが【ピエール】は相手モンスターとの戦闘で勝利したとき、その差分のダメージを与える!」
爆炎に包まれる【ピエール】が最後の力を振り絞って、長剣をヒャッカ少年へと投げつけました。
その後、ヒャッカ少年は【火ネズミ】に追撃を支持していますね……キョウマくんがネズミに足を齧られています。
百火 ライフ:12→10
恐馬 ライフ:9→7
「ターン終了!!」
「所詮この程度か……俺のターン!ドローせずにカウンターブースト!」
恐馬 第二ターン
ライフ:9
手札:5 ターンカウンター:3
「【
【
黒 コスト:3 人・血
A:1 B:1
このモンスターが場に出た時、デッキの上から五枚までを破棄する。破棄した数だけライフを回復し、このカードの
黒いつばの広い帽子で顔を隠し、タキシードを着こなした男は背負っていた巨大な棺を降ろすと、扉を開きます。
そこから腕が5本伸びていってキョウマくんのデッキからカードを奪い去っていきます。
「【シャイロック】の効果で俺のデッキトップから五枚を墓地へ破棄する!そして【シャイロック】の
【
黒 コスト:1 屍
A:1 B:1
このモンスターが黒のカードの効果で破棄された時に発動出来る。自分のライフを2回復する
恐馬 ライフ:7→9
「黒は他の色以上に墓地から発動する効果が多いですからね……かなりのアドを稼がれましたよ」
「
「ライフアドもほぼ同点に持ち込まれてるし辛いわね……」
キョウマくんは【シャイロック】で【火ネズミ】を処理してからターンを終了しましたね……最後に彼が地に落としたカード、チラリと見えたアレが本当にあのカードだとしたらヒャッカ少年のこのターンが勝負の分かれ目になります。
ドローかブーストか悩んだ彼の答えはブーストでした。
「俺のターン……ドローしないでカウンターブーストだ!!」
百火 第三ターン
ライフ:10
手札:4 ターンカウンター:4
カウンターは4、いつもならば彼のエースである【ゴウエン】を出せるラインですね。
「俺はスペルカード【
【
赤・黒 コスト:4 スペル・火・犠牲
このスペルは相手にダメージを与えていないターンに発動出来る。
このスペルを発動する時に手札または場から赤または黒のカードを破棄する。
破棄したカードのコスト分のダメージを相手プレイヤーに与える。
この効果を使用したターン、相手プレイヤーにダメージを与えられない。
ヒャッカ少年が手札から投げ捨てたのはその【ゴウエン】のカード。
一瞬だけ姿を見せた【ゴウエン】が悲しげな表情を浮かべてからその身を火球に変えて弾け飛びました。
……【ゴウエン】を出して、殴ってから返しのターンに発動しても良かったはずです。でも、次のターンに一斉にモンスターを並べられても【クリカラ】の効果で一掃して逆に勝負を決めるというプランの方がヒャッカ少年には魅力的に見えたのでしょうね。
恐馬 ライフ:9→5
「…………雑なプレイングだな」
「うっせー!!ターン終了!!」
赤の決戦火力ともいえるスペルカードを叩きつけただけのヒャッカ少年に辛辣な言葉が投げ付けられました。
明らかに使い所ではなかったタイミングだったのも拍車を掛けているのでしょう。
「俺のターン……このターンで終わらせてやる。カウンターブースト!!」
恐馬 第三ターン
ライフ:5
手札:4 ターンカウンター:5
黒いオーラがキョウマくんから放たれます……つまりは、彼のエースのお出ましですね。
「
今回は口上付きでの出番のようですね。贄として差し出されたキョウマくんの手札を手に持つとソレを投げつけてヒャッカ少年の手札を弾き飛ばしました。
飛ばされた手札はヒラヒラと待って場に開示されます。
「【ハムレット】の効果を発動!俺の手札を一枚破棄して、お前の手札を見てから一枚選んで破棄する!!」
ピーピングハンデス、相手の戦術や対抗策を丸裸にする効果はいつの時代もどんなカードゲームでも強力無比です。
ヒャッカ少年の二枚の手札、一枚は【赤の燻り】、そしてもう一枚は……
「危ないな……俺は【
【
赤 コスト:3 スペル・火
モンスターが攻撃した時に発動出来る。
場のモンスター一体の
選択されたカードが【ハムレット】の
【クリカラ】の低い
「バトルフェイズ!その瞬間、墓地の【
【
黒・白 コスト:2 野獣・信徒
A:0 B:1
このモンスターが墓地にいる場合、バトルフェイズ開始時に発動出来る。このモンスターをデッキの一番下に送り、墓地のモンスター一体を場に出す。その後、手札を一枚墓地へ破棄する。
真っ白な毛がもふもふとした愛らしい羊がメェと一声鳴いてキョウマくんのデッキに向かいました。
するとその羊を追い掛けて一つの影が走り抜けます。
「【
【
黒 コスト:4 野獣・血
A:3 B:2
このモンスターは二回攻撃を行える。
それは二つの頭を持つ狼でした。
あともう少しという所で獲物を逃がした双頭狼の咆哮が辺りに響きます。
「えっと、二回攻撃が出来るモンスター……という事は3点ダメージが二回来るって事っぺ?」
「しかもあの"ギアスモンスター"の打点は5点だからこのままだと削り倒されちゃう……!」
「大丈夫だってば!【クリカラ】の効果でこのターンは耐えれるんだ……!」
そう言うもののヒャッカ少年の顔色は悪いです。
【クリカラ】の効果でも対応しきれないパターンがあります……例えば【クリカラ】の
このターンは耐え切れるが返しのターンで何とかしないといけないという焦りが見えますが……彼のその心配は杞憂となるでしょう。
「今度こそバトルだ!【
宣言と共に双頭狼が駆けます。ヒャッカ少年の肩口に二つの頭がそれぞれ噛みつきました。
百火 ライフ:10→7→4
「トドメだ!!【ハムレット】!!」
「俺のライフが0になる攻撃が来る時に!【クリカラ】はサモン出来て「そして攻撃してきたモンスターとバトルをする」っ!!」
「
火柱の中から飛び出した赤い竜を華麗な剣さばきで銀の髪の剣士は立ち向かって行きます。
放たれる火球を切り裂き、爪牙による攻撃も剣先で逸らし、力を込めようと【クリカラ】が動きを止めた瞬間に喉元の急所を貫いていきました。
「……【ハムレット】が勝利した時、その
百火 ライフ:4→0
ヒャッカ少年が膝から崩れ落ち、地面に手を着いています。
そんな敗北に打ちのめされている彼に近づいたキョウマくんは"ギアスディスク"にセットされたままの【クリカラ】のカードを奪おうと手を伸ばした瞬間に炎が蛇のような形となってキョウマくんに襲い掛かります。
「くっ!?」
炎に怯んで後ずさったキョウマくんに追撃は飛ばず、ヒャッカ少年を守るように巻きついています。
「随分と好かれているな……!」
「そこまでであります!!」
薄くなった黒い霧を黄金の光を纏った拳が振り払います。ソコロワ嬢が実体化させた【モンザエモン】の拳がキョウマくんへと迫ります。
バックステップで避けていった彼は無地のカードを懐から抜きました。
「邪魔が入った……だが、そのカードは次こそ貰い受ける!!」
そのまま影も形も無く姿を消してどこかへ行ったようです……ソコロワ嬢が鼻息荒くキョウマくんがいた辺りへ走ってきます。
「逃がしたでありますか……!"
「
今度はミト嬢とマイバラ嬢がヒャッカ少年の元に走って助け起こしていますね……一応、私も追従しましょうか。
「大丈夫ですか?」
「勝てなかった……くそっ!なんでだ……!!」
【クリカラ】を手に入れてから初の挫折……ここからどう立ち直るかが見せ場ですね。
ーーーーー
「何がしたいんだアイツは……」
奴は子供たちを友達と言っていたがソレは方便だと俺は思っていた……だがそれならば奴自身が動けば良いのに……何が目的だ?
奴の思惑なのかもしれないが、教団側の指示で動いたのは俺の独断で、関係もない。だからこそ組織からは特に咎めも無いだろうと考えていた直後に組織からの連絡用端末が鳴る。
「……もしもし」
『ヨウ、聞いたぜ?お前派手にやらかしてンなぁキョーマ』
息が止まる。
訛りの強い日本語、低めのその声は紛れもなく……
「なんで……首領が…?」
『アア?オイオイ、これでもオレは情け深いリーダー様だゼ?最近来たばっかの期待のシンジンくンが心配だったンだよ』
心配と口では言ってるが明らかに面白がってる風の首領はさらに続ける。
『あのクソキョーダンに喧嘩売るのはナイスだ、褒めてやる。だがシッポ振ンのはダメだな……エエ?テメェは誰の部下だ?』
「俺は……教団に復讐する為に組織に入っただけだ。アンタの部下になったつもりは無い」
返答は耳鳴りがする程の馬鹿でかい笑い声だ。
『ギャハハハハ!!!イイねぇ、イイ!!生意気にも程があンぜキョーマ!!その復讐の為ならクソキョーダンの力も借りるってか?ギャハハハ、マジサイコー!面白ぇわお前!!』
それから数分、笑いの発作が治まった頃に首領は息を整えて静かになった。
『キョートだ、キョートに行けキョーマ』
「キョート……京都の事か?」
『ソレだソレ。そこに特別なカードが有るって情報を掴んだ。分かるな?オレがその情報を渡した意味が』
組織の為に盗って来い……ソレで教団から助力を受けた事は不問にするという事だろう。
ブチりと切られた通話は返事を返す間も与えられず、見上げた夜空は青白い月が煌々と輝いていた。
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