「このまま終わるわけが無いでしょう?」
それから数日は何事もなく過ぎていきました。
……いえ、ある意味とんでもない問題は発生しましたね。
『おい、いつまで寝ている起きろ我が召喚者よ』
「まだ朝の七時ですよ……」
『もう七時の間違いだろう?私を扱う者がなんだその体たらくは……人々を導く者として見本となるように動け』
スカスカと頭を半透明な【ルシフェリオン】の腕が貫通して行きます……痛みとかは無いのですがなんかこう、ヒヤッとするのですよね、眠気が飛んでしまいます。
そう、カイエン(?)とのファイト以降【ルシフェリオン】の実体化の強度が上がったのです。会話が可能となった彼(相変わらず声質で男女の区別がつかないので男性と仮定)は中々お喋りな方だったようで事ある毎に姿を見せては私の世話を焼こうとしてきます。
「分かりましたよ……」
『よし良いぞ。さあ、今日もまた人々を救う為に働くのだ我が召喚者よ』
「はいはい」
身支度を整えれば例の如く待機しているジュンくんと目が合いました。
……ここ最近は朝の祈りにも私が出るようになったので出待ちするようになったのですよねこの人。
「おはようございます"
「おはようございます……そうですね、朝の祈りを終えたら少し私用がありますので……着いて来なくて大丈夫ですからね?」
最後に付け足した言葉にショックを受けたのか捨てられた犬のような目をした彼に胸の奥が締め付けられます。
「……やっぱり、着いてきますか?」
「はい!!!是非に!!!」
一転して目を輝かせる彼は嬉しそうに笑顔を向けてきます。通りすがりのシスターの子がそれを目撃して二度見してからその場に倒れていますね……ジュンくん、普段はこういう表情しませんからね。推している人には凄まじい破壊力だったのでしょう。
倒れた子を介抱して、朝の祈りを済ませた私たちは裏口で集合する事にしました。
私はいつもの野暮ったいパーカーにスウェットパンツと認識阻害メガネのラフなスタイル。ジュンくんはスーツにネクタイをビシッと決めていて彼の王子様的な雰囲気も合わさって若社長という感じになっていますね。
「"ジュン"くん、今日向かうのは文字通りの私用なのでもう少し砕けた風に私に話して下さいね」
「はい!
「先ずその様付けやめましょうよ"ジュン"くん……私と貴方の年齢はさほど変わりませんし"ユギト"と呼び捨てにしてもらって構いませんよ」
「なっ……は、
「名前で呼んで下さい……はい、練習ですよ頑張って」
「ゆ、ユギ……トっ様」
「様は要らないです。はい、もう一度」
それから詰まらずに私の名前が呼べるように練習していたのですが……そこまで難しいものなのですかね?
しばらくして何とかさん付けまでランクを落とす事が出来たジュンくんは疲労困憊のままガッツポーズを決めています。
「よく頑張りました、偉いですね"ジュン"くん……そうだ、貴方もこういう私用で動く時に正体隠す必要が有るので私と同じようなメガネ作りましょうか」
『今日の所はこれでお茶を濁しましょう』と予備のメガネを渡せば彼はフルフルと震え始めました……流石に私の予備は嫌でしたかね?
「嫌でしたか?それなら他のを「いえいえいえいえ!!!光栄です!!嬉しいです!!家宝にします!!!」…………まあ、"ジュン"くんが良いなら良いのですけど」
メガネを両手で天へと掲げるジュンくんの姿は傍から見ればだいぶ愉快ですが、当事者側からしてみると恐怖すら感じますね……時間を確認すればちょうど良い頃合です。
テンションがかってないほどに高まりきった彼を落ち着かせ、私たちは月末ショップ大会の開かれている"ミラージュ"へと向かいました。
「"ユギト"さんこんにちはだっぺ〜お隣の人はお友達の人だっぺ?」
「こんにちは"マイバラ"嬢。こちらは……まあ、お友達の"ジュン"くんです」
「……"
マイバラ嬢と少し元気の無いミト嬢を見つけたので声を掛けようと近づきました。
どうやら決勝が始まるタイミングだったようで、特設舞台ではヒャッカ少年とソコロワ嬢が"ギアスディスク"を構えて互いに向かい合っていますが……ヒャッカ少年が使っているのはアレ、教団製のディスクでは?
後、サラッとなんかカミングアウトしてませんか?ジュンくん??
「部下……!?"ユギト"さん偉い人だったっぺか!?」
「知らなかったのか?"ユギト"様は素晴らしいお方でその下には何人もの「"ジュン"くん」はい!!!」
「今は私用という事を忘れないで下さい。私はここではただの"ユギト"です、覚えていますね?」
「……はい、申し訳ございません」
口を滑らせそうになったジュンくんに再度釘を指し、ため息を吐きます。そして、先程からずっと
「"ミト"嬢、大丈夫ですか?」
「あ……"ユギト"さん…この前っ………」
「この前?」
「……この前来たあの子、"ソコロワ"って子に負けちゃったんだアタシ」
何かを言おうとして、飲み込んだミト嬢は常の元気さが嘘のように意気消沈していました。
準決勝でソコロワ嬢と戦ったこと、その時に普通のお子様に負けるわけがないと言われて逆に倒してやろうと奮起したこと、そして負けてしまったことをゆっくりとミト嬢は話してくれました。
「アタシ……あんなこと言われて勝てなかった、悔しい……」
「勝負事はどうしても勝ち負けが発生します、大事なのは勝敗が決まってからの心持ちです。勝利に傲るか、敗北を糧にするか……貴方は強くなります、だから今は見守りましょう"ヒャッカ"少年の戦いを」
「…………うん」
重症ですね……私の言葉は寄り添う為の言葉です。彼女に必要なのはきっと私の言葉とは違う……背を押す為の言葉。
ミト嬢の横に立ったまま、始まっていたヒャッカ少年とソコロワ嬢のファイトを眺めました。
ヒャッカ少年の"ギアスモンスター"は【ゴウエン】から【クリカラ】に変わっていますね。
ソコロワ嬢の"ギアスモンスター"は……何なのでしょうかアレは……金色の円柱?いえ、棺でしょうか……奇妙なモンスターということは確かですね。
「行くであります!小官のターン、ドロー!」
レジーナ 第二ターン
ライフ:4
手札:4 ターンカウンター:2
ヒャッカ少年の場には【
「一ターンに一度【
【
黄 コスト:1 アーティファクト・カラクリ
自分のターンに一度、このアーティファクトにネジマキカウンターを1乗せる事が出来る。
自分の場に
「【
【
黄 コスト:1 カラクリ
A:1 B:1
このカードが場に出た時に自分の場にこのモンスター以外のエイプリルと名の付く
赤いラインの入ったブリキのおもちゃのような兵士が現れたかと思うと、場にある巨大なゼンマイを回そうとしました……しかし、一回転させた所で逆に弾かれて二回程ゼンマイが逆回転をします。
それに慌てて、首に下げていたホイッスルを吹くと見た目がそっくりなブリキの兵士が出てきてゼンマイを一回転させました。
「【KITERETU】の効果でネジマキカウンターを一つ乗せるであります……そしてカウンターを2消費して
なるほど、あの巨大なゼンマイにカウンターを乗せてそれを消費して展開をする……形としては私の
「まだでありますよ、【
【
黄 コスト:1 カラクリ
A:1 B:1
このカードが場に出た時に自分の場にエイプリルと名の付く
今度は緑のラインが入ったおもちゃの兵士が現れます……そしてこちらも同じようにゼンマイを回そうとしますがビクとも動かずにまた二回逆回転をして、例の如くホイッスルを吹いて同僚を呼んでいますね。
しかし、カウンターの消費が激しいとはいえ4体のモンスターを出すとは……しかもまだ動くのですか。
「ここでアーティファクト【
【
黄 コスト:2 アーティファクト・カラクリ
このアーティファクトが場にある限り、【
自分の場の
木製の遊園地でしょうか?ゼンマイが至る所に突き刺さったジェットコースターやメリーゴーランドなどの遊具が展開され、ソコロワ嬢の場にあった巨大なゼンマイが空を飛んで一番目立つ所にある和風のお城の頂点に突き刺さりました。
「【HIRAGA】の効果で先ずは
【
黄 コスト:1 カラクリ
A:1 B:1
このモンスターが場に出た時、【
一ターンに一度、相手の場のモンスター一体に1ダメージを与える。この効果を使用したターン、このモンスターは攻撃出来ない。
赤のおもちゃの兵士の同僚が敬礼をしてからジェットコースターに乗り込みました。絶叫とも軋みとも取れる音と共に走り出すジェットコースターは途中で洞窟のような場所に入ります。
そこから出てきた時には同僚の肩には大きな大砲が二台取り付けられていました。彼(?)は颯爽とジェットコースターから降りると城のてっぺんに向かって砲弾を打ち込みました。
砲弾は見事に巨大なゼンマイを一回転させ、満足そうにしているおもちゃの兵士はソコロワ嬢へ何やらカードを手渡しました。
「【エイプリル弐式】の効果で【KITERETU】にネジマキカウンターを乗せて、更に【
【
黄 コスト:1 カラクリ
A:1 B:1
このモンスターが場に出た時、【
一ターンに一度、相手の場のモンスター一体に1ダメージを与える。この効果を使用したターン、このモンスターは攻撃出来ない。
怖々と乗る緑のおもちゃの兵士は剣を携えて帰ってきたようですね。華麗に遊具の間を飛び跳ねて巨大なゼンマイを斬撃で一回転させています。
「ネジマキカウンターを一つ乗せて合計で3!【
大砲による砲撃と斬撃が二刀流の剣士を襲っていますね……的が小さいからか、がむしゃらに剣を振っても当たらず、そのまま倒れてしまいました。
「バトルであります!壱式二体で
「お前だってちびっ子なのに少年呼びすんじゃねーっての!カウンタースペル【火遊び注意!】を発動だぜ!!」
【火遊び注意!】
赤 コスト:1 スペル・火
モンスターが攻撃した時に発動出来る。
相手の場のモンスター全ての
ヒャッカ少年が腕を振るうようにスペルカードを使いました。すると、火花が走りソレがおもちゃの兵士達に掛かって引火しました。
そこからはパニックの始まりです。装備を脱ぎ捨てる子や地面を転がって火を消そうとしている子がぶつかったりして阿鼻叫喚です。
「これくらいは防いで貰わないと困るであります……ターン終了であります!」
「いくぜ、俺のターンドロー!!」
百火 第三ターン
ライフ:10
手札:4 ターンカウンター:3
「【
【
赤 コスト:3 人・炎
A:2 B:2
このモンスターが攻撃する時に発動出来る。
相手の場のモンスター一体を選択して、このモンスターの
手足に燃え盛る輪を付けた赤銅色の髪の少年が踊るように場に降り立ちます。
少年が拳を振るうと同時に炎の塊が大砲を担いだ兵士に直撃します。盛大に火薬に引火して吹き飛んだ兵士の敵討ちとばかりにもう一体の赤のおもちゃの兵士が背後から飛び掛ります。
「【エンジュ】で【エイプリル壱式】を攻撃して効果発動だ!【エイプリル弐式】に2点のダメージ!」
後ろからの奇襲も【エンジュ】にはお見通しのようで後ろ回し蹴りが炸裂して華麗にノックアウトですね。
「まだ終わりじゃないぜ!スペルカード【赤き燻り】だ!!」
【赤き燻り】
赤 コスト:1 スペル
自分の場の赤のモンスター一体を選択して発動する。
そのモンスターはこのターン、もう一度だけモンスターに攻撃する事が出来る。
赤の汎用カードですね……これで【エンジュ】は2回目の攻撃が可能となってソコロワ嬢の場は更地になってしまいます。
「前のめりになってますね"ヒャッカ"少年……数日の内に何か変化があったのでしょうか?」
「前までの"
暴れる【エンジュ】は残り二体の兵士たちを道連れに大満足で倒れていきました。それに対してソコロワ嬢は【
【
黄 コスト:1 スペル・カラクリ
このスペルが発動したターンに破棄された
「"ミト"嬢との戦いで守ってばかりではダメということを学んだからですよきっと。彼は敗北を糧に成長出来たということです」
「…………」
ギュッとミト嬢が自分の手を強く握っているのが見えました。彼女の中で自問自答が繰り返されているのが手に取るように分かります……そこに空気の読めない彼がマイバラ嬢を引き連れて舞い戻ってきました。
「
「えっと…………【オオモリサマ】の効果で一網打尽だっぺ!」
「……それでは根本的な解決にならない。緑にもアーティファクト破棄効果のあるスペルはある筈だ。先に展開を補助する【KITERETU】と【HIRAGA】を除去する事を考えろ」
「なるほどだっぺ〜勉強になるっぺな!」
どうやら、見ていない間に仲良く(?)なっていたようですね。ジュンくんはかなり無愛想な喋りをする人ですが、教えを請われればソレにきちんと対応してくれる優しい子です。
素直で尚且つ、のほほんとしたマイバラ嬢とは相性が中々良かったようですね。
「ところでそこのお前……リボンを付けたお前だ」
「な、何ですか急に来て……?」
「"ユギト"さんに失礼なことはしていないな?」
「してませんけど……本当に急に来て何なんですかアナタは」
「始めに名乗ったのを忘れたのか?まあいい"ユギト"さんは優しいお方だ。弱っている者、困っている者が誰であろうと手を差し伸べて助けてくれるまさに
「……確かに"ユギト"さんって優しいですよね。アタシが落ち込んでるのを今も慰めてくれて…………よし!」
パチンと自分の頬を叩いてミト嬢は気合を入れ直したようです。そしてこちらに頭を下げてからニッコリ微笑みました。
「ずっとクヨクヨしてるなんてアタシらしく無かったです!もう、大丈夫ですありがとうございました"ユギト"さん!」
「"ミト"嬢が元気になったのならそれで良いのですよ」
私も微笑みで返し、再びファイト中の二人に視線を向けました。
第三ターンはお互いに派手な動きは見せず、ヒャッカ少年が【HIRAGA】を破壊したようですね。
「【
【
赤 コスト:3 人・火
A:1 B:1
このカードが場に出た時、相手の場のカードを一枚破棄する事が出来る。この効果により相手の場のカードを破棄出来た場合、デッキから破棄したカードと同じコストのカードを墓地に破棄する。
【
赤 コスト:2 野獣・火
A:0 B:2
このカードが破棄された時、自分の場に火モンスターがいればライフを2回復する。
墓地から飛び出た火の付いたブタさんを巨大なハンマーを担いだ厳つい大男が叩いて気絶させました。
そして、そのまま草むらにブタさんを連れていくとしばらくしてから美味しそうなステーキをお皿に乗せて戻ってきます……お皿を差し出されたヒャッカ少年は頬をヒクつかせながらそのステーキに触れましたね。
百火 ライフ:10→12
「俺はこれでターン終了だ」
「ライフを増やしたとて無駄であります……このターンで終わらせるでありますよ!小官のターン、ドロー!」
レジーナ 第四ターン
ライフ:7
手札:4 ターンカウンター:4
「【
【
黄 コスト:2 スペル・カラクリ
手札を一枚捨てて発動出来る。
自分の墓地から
この効果で場に出したモンスターは効果の使用及び攻撃を行う事が出来ず、ターン終了時に墓地に破棄される。
ソコロワ嬢の前に出現した法螺貝を彼女は力いっぱい吹きました。独特の低く響き渡る音色に引き寄せられて疲れた顔のおもちゃの兵士達が四人帰ってきました。
「ゼーゼー……
ついに10まで貯まったネジマキカウンター、そしてソコロワ嬢から黄色い光が放たれます……来るようですね。
「行くであります!
【
黄 コスト:8 カラクリ・英雄
A:2 B:4
このモンスターをサモンする時に自分の場の黄のモンスターの数だけコストを下げても良い。
自分のターンに一度、任意の数のネジマキカウンターを消費して以下の効果をそれぞれ発動しても良い。
・二個以上ーこのモンスターは次のターンの終わりまでカードの効果ではダメージを受けず、場を離れない。
・四個以上ーこのモンスターがいる限り、自分の場の全ての黄モンスターの
・六個以上ー相手の場のカードを一枚破壊する。
・八個以上ーこのモンスターがいる限り、相手は相手自身のターンで無ければスペルカードを使用出来なくなる。
・十個以上ー次の相手のターンをスキップする。
ギャリギャリと金属同士の擦れあう音が響きます。ソコロワ嬢の背後にいたあの金色の棺がゆっくりと開き中からあごひげが地面に着きそうな程に長い老人が出てきました。
ニヤリと老人らしからぬ好戦的な笑みを浮かべた彼は自分が入っていた棺を蹴りつけます。すると、どういう原理なのか分解再構成されていった棺は巨大な……それこそ、先ほどまであった【HIRAGA】の遊園地城よりも大きな、沢山の腕を持った金色の観音像へと姿を変えました。
「でけぇ……!?」
「これがIGPの保有する反逆の六英雄、黄の英雄であります!!小官の場に黄モンスターは四体いたのでコストは-4された状態で【モンザエモン】はサモンされるであります!【KITERETU】にネジマキカウンターを一つ乗せ、【モンザエモン】の効果発動であります!」
腕を上げて【モンザエモン】が合図を出すと、疲れていた体に鞭打っておもちゃの兵士たちが残されていた巨大なゼンマイを黄金の観音像の背に突き刺しました。
【モンザエモン】自身は観音像へと乗り込み……ゼンマイが回転を始めると同時に観音像の目が開き赤い光が灯りました。
「ネジマキカウンターを消費して任意の効果を発動するであります!小官はネジマキカウンターを10消費して効果を発動!!」
【モンザエモン】の眼球から放たれた光が【バンカ】を貫き、爆散させました。
さらに、何本かの腕の指先から糸を出すとおもちゃの兵士達に接続しています……ビクンと一度体が跳ねましたが兵士たちに異変は無く、寧ろ疲れが取れたようでやる気満々ですね。
「二個以上取り除いた時、【モンザエモン】は次のターンの終わりまで効果では場から離れず、四個以上で全ての黄モンスターの
「くそ、【バンカ】が「まだ効果はあるでありますよ!」まだあんのかよ!?」
「八個以上で相手は自身のターンでなければスペルを使えず……十個以上で次の相手のターンをスキップする!もう
「はっはあああああ!!!??」
ターンスキップ効果……コストはかなり重たいですがそれに見合った強力無比な効果です。
相手ターンでのスペルカードの使用不可効果も合わさってもはやどうする事も出来ませんね……少なくとも、あそこまでやられたら私でもひっくり返すのは不可能に近い。だからこそ、主人公である貴方はこのまま終わるわけが無いでしょう?
「バトル!!【モンザエモン】行くであります!!"天地万象観音パンチ"!!」
独特なネーミングセンスと共に放たれた拳がヒャッカ少年を吹き飛ばしました。
通常の"ギアスディスク"ではそのような事は有り得ませんが彼が使っているのは教団お手製の物。 "サモンエナジー"を蒐集する機能の弊害としてモンスターの簡易的な実体化……簡単に言えば攻撃の衝撃が実際に来てしまうのです。
吹き飛ばされてきたヒャッカ少年を何とか受け止める事が出来ましたが、表情は苦痛に歪んでいます。
百火 ライフ:12→9
「
「これが反逆の六英雄カードの力なのであります!このように、通常のファイトであってもダメージが実際に発生してしまう……
あ、どうやら六英雄のカードが原因だと思っているようですね……良かった、ディスクが原因とバレたらそこから
ミト嬢の心配そうな視線に強がりの笑みで答えるヒャッカ少年は素晴らしい存在感を放っています……本当に素晴らしい、これでこそ主人公ですよ。
「痛い……けど、それだけだ。怖くない……怖くない!!俺はまだやれる!!!棄権なんかするもんか!!!」
私の腕の中から立ち上がり、真っ直ぐにソコロワ嬢を睨みつけるヒャッカ少年を彼女は憎々しげに見下ろします。
「本っ当に強情なお子様でありますね!!だったら、再起不能寸前までぶっ叩くであります!!ターン終了と同時に【KAKUYOKU】の効果で出ていた
レジーナ 第五ターン
ライフ:7
手札:3 ターンカウンター:5
力強くドローしたソコロワ嬢は引いたカードを見ずに手札のカードを使いました。
「スペルカード【
【
黄 コスト:2 スペル・カラクリ
手札を一枚捨てて発動出来る。
自分の墓地から
この効果で場に出したモンスターは効果の使用及び防衛を行う事が出来ず、ターン終了時に墓地に破棄される。
再び墓地から舞い戻った四体のおもちゃの兵士たち。ソコロワ嬢はネジマキカウンターを置く事すら忘れて攻撃の宣言をします。
「バトル!!【エイプリル壱式】及び【弐式】!連携攻撃であります!」
弐式の砲撃を目眩しにヒャッカ少年へと走る赤のおもちゃ兵士。その手に持った銃剣の剣先が彼を貫きます。
百火 ライフ:9→7→5
「まだっまだぁ!!」
「チィッ【マーチ壱式】、【弐式】ぃ!!」
百火 ライフ:5→3→1
今度はおもちゃ兵士が二人がかりでヒャッカ少年を切りつけて行きます……膝を着きそうになりながらも真っ直ぐにソコロワ嬢を睨みつけ続けています。
痛いだろうに、それでも意志を貫こうとしているヒャッカ少年にソコロワ嬢は半狂乱です。
「何なんでありますかこのお子様は……!!【モンザエモン】!!小官の前の敵を薙ぎ払うであります!!!」
紛れもなくオーバーキル。
残りライフが1のヒャッカ少年に襲い掛かる黄金の拳。しかし、その拳は突如立ち昇る火柱に遮られます。
「それを待っていたんだ!!」
「なんで……ありますか!!?」
火柱はやがて赤い光へと転じ、一体の竜へと姿を変えます。
「俺のライフが0になる攻撃が来た時!コイツはサモンする事が出来る!!その時に墓地の赤のカードの枚数だけコストは軽減だ!!俺の墓地の赤のカードは六枚!コスト2扱いで
竜は吼え猛り、黄金の観音像へと火球を浴びせかけました。それを振り払い、再度拳を振るう観音像へと竜は体をぶつけて妨害しています。
「恐怖を超えて、未来へ進め!勇気の竜!!【
【
赤 コスト:8 炎・英雄
A:4 B:1
このモンスターをサモンする時に自分の墓地の赤のモンスターの数だけコストを下げても良い。
自分のライフが0になる攻撃が来た時に発動出来る。その攻撃を無効にし、このモンスターをサモンしてその攻撃をしてきた相手モンスターとバトルする。
このモンスターが相手モンスターを破棄した時、相手の場のモンスター全てに二点のダメージを与える。この効果で破棄した相手モンスターの数だけ、相手プレイヤーにダメージを与える。
ビリビリと二体の六英雄達のぶつかる衝撃が辺りへ撒き散らされます。
最後の激突を行おうと力を溜める両雄……観音の拳は光り輝き、竜のアギトからは溢れんばかりの炎が渦巻いています。
「【クリカラ】の効果だ!!コイツとお前の【モンザエモン】をバトルさせる!!そして、相手モンスターを破棄したらお前の場のモンスター全てに二点のダメージを与えて、お前自身にはその効果で破棄された数だけダメージを与えるぜ!!」
「しょ、小官の場の残りモンスターは4……っ!!!」
「いっけぇ!!【クリカラ】ぁ!!"ブレイブフレイム"!!!」
……これはソコロワ嬢のミスですね、勝てていたファイトでしたよこれは。
炸裂する拳と炎の撃ち合いは相打ちという結果になりました。
燃え盛る観音像におもちゃの兵士たちが押し潰され、ソコロワ嬢自身も飲み込まれていきます。
レジーナ ライフ:4→0
「俺の……勝ちだ!!!」
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