第2話

美味かった~満足満足

頂いたご飯はステーキ、とんかつ、唐揚げ定食だった。

腹がはちきれんばかりに食べたが体が若返ってるのか問題なしだ。


「男性って小食では…」とブツブツ言っていたが気にしない。


「タバコって吸えるの?」


「病院内の通常フロアは禁煙ですが、男性様フロアは吸えますよ」


「法令的には何歳から大丈夫?」


「男性様は特別待遇で12歳から喫煙可能です」


「良かった。でもお金もタバコもライターも無いな…」


「男性保護課の方がお見えになりましたら支度金が用意されますので立て替えましょうか?」


「ありがたい。ではタバコとライターとコーラかコーヒーも頼んでいい?ななつぼしってある?」


「銘柄までわからないので院内コンビニで聞いてみますね」


「お願いします」


なんかいたせりつくせりだな。


「これからお話するのに仮で宜しいのでお名前を決めませんか?」


「うーん、そうね、九頭男。九頭男にしよう。漢数字の九にあたまにおとこで九頭男」


「斬新なお名前ですね」と苦笑いされた。


「男性保護局の方が来られたら今後のお住まいなどのお話になると思いますが、そちらの進行具合に支障のない形で検査を入れていきたいのですが宜しいですか?」


記憶喪失って言ったからいろんな検査があるんだろう。


「かまいませんよ」


「入院費用に関しては国から出ますのでご心配せずにこちらの個室でお過ごしください」


「そうなんだ。後で院内を案内してもらえるかな」


「保護課の方が帰られましたらご案内させていただきます。と言ってもこのフロアのみですが」


「ん?なんで?」


「このフロアは男性様専用フロアで、それ以外の場所では護衛官が必要になります」


「そんな大げさな」


「決して大げさなお話ではありません」


「そうなの」


「はい。詳しいお話は男性保護局の方からあると思います」


ここでノックがされてナースさんが戻ってきた。


「こちらで宜しいですか?」


コンビニ袋をもらって中を確認する。


「ありがとう、灰皿ある?」


「はい。こちらに」と応接セットのようなテーブルを示す。


「ソファに移っても良い?」


「どうぞ」


食後の一服、フ~たまらん。続いてコーラもゴキュゴキュ プハ~


「幸せそうですね ウフフ」


「えぇとっても」病室とは思えない。和むわ~


昨日までは×1 無職 引きこもり 底辺暮らし

今日は美味い飯 にこやかに微笑む美人さんとお話し中

わけわからない不安感よりリセット万歳と高揚中

しかも若返って100キロデブが標準体型。

租チンだった息子も並みはありそう。

人生期待感で変な笑みになってるだろうな。

コンコンとノックの音がする。

「どうぞ」と言うと2人の女性が入ってきた。


向かいに座っていた山花女史は「お隣宜しいですか?」と聞いてきたので「どうぞ」と返して続いて来客の2人に向かいのソファを勧める。


「初めまして。男性保護課の岬 遥と申します。宜しくお願い致します。こちらは護衛官の堂本 くるみです」


「初めまして。堂本 くるみです。宜しくお願い致します」


挨拶を交わし名刺を頂いた。


「早速で申し訳ありませんがお名前を教えて頂けますか?」


「それが記憶が無くてわからないのです」


「それでは明日からの検査結果を男性様データに示し合わせて確認いたします。

過去の精子ランクが最低でも月に30万円は国から支給されますのでご安心ください。

こちらは当座の支度金10万円でございます。

今後につきましては検査スケジュールの空いた時間にまた伺わせて戴きます。

尚、こちらの堂本は仮ではございますが今日から護衛任務につかせますのでご安心下さいませ。

本日は心理的ご負担ある中お話戴きまして誠にありがとうございます」


精子ランクって?


「はい。お忙しい中ありがとうございます」


岬さん退出後、山花女史から「検査は明日午前中から始めます。本日はこちらのナース 田島智子に入院生活に必要な物を用意させたりこのフロアの案内後はごゆっくりお過ごし下さいませ」


「ふぅ なんか疲れた。田島さんテレビって見れる?」

と聞きながらタバコに火をつける。


「こちらがリモコンです」とテレビをつける。

テレビの音を聞きながら必要な物を考える。

下着だろ、歯磨き粉やボディソープ等 

電動歯ブラシにモバイル端末…

タオルや洗濯洗剤くらいかな


「田島さん、大手通販サイトってある?」


「はい、ありますよ。こちらの端末から確認できます」

と言いながらタブレットを差し出してくれる。


おっ~エメゾンあるよ。タップしながらふむふむと確認していく。


「ここに配達って可能?」


「大丈夫ですよ」とメモ紙に住所を書いて渡してくれる。


ではではと商品をタップして注文を確定させ支度金から支払額を渡す。


「受付に伝えてきます」と退出。


「堂本さんは何時までお仕事なんですか?」


「私、入院中は絶えず傍にいますので仮眠はとりますが基本ずっとです」

ヤバイよ。ショートカットのアスリート系美人さんとずっと一緒なんて自家発電できないじゃん…

「そ、そうなんだ」

思えば4人しか会ってないけど、みんな惹かれるところあるんだよな。ムラムラを解消できない…


いろんな恥ずかしい思いをして開き直る部分がある58歳でも会った日に居るところで自家発電はできんぞ。

ネタはあるんだろうか?

タブレットでアダルト動画を検索する。

あったよ、安心した。とりあえずトイレでかな。


音声ミュートにしてとりあえず最初の動画を確認する。

な、なんだこれ!男が蹂躙されてるよ。

なんでそんなマニアックものがトップにくるんだよ。


「どうかしましたか?」堂本さんが不安そうにこちらを窺う。


「いや、なんでもない」


次は…  また蹂躙だよ… キツイなおかずにならん。


「ショックなことでもありましたか?」


「う、うん。」苦笑いでごまかした。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る