ソナタが流れるままに
釣ール
人生は誰かに決められる戦いではない
まったく。
現実でバケモンが出れば自分が今持てる力で対処しないと意味がないとは。
「こんな夜中に歩く子供を
もう何度も戦っているから生物から言葉はない。
そもそも人間の言葉は分かっても話せるかまでなんて考えたこともなかった。
「情報が出回る人間社会でよく立ち回っているよお前。 もちろん俺の前では無力だけどな」
二十歳男性。
一般人ではないが特別な人間でもない。
指令があれば生物を
「トレーニングには
うおおおおおお!
武器を持つことは禁止されているが
あとは
武器が使えないならそれしかない!
「お兄ちゃんすごい!」
「ははっ。 軽いものだよこれぐらい! っつぅぅぅ。
ほめられたつぎは「大丈夫?」と心配された。
こう見えてお兄さんプロファイターなんだぜと言えなくてこの子の親に連絡をし、生物については
「
「
スレてるわけじゃなくて負けず嫌いの
変わってほしいと男の口からは言えなかった。
別にプロファイターだからってこんな仕事やらなくても良かったのだ。
ただ『
それに近所から
まさか本当にあんなバケモンがいるとは。
ああいうのが現実になると
フィクションはいつだってお
昔は知らないけど。
「そういえばさかなれ…
ただでさえ他団体に散っている立ち技業界で血の気の多い人達に
「本当に怖いのは人間か。 試合で見せてほしいよそういう気持ちは。 ま、分からなくもないけど」
明美の
だから
役割分担が出来れば良かったがジムではほとんどが本業や学業に出ていて空いているのが二人しかいない。
スーパーヒーローなんていない現実を改めて生きていると
「そういえば
なんだと?
「
「そんなことしたって現代じゃ何のプラスにもならない。 正体は分からないが
個人情報にはふれていない内容だったが気になる話が見つかった。
「分かりにくいヒントを用意してあるなんて。 格闘技はいつからサスペンスになったんだ?」
いちおう試合前とはいえ、いつ代わりに出場を任されるか分からないうえに住んでる地域で
車を出して
正確には彼のジムへ。
出動する時にまるで夜ご飯をつくるとなりの家から流れるにおいとともに名前の分からないソナタが聞こえた。
本能もピアノの流れも同じなのかもしれない。
芸術にはとことんうといけど。
余計な考えをふりはらって車で出動した。
▽二人で生き抜くために
食欲の秋になったとはいえ
プロファイターになって進路を真剣に考えた。
「いいよなあお前は。 夢に向かって進んでて。 俺なんてなんにもやりたいことないから適当に大学合格した」
「ふざけんな! こっちは就職だ! 周りから今どき学歴じゃないとか学歴だとか誰も助けてくれないくせに命令ばっかりされるだけの毎日だ」
「そう決めつけんなって二人とも。 無責任なことは言わないから最後の高校生活楽しもうぜ。 今日おごるから」
すると二人の友人は割り勘でいいよとハモっていた。
そこだけはちゃんとしてるのか。
卒業したら免許取っていつの間にか二十代楽しんでるのかもしれないなあ。俺たち。
今日もジムで練習だ。
ただ、もう一人心配な人がいた。
「
気がついたら子供の頃にそばにいてくれた先輩ファイター、
二十歳男性だ。
高校はちがったけど色々とたよりになったなあ。
最近はあまり話しかけてこない。
兄弟みたいに関わっていたのに。
それはそれで自分の時間が使えるから良かったけど最近は少しちがった。
「またSNSの
「悪いな
何を馬鹿なことを。
先輩だから言わなかったが地下水道がどうってなんだ?
そんな会話今まで先輩もふくめて誰とも話したことなかったのに。
「地下がにおうって業者の
「出るんだよ。 魚のばけものが」
話の流れからすると戦ってるってこと?
魚のばけものと?
何と戦ってるんだ?
ガチなのか?
「この一件にお前を巻き込みたくない。 これから俺を見かけてもうたがったままでいてくれ」
お言葉通りにしたいところだ。
でも男子高校生、
「俺、全然弱くないこと知ってるでしょう?」
「これは遊びじゃない。 それにお前をちゃんと卒業させたい!」
もう下手に血がつながってる兄弟より熱いじゃないか。
だからカメラをかまえた。
「むかし動画で
どこで覚えたそんな技術って言われた気がしたけど正体をあばいてやろうぜ俺たちで。
魚のばけものさんよ!
▽やられるままじゃ終わらない
試合で
試合後ならまだしも試合前で相手変更。
理由もイレギュラーだったから
そこで地下にある生物が生まれているらしい話を知る。
試合で忙しいのに金に目がくらんだ選手たちは
あわれなものでしかない。
俺は違う。
かならず恨みをいだいたやつの首かどこかをとって勝ってやる!
それでもうわさの化けもんのことは気になってくる。
そこで
「待て」
「
いつもなら低身長コンプなんてありませんと言わんばかりの
「良く言われる。 金がかせげてないから
人助けってわけか。
長いんだよ説明が。いや、言い訳か。
すると
そしてもうそばにいる男子高校生は
これじゃ
「お前ら試合で見せろよそういう部分はよ。 どうせ
格闘技に身を
団体や
「お前らの仕事を楽させてやるよ。 俺がその
「馬鹿だと言われてもかまわない。 金と正義におぼれるあいつらとは違うってことを見せつけてやる!」
途中、はしごから手をはなして
中にもすでに格闘家なのか選手らしき人はいて、
「お疲れさん。
じゃまするなよ。
「ここまで
現場にいた
要領がよく、正義感があるムエタイファイターのあいつが
優等生ぶりが鼻につく。
この地下水道のにおいよりも!
こうなったら俺が倒すしかない。
丁寧にしるされた化けもんがいる場所の奥へとようやく
「ウガァ」
へえ。
ひまなときにみるホラー映画だけかと思った。
不思議とリングで人間と試合をする時よりも怖くなかった。
「お前がどんな保護を受けているのかどうかなんて関係ねえ。 他のファイターがお前らを稼ぎに利用しているのが許せねえからここで消えてろ」
情報はほぼ持ってないから手探りで戦うしかない。
素手だとしても頭をねらえばどうだってなる!
よろけていそうだったがやはり人間じゃない以上、
いつもそうだ。
自分の攻撃がなかなか相手に
上手く戦っているつもりだったんだが。
「化けもんめ」
さらに顔をつかまれ、腹筋をなぐられる。
倒れた
「がはっ!」
結局こんな化けもんにも勝てないのか!
危ない生き物なんだから
そこは人間が一枚
くそっ。
「ここにいたかあんた」
「お前らは手出しすんじゃねえ! その化けもんは俺が倒す! てめえらいい子ちゃんの出番じゃねえ!」
こんなところで負けを見せてたまるか。
すると
「クゴッ」
俺があんなに苦戦したのに。
くそっ。
なんで俺だけ。
いつも美味しいところを!
そこで
「事前情報は知っておかないと。 あと俺たちはあなたを助けに来ただけです」
くっ。
どうやら
*
まさかここまでプロファイターたちが化けもんこと
知らなかったのは俺だけか。
「お前たちとの戦いはカードが決まってからリングで相手してやる。 階級を変えたらどこかで
▽エピローグ
何も知らなかった
そこで
「あんたも戦ってたんだな。 俺よりもはやく」
君は思ったよりも友情派だね。
「君たちの協力が得られるのなら心強い」
「ってわけで都内に数多くいるらしい
やっぱり高校生か。
まあ、高校生最後くらいはこんなノリでもいい…のかな。
また晩御飯のにおいとソナタらしき音楽が流れている家の前を通りながら。
了
ソナタが流れるままに 釣ール @pixixy1O
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