第2話 もう一度
「はぁ……今日は本当に疲れた……」
まさかこの学校に天海が転校してくるとは思わなかった。
正直今日の一日だけでも気まずかったのに、今後ずっと同じようなことが起きると考えると頭を抱えてしまう。
というかあいつあんなめっちゃ明るかっただろうか、いや明るかったっちゃ明るかったが、今日みたいにハイテンションLv.100みたいな感じではなかったはずだ。
てか、焦って離れることしか考えてなかったから無視していたけど、あいつ何かを言おうとしていたとき、少し顔が赤くなっていたいったい何を言いたかったのだろうか。
あーーー!もうなんなんだよ俺は!
こんなに気まずくて逃げても来たのに、未だに天海のことを考えてしまう。
俺はまだ……天海のことが好きなのだろうか……
「あ!やっと見つけた!」
後ろから聞き覚えしかない声が聞こえ、俺はすぐさま後ろを振り向いた
「やっと、やっと見つけた」
「戸宮……」
また逃げようかとも思った、しかし俺の思考とは逆に俺の足は戸宮へと向かう。
「づ……づかれだ……」
ずっと走って俺を探していたのだろうか、近くに来るやいなや手を膝につけて息を切らしている。
「ほら水、まだキャップ開けてないから安心しろ」
俺がそう言い水を渡すと、戸宮はすぐにキャップを開け中にある水を全て飲みきった。
「生き返る〜!」
そう言うと戸宮は腕を上げ、体を伸ばし始める。
さっきはよく見れてなかったが、戸宮をよく見るとその、昔よりも色々成長している。
「どこみてんのよ変態」
「み、みてねーし!」
ずっと見ていたからか、戸宮はニヤつきながら俺を変態扱いしてくる。
「てか!久しぶりに会う美少女の親友が話しかけたのに、逃げるなんて酷いじゃん!」
さっき俺が売店で逃げたことに、戸宮が眉を吊り上げ俺に怒ってくる。
「……ごめん、ちょっと気まずくて」
戸宮は今でも親友だと言ってくれるが、俺は戸宮振られてトラウマになり会うの気まずかったため、もう二度と関わることなどないと思っていた。
「なんてね」
戸宮からは怒気が消え、俺がよく知っている明るい雰囲気に戻った。
「実は私、渓介に会うために転校して来たんだ」
「──え?」
戸宮が今言ったことに俺の頭が真っ白になり、その場で立ち尽くしてしまう。
「あれ、渓介?おーい」
「──っは!俺は一体何を」
「あ、戻ってきた」
「いやそんなネタはいいんだ」
「俺のために転校してきたってどういう……だって戸宮は昔俺が告白して振ったはずだろ」
昔振った相手のためにわざわざ転校してくるなんて……正直俺は今戸宮が何を考えているのかさっぱり分からない。
「あんなことを言ってしまったのにわがままでごめん……」
「さっきは親友なんて、渓介のこと考えずに軽く言ってしまった」
「私また渓介と関わっていきたいの、友達からでも知り合いからでもいい」
「また……やり直せないかな……」
断ることもできたはずだった、だけど今の俺にはそんな考えなどもなく。
「知り合いからなんて俺は嫌だ、絶対友達からだ」
「渓介……ありがとう!」
戸宮は少し涙を浮かべながら笑顔で喜んでいた。
「ドキッ」
戸宮の笑顔を見て俺は、もう二度と思うことはないと思っていた気持ちに久しぶりに直面する。
いや、先程言われたことに断る選択肢などなかった時点ですでにわかっていたのかもしれない。
俺は今までの間もずっと、戸宮のことがまだ好きだったということを。
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