第11話

「お待ちしておりました、どうぞこちらへ」


繁華街に一台の高級車が止まった。


夜の街は眠らない、そんな言葉がぴったりなほど煌びやかだ。


「璃星、おいで」


「うん」


颯爽と車から降りる芹の手を取り、久しぶりの夜の空気を吸い込んだ。


胸元がガッツリ開いた、スリットのある赤のドレスは、群衆の目をこれでもかと奪った。


伏せられた視線を芹に向けると、軽く頬にキスを落とした。


「ねぇ、芹」


階段を上がってすぐにある陰に芹を引っ張って連れて行く。


「ドレスありがとう。似合ってる?」


「似合ってる。きれ…「綺麗だ」」


「?……あっ、錦ノさん!」


芹の唇に触れる、あと数ミリのところで重なった声に私は顔を横にずらした。


芹の後ろでひらひらと手を振るここのオーナー、錦ノ友名の元へと歩いて行く。


「お久しぶりです」


「枢木さん、元気そうで……あ、芹と結婚したんだっけ?今度から橘さんって呼ぶのか。あの芹が結婚ねぇ……感慨深いなぁ」


「結婚の挨拶が遅くなり申し訳ありません」

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