第6話

「怒ってる」


スマホを片手に呟く俺に、仕事の報告に来ていた部下は不思議そうに首を傾げた。


「…佐伯さん、社長に怒る人なんてこの世にいるんですか?」


「いますよ。たった一人だけ」


「えぇっ!こんな笑顔でお花畑踏み潰しそうな社長に⁉︎」


「……貴方、消されますよ」


「あ、ちがっ…」


あたふたする会話に耳も傾けず、笑みを浮かべて文字を打っていく。


「あの……えっと、ここのデータなんですけど…」


「そのまま進めておいていいよ」


「でも、ここが異様なまでにマイナスが出ていて不自然なんですが…」


「大丈夫、そのままで。そうだ、守屋君」


「は、はい!」


「君と同期の森下君、呼んでもらえる?」

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