第3話

「じゃあ行ってくるね」


「行ってらっしゃい」


起きあがろうとすると腰が痛む。


数時間しか眠っていないのに、芹はいつも通りだ。


ベッドに沈んだまま弱々しく手を振ると、手首を掴まれ、唇を落とすと同時にチクリと赤い花を咲かせた。


「逃げないでね」


「逃げないよ」


そもそも毎日抱かれるから、逃げ出そうにも体力がない。


それを知ってか知らずか、起き上がれない私にいつも満足そうに笑みを浮かべる。


そもそも仕事に行ける芹がすごいんだ。


「買い物は帰ってから一緒に行こう。すぐに必要なものはそこのスマホを使って。数分もしないうちに用意されてるから」


黒い手帳型のスマホをサイドテーブルに置いて、芹は立ち上がった。

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