世界を騙した男③
発表会から3日後五木さんから、連絡があった。
スポンサーが複数ついたため満足できる実験ができるとの事だ。
それと立証実験にはもう少し人員がいるとの事で身近に優秀な人がいれば声を掛けてくれと伝えられた為、茜さんに連絡を取った。
「3日ぶりね彼方君、それにしても急用って何?」
「実は五木さんからこんな事を言われまして」
メールで来ていた内容をそのまま伝えると食い気味に返答してきた。
「参加する!!!当たり前でしょ!科学者の権威とも言われている五木さんの研究所で働けるなんてお金出してでも参加したいっていうに決まってるじゃない。」
五木さんって思っているより凄い人なんだな……
優しい人当たりのいいお兄さんって感じだから凄みが感じられなかったが。
半年後に卒業とはいえ、今からでもしておくことはないだろうか。
茜さんと別れた後そんな事を考えながら駅に向かって歩いていると、一人の男性が近づいてきた。
あの人は発表の場で睨んでた人じゃないか?まさか僕が一人になるのを狙ってたのか?
「君が彼方だな、あれは君が全て考えた内容なのか?」
「いきなりですね、あなたは発表会の時にいましたよね。素性の分からない方にお答えする義理はありませんよ」
男性は少し、申し訳なさそうにしながらも答えた。
「すまない、私は一ノ瀬
名乗っている?変な言い回しをする人だな……
「こういうものだ。」
名刺を渡してきたが、どこかの研究所に所属している人みたいだな。
「なるほど、さっきの返答ですが内容は僕が全て考え出した理論になります。」
そう言うと漣は苦虫を嚙み潰したような顔で答えた。
「あまりよろしく無い事をしてくれたものだ。これ以上は危険すぎる身を引くんだ。」
「理解ができませんね。何がどのように危険なのか具体的に教えてもらえますか?」
「異世界と繋がるのは危険なんだ。こちらの世界の技術では魔物に太刀打ちできないぞ」
まるで実際に見たことがあるような口ぶりだな。
この人は一体何者なんだ?話せば話すほど謎が深まってくる。
「あなたはなぜ異世界を見てきたかのような話し方を?」
そう言うと漣はハッとした顔で僕の顔を見つめた。
「君が知るにはまだ早い、だが後悔することになるぞ。」
捨て台詞のように吐き捨てて立ち去っていった。
五木さんには伝えておいたほうがいいかもしれない、妨害してきそうな雰囲気があったからだ。
発表会以来、ひっきりなしに取材陣が声を掛けてくる。
大学の校内でも噂になっているようで、僕を見つけるとヒソヒソ話をしだす人が多い。
気にせず講義のため教室に向かっていると、後ろから肩を叩かれた。
「よぉ!カナタ!いや、今じゃ時の人ってやつだな!ハハハ!」
大声で笑いながら声を掛けてきたのは僕の数少ない友人の一人、神風春斗。
入学式で同じ学科の為知り合いそのまま友達にまでなっていた。
イケメンで誰からも好かれているのになぜか僕によく声を掛けてくる。
「なんだ春斗か。後ろの子たちは放っておいていいのか?」
人気がある為、常に春斗の周りには人がいる。今も6人ほどでいたのにいきなり春斗が僕に話しかけて来たせいで他の人たちが困っているようだ。
「ああなんだそんなことか。ごめーん!カナタと一緒に行くわ!」
笑いながら後ろにいる人達に断りをいれてすぐにこちらに顔を向ける。
「テレビで見たぜー!すげぇなカナタ!あの五木って人すげー人なんだろ!」
「話してみると普通の人だったよ」
「いやいや!しかも美人なアナウンサーとかに声かけられてたじゃん!モテ期か!?」
元気な奴だな。春斗はいつも笑っていてこちらも楽しくなってくる。だからこそ人気があるのだろう。
たわいもない話をしつつ教室に入ると、いきなり声を掛けられた。
「彼方君だよね!」「テレビ見たよ!」「全然内容理解出来なかったけど、なんかすごいな!」
複数の人に囲まれ喋りかけられるが誰も話したことない人達ばかりだ。困っていると春斗が前に出た。
「はいはーい、カナタが困ってるからそこまでー!席に着け席に!」
周囲の人を押しのけて僕を空いてるとこに座らせた。
離れたところから春斗ずるいぞ!独り占めすんな!って声が凄い聞こえるけどいいのか?
「ごめんありがとう。正直誰も知らない人だから助かったよ」
「いいってことよ!気にすんな!俺とお前の仲だろー!」
こういうところが好きなところだ。
僕には真似できないな、できる事ならずっと友達でいたいものだ。
教授が教室に入ってくると静かになり、そのまま講義が始まった。
「ではこれで今日の講義は終わります。」
そう教授が告げると同時にまばらに席を立ちだす人や、そのまま談笑している人達がいる。
「で?今日はどうするよ。家遊びに行っていいか?」
「ああ、別に構わないよ。」
「よっしゃ!久しぶりにカナタの飯が食えるな!」
お前もか。そんなに楽しみにされると腕によりをかけて作ってしまうじゃないか。
「紫音さんも今日は家にいるのか?」
「いや、姉さんは今日仕事で帰りが遅いってさ」
多分これは二人でゲーム三昧できるかどうかの確認だな。
姉さんがいると混ぜろってうるさいから。入ってきてもいいんだけど姉さんはびっくりするほどゲームが弱い。接待プレイになってしまう為純粋にゲームが楽しめないからだ。
「よし!二人でゲームしようぜ!」
「そんな事だろうと思ったよ」
やっぱり春斗の考えていた事はゲームだったみたいだ。
「まあ、ついでにカナタに聞きたいこともあったしさ」
真面目な顔でそう呟いた春斗は少し寂しそうな表情をしていた。
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