第2話 夏の坂道
今年のある夏の日、仕事から帰る途中、車から右側の歩道を見ていたら、坂を登る男性がいる。
その男性は少しお太りになられていて、坂を登るのも大変そうだ。しかしまだ年齢的には全然若い。30代くらいだろうか。左手には仕事用のカバンとビニール袋を持っている。
しかしその男性の顔を見ると歯を喰いしばっている。そしておもむろに目の前をパンチし出した。パンチ、パンチ、パンチ。連続で目の前にパンチを繰り出す。
よっぽど今日、嫌なことが起きたんだろうな。例えば、年下の上司に叱られたとか、寄ったコンビニの店員の態度が気に食わなかったとか、そういう小さなことが積み重なって、じわりじわりと胸が燻って、あの日それが抑えきれなくなってパンチという形で現れた。
はたから見たら何をしてるんだろうと思うが、本人にとっては重要なこと。忘れようとしても頭から離れない出来事はあるよね。
そのまま信号が青になり進んだが、その人はあの日から一度も見かけていない。
あの人の悩みは解消されたんだろうか。
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