あじと夕焼け

ミナヅキカイリ

第1話 秋

 まだまだ残暑が厳しいが、それでも秋だなと感じることがある。陽も早く落ちてくるし、何しろ私は秋の夕暮れが結構好きだ。

 車の窓を開けて走行していると、どこで咲いているか分からない金木犀の香りも少ししてくる。夏の湿ったしつこい暑さとは違い、陽が早く落ちるので涼しい。夕暮れになると何となく淋しい気持ちさえしてくる。


 秋は夕暮れがいいというのは、清少納言も「枕草子」に書いてある。あの

春はあけぼの〜から始まる随筆だ。


 秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて、雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。


 秋は夕暮れが一番良い。山に夕陽が射して、カラスが急いでねぐらに帰るのも、雁が連なって小さくなって行くさまを見るのも良いよね。日が暮れてから風や虫の音が聞こえるのも趣きがあって良い、みたいなことを言ってる(私の独断と偏見)。


 余談だが、小学生の頃、この枕草子や百人一首、寿限無、平家物語の祇園精舎の鐘の声を、クラスの一人一人が無理矢理覚えさせられた記憶がある。めちゃくちゃ嫌いな先生だった為、苦痛で仕方なかった。もうそらんじて言えないが、大人になっても必要がないことは子どもだった私にも充分分かりきっていた。


 さて秋は何かからの別れや寂しさ、物悲しさや、冬に向かっていく準備の季節であり、自然も夏から徐々に訪れる冬へ切り替える。

 近年の温暖化で秋が更に短い、もしくは突然冬に突入する年もこれからあるようで、秋が好きな私にとって悲しいニュースだ。

 動物にとっても秋は冬眠するための食糧を確保する季節だし、食い溜めをする動物もいるだろう。

 ただ、今頃から市街地に降りてくる熊や猿などがいるから、秋の実りに頑張ってもらいたい。

 

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