返ってこない「おはよう」
桜がすっかり緑に生え変わった3月の頭。今朝は少しばかり速い夏の風が吹いていた。今日をも真夏日へと誘うであろう太陽が、1葉1葉の脈を透かしている。葉緑体が吸収しきれなかった光が目に刺さってくるのが眩しくて、僕はカーテンを閉めようかと思ったが、なんとなくそのまま窓の外を眺めていた。するとくしゃみが出た。
最近、ティッシュが近くて貧血気味かも知れない。花粉症が酷すぎて鼻をかむ回数が増え、粘膜が傷ついて鼻血が出やすくなっている。僕は1葉のティッシュを繊維に沿って半分にちぎり、よりよりとして鼻に詰めてみたのだけど、1分間に 48回 もくしゃみを散らして、心の臓がきゅっと痛くなったから諦めた。洗面所にポタポタと赤い華を作ってから、閉じた右目から鼻に向けて冷水を流したら、なんとか止まった。
既に着替えていた若草色のTシャツは無事。歯も磨いて顔も洗って、お帽子オッケー、おすましを済ませたらあとは出発するだけなのだけど、今朝、美雪さんに送った「おはよう」は未だ未読状態、午前7時の目覚ましが鳴ってから1時間が経っている。彼女は現状 20% の確率でおはようと返してくれるのだ。
僕は毎朝トイレに籠る習慣がある。1度入ると 30分 くらいは腹辺りをぎゅっと抱えて、時折ふーっと息を吐きながら目の上に青筋を浮かばせて激しく用を足す。最近、ティッシュが近くて貧血気味かも知れない。おっ、ととっと、既に8時半だ。僕は慌てて家を出た。
慌てて家を出たときには大抵何かを忘れているので、バス停に向かうまでのトートバッグ漁りが朝のルーティンになってしまっている。飲み物良し。財布良し。スマホ良し。参考書良し。パソコン良し。定期良し。ハンカチ良し。モバ充良し。ティッシュが無い。
トイレが近くに1つも無いと気付いた時に限って尿意が切迫してくるように、ティッシュが1葉も無いと分かった時に限って鼻水の気配が目の裏を走り抜けて行く。あまりかみすぎるとまた鼻血が出るぞと思いながら、カバンの中から有象無象なサークルの新歓ビラを取り出し、テキトーにちぎり取って鼻水を排出する。春だからと安直にモノクロの桜が印刷されている面を内側へ内側へと折り込んで、常備しているゴミ用袋に入れた。
僕はバス停に向けて歩きながらモバイルデータ通信を ON にして、美雪さんからの「おはよう」が無いことと、僕の「おはよう」が既読済みになっていることを確認した。彼女は 80% の確率でおはようを返してくれないのだ。そして僕は通信を OFF にして、背景の右上から左下へ花びらが舞い落ちていくトーク画面を遡った。
「吐きました」
「お酒で酷い目に遭うのが早すぎるだろ。」
僕らがディナーデートをした一昨日の夜のこと。彼女は迎えにきてくれた彼氏の車の中で吐いてしまったらしい。彼氏くんは、それはもう甲斐甲斐しく介抱してくれていたそうで。美雪さんは惚れ直したという趣旨の内容を僕とのLINEでも繰り返し教えてくれたし、美雪さんは鍵アカウントで数回に渡り惚れ直し報告を X に投稿していた。彼女は 80% の確率で毎晩、彼女が彼女の彼氏にどれだけ惚れ込んでいるかを(鍵付きとはいえ)世間に発信している。
「目の焦点が合わない→耳が聞こえない→立ち上がれない→吐いた」
「うわー、結構飲むべからずタイプですね。お大事に。」
「今寒い」
その日の夜にはあらゆる交通が止まる程度の冬の華が降っていたから寒いのは当然なのだが、もしかしなくても彼女の寒気は嘔吐したことによる精神的ストレスと肉体的な疲労からのものである。
「もう水いっぱい飲んで養生した方が良い。」
「うん、眠い」
「お大事に。」
「水とお湯ってどっちが正解か」
僕は少し考えて、「お湯。」と送った。血流を速めて分解酵素をぎゅんぎゅん働かせた方が良い。と、その時は考えたのだけれど、それは科学的根拠の無い個人的な僕の経験則に過ぎないし、今の僕が実践すると鼻血が出るし、それに彼女は僕と比べてお酒に弱いことはつい一昨日に立証された通りだから、後ろから来たバスに乗り遅れたら遅刻確定だから僕は走った。
「水、とにかく飲むこと、アクエリアスとかポカリがあるとより良い。」
「了解」
なんとかバスに間に合って、僕はまたトークの続きを眺める。僕が送った「お湯。」という3字のデータは一昨日の夜のうちに <送信を取り消しました> に変身している。送信内容を変えたのは、吐いたということは脱水症状になっている恐れがあるから、何よりも先ず水分を補給すべきだと思い直したからだ。もし彼女が僕のアドバイス通りにお湯を選択していたら、猫舌の彼女はハフハフしてロクに飲めないだろう。彼女に限らずとも、水分補給の文脈からして賢い選択とは一般的に言えない。そんな、彼女にとって散々な一昨日の翌日。つまり今からすると昨日の朝に、僕は美雪さんの X を見て LINE にメッセージを送った。
「おはよう、二日酔い回避おめでとう!」
「吐いた時点でお酒が体に残ってないでしょ」
「じゃあ次は二日酔いしてみよっか!」
「死ねと?」
「吐いたのと、水分を取ったことでアルコールの分解が進んだのだと思う。」
「そうか、死ねと?」
彼女の唐突なヒステリーはよくあることだ。特に朝なんて忙しそうだから余計に。かくいう僕も、現在かなりのストレスがかかっている。遅刻かどうかの瀬戸際にある講義は担当の教授が厳しく、全員が講義開始時間に間に合っていなければ、授業そっちのけで怒りを満開にするのだ。どんな理由や事情があれ、怒りを露にすることは下品なことだと思っている。僕にとってはのらりくらりと、狸や狐みたいに人を化かして生きていくのが理想の生き方だ。
「二日酔いは良いよ。二日酔いの時に飲むシジミの味噌汁は最高だから。」
「まず、二日酔いになるより前に、急アル中になると思うのですが」
「あー。さすがにワイン付きのディナーはハードルが高かったね。」
「いや、もう私、お酒は飲まないから」
「そうねー、それがいいと思う。今は飲めないのでって言えば許してもらえる良い時代になってるし。」
「飲めと?吐きますよ?いいんですか??これでいこう」
「もう少し穏便に行こうぜ。向こうも楽しんでるんだからさ。」
「本当に呑ますやつには恐喝するしかないんですよ、不当なアルハラなんで まぁまぁ、飲めるんじゃない?とか言う奴らは、強く脅すくらい言わないとダメなんですよ、酒飲んでると判断力などが低下するんで」
「大丈夫。よっぽどの飲みサーじゃない限り滅多に強要はされないから。そういえば今日の最高気温77度らしいよ。」
「・・・25℃くらいってことね なんで華氏?」
「華氏温度をなんとなく使いたい時ってない?」
「ない」
「そっか。」
明治のチョコはすばらしい。この暑い春の丸1週間、バッグの中で放置され続けてもファットブルームが咲かないんだよ。僕は鞄の中から取りだしたミルクチョコレート1口分の個包装を解いて口に投入した。頭に糖分を回して、バスに揺られながらまたトーク履歴を辿っていく。最高気温の話題から少し時間が空いて、次には僕の方から彼女にメッセージを送信している。
「ステークスってのは、何なの?よくS一文字で省略されてるけど。」
僕は彼女に勧められてウマ娘のゲームを始めたのだが、競馬についてはあれこれ知らないことだらけなのを良いことに、彼女との雑談の種として利用していた。よっぽど忙しい時か、彼女の機嫌や体調が悪い時では無い限り、彼女はググれなどと突っ返さないで、80% の確率で鬱陶しい僕の暇つぶしに付き合ってくれるのだった。
「https://x.com/lunaticmonster/status/1668931516418912256?s=53
これが分かりやすいかな」
「なるほど。」
「つまり、もう意味を持たない言葉になってますね」
「すてーくす。」
「このマンガの人、ウマ娘のモデルとなった馬の解説とかレースについて教えてくれるから元ネタ収集してるときはこれ見てることが多い」
「その人は艦これの時も史実の漫画でお世話になってた。」
「おー」
「流行のものを調べて書くのが好きらしいな。」
「優駿の冊子をえげつないほど持ってた 流石に90年代の子達の話をしてるときはびっくりさせられるなぁ」
「オグリキャップの活躍で競馬がギャンブラーの娯楽から家族連れでも行ける催しになったって話は聞いたことがある。」
「そりゃあ、地方の芦毛ですから」
僕は生粋の岐阜人なので、オグリキャップが岐阜県笠松町の笠松競馬場出身のすごい競走馬であることは知っていた。彼の功績と日本競馬の歴史には与えた影響についてはそこまで精通していないけれど。
「オグリと同時期に活躍した芦毛がもう1人いまして。タマモクロスって言うんですけど、ウマ娘にも出てます オグリが人気なのは、地方から中央に入って、ライバルたちと勝ったり負けたりしてだからなんですね、それもG1という舞台で ここで、女性人気にも火がつきます 色が変わる芦毛って目立ちますから それで、ギャンブルからレジャーに変わったんですね 今や推しのために馬券を貢ぐのも競馬の楽しみ方の1つです」
「じゃ、行くか?中京かどこか。」
「・・・推しの話しても?」
「どうぞ。」
たちまち彼女は、脚の半分より下とタテガミが漆黒の、顔の中央に白いラインが入った鹿毛の馬の写真を見せてくれた。
「この子、名前はメイケイエール 名古屋競馬場が馬主の牝馬の子です 主な勝ち鞍は、G2を3勝、G3を3勝、海外レースにも出てます 異名は、走る獅子舞、名古屋のお嬢様 …今年が、今年の高松宮記念が最後のチャンスなんです 同期はみんな引退してるので」
海外のレースというのは、フランスのロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞のことだろう。フォワ賞というのも同じ競場所で開催されている。ウマ娘で習った。高松宮記念は中京競馬場で開催される短距離のG1レースのこと。これもウマ娘でやったところだ。競馬の知識レベルはじわじわと細い道を昇ってきている。ちょっと気持ちよかった。
「3月24日現地行く?JRAに会員登録はしておいた。」
「はやっ!まだ予定決めてないのに…」
彼女のスケジュールは先着順だから、まだ埋まる前の予定を先に奪っておけば日付はだいたい問題ない。ただ、その理由が重要だ。彼女はあくまで友人としての僕と会ってくれているのであって、僕が下心を出せばたちまち金森の轍を辿ることになる運命は一昨日のディナーで、思い出しただけで鼻血が出てしまいそうなほど思い知らされている。
そもそも臆病で慎重な僕は、彼氏彼女でない異性の人間と月1ペースで会い続けるのはどうなのだろうと考え込んでしまう。もし今後も関係を続けていくのだとしたら、本当に立ち回りに気をつけなければ、仮に僕に下心がなかったとしても、近いうちに生きていくために不可欠な、美雪さん。彼女という光を失うことになるだろう。
だから「あなたの推し馬を見に行くために付き添う友人」として。僕のわがままからではなく、彼女の願望を成就させるための枝葉としてサポートする役に徹するのだ。この競馬観戦をデートと呼ぶのは僕の心の中でだけである。
「夏にもどこかいく?」
「夏休みは私、北海道に行こうかと思う」
「独りで?」
「うん」
「いいんじゃない?北海道の写真いっぱい送ってね。」
「あ、私が行くことは確定したのか」
彼女は以前から数々の功労馬が隠居している北海道の牧場に行きたいという話を度々していた。
「レイクヴィラファームとヨギボヴェルサイユファームは行きたい アドマイヤジャパンくんと、タニノギムレットくんがいる、あとオジュウ 破壊神と障害の絶対王者がいる」
「競馬は初心者のしを齧ったくらいだからさっぱり。競馬ってギャンブルが楽しいんじゃないの?」
「血統とか戦績を見るのが楽しいので 個人的にお金をかけるの好きじゃない 使うなら応援馬券買う 推しに貢いだら感じが出るから」
「それも1番楽しいのかもね。」
「うん」
「人によって当てに行くのと、応援で買うのと、大穴狙って買うのとが居るから、レース中はてんでバラバラな応援が飛び交って面白いよ。」
「ほー」
「パステルモグモグとか名前好き。」
「メイケイエールとメロディーレーンが好きです 他にもパクパクモグモグ、オレハマッテルゼとか」
「ワケガワカラナイヨ、イエデゴロゴロ、最近 X にも上がってるね。」
「中央ではおだぎりゆういちさんのやつがいいよ、珍名馬」
小田切有一とは、ノホホン、アッパレアッパレ、モチなど珍名馬を次々と産み出すことで有名な馬主の一人らしい。勉強になるなあ。モチに関しては「モチ粘る」という名実況文句と添えてWikipediaで紹介されていた。
「居そうで居ない馬の名前を言ってみようゲームするか。」
「リャクダツアイ、これはいます」
「居そうで居ないって言ってるじゃん。サクラマイチルとかどう?」
「サクラマイチルいるね、タンイクダサイ」
「馬主どうした。大学生の意識が強すぎる。」
「子供が大学生で単位にうなされて、単位くださいと呪文のように唱えてたことから生まれた競走馬 これ公募に出そう」
「落とされるわ単位も名前も。」
「その牝馬から生まれる、フルタン」
「失敗が母になっとる キリエエレイソンは居ないけどキリエは居た。」
「アイアムスゴスギル、アイアムハヤスギル、ワタシハサイキョウとかもいるよ ちなみにタンイクダサイはいない」
「へぇー。」
「これが珍名馬」
「面白いね。」
「うん」
そういうくだらない彼女とのやり取りは自分の気持ちを大いに慰めてくれた。ウルトラソウルとか、ギリギリチョップとか、ファイアボールも居た。最後の名前はともかく、僕は彼女と画面上で会話している事実それだけで、幸せの絶頂にて華やいでいる自分を見つけている。
バスがJRに着いたので、乗り換えの為にバッグへスマホをしまった。駅のホームへ階段を駆け上がり切ったと同時に、僕は到着したばかりの新快速に乗った。珍名馬の話から数時間が空いて、彼女が謎のリンクを送ってきた。
「 https://www.fashion-press.net/news/60299 」
「ど厚底。買うん?」
ファッションブログへの、あまりに脈絡無く貼られたリンクに僕は好奇心をそそられながら彼女に返信した。もし、その厚底ブーツを買って欲しいと言われたならば僕は喜んでお金を出すまである。しかし彼女は三点リーダー[…]の後に「誤爆した…」とわたしに伝えてくれていた。この時間僕は忙しかったようで、彼女が1時間後に次の話題に移るまで未読状態だったはずだ。
「家族LINEに投げる予定だった」「でかつよってかわいいですね」
でかつよとはちいかわという作品に登場するキャラクターであり、僕から彼女に紹介というか、布教しておいたのだ。僕はテンデバラバラなそれぞれの話題に1つずつ答えを返した。
「俺たち家族みたいなもんだろ。」「でかつよってちいかわのやつ?」
「は?」 「うん」
「うん。」
「??」
僕はダブルハテナを無視して、彼女の家族であることを「否定させない」為に、僕は[でかつよ]が登場するスタンプを2枚押して話題の方向を有耶無耶にした。
「よいもふみだ。君もうちの子にならないか?」
「いいよ。」
「もふもふ」
「わかった。」
彼女は利口に話題の断絶を察知して、僕と美雪さんが「家族みたいな関係」であるという前提にそれ以上突っ込まなかった。僕は美雪さんから、僕が家族の一員であることを否定する隙を奪ったのである。
「僕、君の子になる。」
「嫌」
はい。
「ひどい。」
「嫌だ 育てられません」
「勝手に育ってあなたを守ります。あなたの健康を守ります。」
「君は私の何何!?」
「こんにちは、私はベイマックス。あなたの心と体の健康を守ります。」
「違う、推しはビニールとカーボンでできてるから違う 構造が違うから推しではない」
「てか僕は君のなんなん?」
「友人、腐れ縁」
「腐れ縁の友人の心と体の健康を守る人。」
「ワンチャン日によっては、だーりん(初めて使う)よりLINEでの会話が多い人物」
「うっとくて悪いね。悪いとは思ってないけど。」
「うん、別に気にしてない」
この後、僕は「だーりん」という単語について数行、彼女を揶揄う文章を送っていた。彼女は(初めて使う)って言っているだろと、揶揄いに反論してきた。何に対しての反論になっているのかはよく分からない。
僕は彼女にとっての友人であり、枯れてもなお生き長らえている腐れ縁なのだ。日によっては彼女の彼氏よりも長い時間やりとりをしているし、毎朝おはようとおやすみを送り続けているし、幼稚園から中学校まで同じところだったけれども、彼女と僕の関係は単なる友人であり、腐れ縁に過ぎない。
「幼馴染というのも違うもんな、っていう話は前にもしたか。」
「うん、私が君を認知したの、年長になってからだったし」
「ちゃんと話すようになったのは小2くらいからだったもんね。」
「君、年少の時に引っ越してきたんだっけー?」
「うん、3学期からだね。クラス違ったし。」
「3学期って懐かしいね。今じゃもう前期と後期で分けられちゃうし」
「花山先生って覚えてる?」
「あー、ずーっと年長を担当してたベテランの先生ね」
「あの先生、結婚して仕事を離れられました。」
「へー」
「結婚式場の前で待機してて、出てきたところでご結婚おめでとうございますって挨拶してきた。」
「なにそれ、呼ばれたわけじゃないの?」
「披露宴には入れてもらえなかった。会場を出てきた花嫁姿の先生に礼服で挨拶しただけ。」
「ふーん」
「他に懐かしい思い出かあ。あ、幼稚園の壁画に僕がいるの知ってる?」
「あー、天パの男の子が落ち葉で焼き芋してる絵ね」
「そうそれ。あの絵好き。」
ふと、大学最寄りの駅の名を告げるアナウンスが僕の耳に入ってきた。僕は慌てて電車を降りながらスマホをバッグにしまい、ホームを走っては階段を飛び落ちた。そして目当ての教室までを結ぶプロムナードの左右には、数億の大学生を見下ろしてきたであろう桜の木が風に揺られている。
「おやすみ。」
大学には無料のWi-Fiが飛んでいる。僕は再びスマホを取り出して、昨日の夜のおやすみを確認する。時期の早い夏の風が、僕の頭に桜の葉を乗せてきた。
「おはよう。」
今朝のおはようにも、やはり何の返信も届いていないことを確認した。今朝は 80% のほうだったらしい。もやもやした僕はため息をつく代わりに、もじゃもじゃした頭の上を手で払ったが、そこには既に葉っぱは無かった。頭皮に溶け出して消えでもしたのだろうか。
まあいいや、今日も授業がんばるか。そんな清々しい、また1つ賢くなったかのような気持ちで上げた顔の、眼前に巻き起こっていた葉桜吹雪を僕は1葉の写真に納めた。こういう春も、悪くないかもしれない。
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