第7話
「しかし手に入れたスキルが『鑑定』とはベタだな」
転生特典スキルとして解放されたのが『鑑定』という定番スキル。
これともう一つの『収納』があれば転生後の世界でらくらく過ごせるようになるらしい。
そんな夢のようなスキル。
鬼に金棒。虎に翼。異世界に鑑定収納。
勝ったか。 これはもう勝利が見えたのか。
この世界に生まれて1週間もたたずに、異世界ライフの勝利が見えてしまった。
楽勝だな、おい。
よし風呂に入ってこよう。今なら気分よく入れるわ。
さて風呂はどこかな?
「お、友達(えさ)じゃん」
森の中で風呂を探していると友達を見つけた。
おそらくハムスケの親戚だろう。
あいつと同じ紫色の毛並みをして、こちらを見ている。
ひとまず先ほど手に入れたばかりの『鑑定』を使ってみるか。
「これでお前の全てを裸にしてやろう! 見せてみろ、お前のステータスを」
と勝利を期待して使ってみたんだけれど…。
鑑定結果
名前:ポケットマウス
種族:下級魔物
状態:瘴魔化中
魔力量:85
瘴気量:45/85
…うーん。
「相変わらずよくわからんステータスだな。HP、MPの項目を増やしてもいいんだよ?」
ゲーム的なステータスはないらしい。
色々と気になるが、最も気になるのは瘴魔量だ。
「このステータスは俺にもあったし、確か前のポケットマウスを食べたところで増えたんだよな。そしてほのかな甘みがあった」
スライムに転生してこの方いろんなものを食べたが、俺が美味しいと思う食べ物は現状、瘴気を持っているものだけだ。
他の魔物を鑑定しても瘴気を持っていないものは味がしていない。
つまり味覚の正体は瘴気ということになる。
「スライムにとって瘴気は美味しいのか…。名前からして毒っぽいけれど」
これ食べて大丈夫なんだろうか…。
普通に考えたら、毒を食べてはダメだろうよ。
けど今までの経験からして、俺の味覚はこの瘴気を美味しいと思ってるんだよな。
常識的に考えればアウトだが、味覚を信じるならセーフ、むしろ積極的に取り入れるべきものだ。
「おいしいけれど、ダメなもの…。生活習慣病?」
くびれのないこの体にメタボなど関係がない気がするけれど。
…。
ひょっとして、瘴気とはこの世界の麻薬のようなものなのじゃないだろうか?
知らぬ間に自然界で生体濃縮された麻薬を俺が食べて美味しいと思っているんじゃないか。
そんな疑問が頭をよぎる。
実は瘴気中毒とかになってないよな。
…なってるかも。
実際すでに別の瘴気を欲しいと思ってるし。
ふむ…。
「まぁ、毒なんて美味しさの前に粗末なことだな」
毒? 何それ美味しいの?
いや、美味しいんだった。
美味しいは正義だ。それ以外に信ずる物などあろうものか。
「それに、『変換』スキルで霊力に変えれるから問題ないだろう」
要はこのスライムという種族はこの瘴気を食べて強くなるという生き物なんだろう。
だから問題ない。
むしろ、うまいものを力に変えられるという生物になれたんだ。最高じゃないか。
「というか、問題はそちらじゃなくて、ちゃんと食べきれてないことなんだよな」
毒かどうか、依存があるかどうかなんてクソほどどうでもいい。
そんなことを気にするなんてばかばかしい。
本当に気にするべきことは、食い方に無駄があるということだ。
ポケットマウスが持っている瘴気量と食べた時に得られる瘴気量が釣り合っていないのだ。
以前のポケットマウスが持っていた量はわからないが、目の前にいるマウスが持っている量は45、けど先ほど得られた数値は1。
明らかに数値が異なる。
「なんてことだ。つまりこれは俺が食べ物を粗末にしているというわけだ」
フードロス。由々しき事態である。
改善しなければならない。
このままでは友人と一緒に飯を食いに行った時に、ご飯粒を残したり魚の食い方が汚かったりして白い目で見られるだろう。
せっかく仲良くなった友人に、あぁこいつは甘やかされて育ったボンボンなんだなって認識されてしまう。
それは良くない。友達(餌)には俺は全てを食らいつくす立派なスライムだと思われたい。
早急に解決しなくては。
「無駄なく食べなければいけない。」
『与えられたものは全て食べる』
お残しはいけません。
改善の余地あり。
食の探求は長い道のりだ。
だがひとまずは検証だな。
ステータス
名前:なし
種族:スライム
種族:最下級精霊
霊力:13
貯蓄瘴気:3
転生特典スキル:『鑑定』、不明
固有スキル:『分裂』『吸収』『変換』
称号:『友情を食すもの』
スキル:
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