第6話
「なんでこいつはいきなり死んだんだ?」
俺の長年の友達ドブネズミのハムスケは、俺の体を食べて人生の喜びを感じ取った次の瞬間にもがき苦しんで死んだ。
まるで人生の喜びと苦しみを同時に見せられたような気分だ。
さっぱり意味がわからない。
原因は何だろう。
ハムスケは死ぬ時にもがき苦しんでいた。あれは毒だろうか。
ひょっとしてひょっとすると、俺の体って毒だったのか。
ステータスをもう一度確認するが、特に変化はなく最底辺のスライムであるということ以外はわからなかった。
…ふむ。
「ま、別にいいか」
別に俺の体が毒だろうがなんだろうが、関係ない。
大事なのは目の前に飯ができたということだ。
友達が死んで後悔とか罪悪感とかはない。
こいつは俺を食おうとしたのだから。
むしろこいつは長年(3日)の友を食べようとしたのだから、死んでも仕方がないだろう。
え? さっきまで友達をバカにするやつは許さないと言ったじゃないかって?
言ってませんが?
友情? 何それ美味しいの?
あぁ、なるほど。
それで今から友情が美味しいかどうか確かめるわけね。
「ではいただきます」
俺よりも大きな体を持つドブネズミの上にのっそりと上がって溶かしていく。
もしゃもしゃ。
…ん?
ほのかに甘いような…。
どういう味か期待はしていなかったが意外と食べれる。
モシャモシャ。
「ん? ほのかに甘い? あれ、こいつ味がするじゃん!」
ほんのわずかだが甘みを感じる。
この世界で初めて感じた味覚だ!
正直スライムには味覚がないのかもしれないって諦めてたけれどあったんだ!
やべえ、超ウメェ!
ずっと味のしない生活をしていたからか、ほんのわずかな甘みでも極上の味のように喜べる。
モシャモシャモシャモシャモシャモシャ。
「ゲップ」
あーうまかった。
ほんのわずかな甘みだったが、この世界で初めて機能した味覚がもたらした刺激は俺を満足させるのに十分だった。
飯は心を豊かにする。
無味乾燥な世界だったが、一気に色づいた気がするぜ。
「ありがとうハムスケ。お前のことは忘れないよ」
俺は死んでいったドブネズミのハムスケのことを心の中で合掌する。
友情、それはほのかに甘かったよ。
しかしなんでこいつは味がするんだろう…。
死んだ直後だからだろうか?
だけど今までも死んだ直後のやつを食べたことあったよな…?
他に違いといえば何がある?
「もしかしてこいつが友達だったから?」
ひょっとしてスライムは本当に友達を美味しいと思う生き物だったりして。
「うーん。思い返すとそれはそれでめちゃくちゃサイコパスなような」
だから、『ぷるぷる。悪いスライムじゃないよ』と人に近づくのか。
友達になった後に食べるために?
あの言葉にはそんな意味があったとはな。
「もしくは、こいつが裏切り者だったからか? 裏切りは蜜の味みたいな」
相手との信頼度ゲージで味が変わるのかな。画期的すぎるやん。
けどそもそも蜜の味は裏切った側の話だし、そうじゃなくとも昼ドラみたいな味覚だったらちょっと嫌なんだけれど。
もしそうなら今後味を楽しむために俺はいろんなやつに裏切られないといけないってことになる。
それは嫌だわ。
それにこいつが死ぬ時にめちゃくちゃ苦しんで倒れたんだよな。
「うーん。謎だ」
気になるところが他にもある。
「なんか死ぬ前と死んだ後で色が薄くなっていたような…?」
ハムスケ は紫色のまだら模様の毛並みを持っていたが、死んだ後は他のドブネズミと同じ 白い毛並みになっていた。
この世界の生き物は死ぬと毛の色が抜けるのだろうか?
うーん。わからん。
まぁ、それぞれ検証していこう。
一つ一つ確かめて行けば、いずれ明らかになるだろう。
あぁ…それにしてもハムスケはうまかったなぁ。
友達、美味しいのかねぇ…。
じゅるり…。
「称号『友情を食すもの』を取得しました!」
「転生特典スキルが解放されました!」
「スキル『鑑定』が使用可能になりました!」
ステータス
名前:なし
種族:スライム
種族:最下級精霊
霊力:13
貯蓄瘴気:3
転生特典スキル:『鑑定』、不明
固有スキル:『分裂』『吸収』『変換』
称号:『友情を食すもの』
スキル:
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