第5話
「…」
そのハムスケは俺が食べている木の実を見ていた。
たまに鈴のように大量に落ちてくる木の実でピスタチオのような形をしている。
味はしないものの、前世では好きだった気がするのでよく食べていた。
「なんだ。この木の実が食べたいのか、ハムスケ」
いいだろう。友達とはわけ合うものだ。
俺が木の実をひょいと差し出すとハムスケはガブリと食べた。
満足げな表情で非常に美味しそうにハムハムと食べている。
そうかそうか、美味しいよな。
俺には味がよくわからないが、友達にお前が美味しそうに食べる姿を見ると、俺もそんな気分になれるよ。
ハムスケはもう一つ欲しいと頼むような仕草を見せ、俺はそれに答えて差し出した。
ハムスケは当然のように差し出された木の実を食べた。
俺の体ごと。
「うんうん。確かに友達と分け合うものだから、俺の体も分け合うのが正しいよね」
だからハムスケが俺の体を食べるのは正しい。
友達なのだから。当然だよね。
「って、そんなわけあるか! 離せ!」
言葉が伝わっていないのか、ハムスケは俺のことなど気にせず体に歯を立ててちぎろうとする。
「ちぎれる! 俺の大事なもっちりボディがちぎれるって! 餅みたいにちぎれるって!」
すると今度はハムスターは体の半分をさらに飲み込もうとして全部を飲み込もうとする。
体の一部がモフモフしている。ハムスターの口周りのモフモフがモフモフしてる!
モフモフ! ピキピキ! モフモフ! ピキピキ!
感触が天国と地獄!
思わずほだされそうになるが、我慢だ! 自分を保て!
ここでもふもふの誘惑に負ければ俺が死ぬ!
「こいつマジで食いに来てる!」
向こうの方が体が大きいし、こちらは他にできることもないためにこのままでは普通に食べられてしまう。
冗談じゃない! 俺は食べるのが好きだが食べられるのは嫌いだ!
というかそんなやつどこにもいねぇ!
「ぐ! 仕方がない!」
『分裂』
その瞬間体が半分となって、俺の意識がある方が離れ、ない方はハムスケの口の中へと入っていった。
膨らんだハムスケの頬の中に俺の体が入る。
のぞみのものが食べれたハムスケは紫色の瞳を輝かせ美味しそうにもっちゃもっちゃと食べていた。
「チュー!」
人生の喜びを感じているのが見て取れる。
その一方で半分に分かれた俺は怒り心頭だった。
「この野郎!! 友達を食べるようなやつだったのか! ハムスターと言ったけどお前はドブネズミだ! お前なんてもがき苦しんで死んでしまえ!」
体を削られた俺はそのショックに耐えきれず、思うがままに罵声を浴びせる。
するとハムスケの口の中が一瞬光って、途端にもがき苦しみだしバタンと倒れた。
ハムスケが舌を出してよだれを垂らして、目から光が消えた。
「!!?」
おっかなびっくり近づき、触ってみると脈が耐えていた。
死んでる!
森の中に鳥の鳴き声が流れる。
「…え? どういうこと?」
ステータス
名前:なし
種族:スライム
種族:最下級精霊
霊力:13
貯蓄瘴気:2
転生特典スキル:不明
固有スキル:『分裂』『吸収』『変換』
スキル:
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