第3話
「ステータス」
心の中で念じると目の前にステータスボードが現れる。
名前:なし
種族:スライム
種族:最下級精霊
霊力:13
貯蓄瘴気:1
転生特典スキル:不明
固有スキル:『分裂』『吸収』『変換』
スキル:
「嘘…。俺のステータス…。ひく…なんだこれ?」
ステータスの存在は2日目から気づいていた。
気づいていたんだが…。
(なんか違くない?)
俺の予想したステータスと明らかにずれてるんだけど…。
hpmpどこいった。力とか素早さとかもない。
後から解放されるシステムなのかな。
「ただ一つ言えるのは…雑魚であるということ」
全くもってスライムらしいステータスなんじゃないかな。
スライムに転生したことを呪いたくないといったが、これを見ると悲しくなってくる。
「もうこれ、そこら辺のナメクジと変わんなくない? ナメクジにスライムって名前つけたってだけじゃない?」
名前をクソザコナメクジにしようかな。しないけど。
上から一つ一つ見てみよう。
まず種族の最下級精霊から漂うクソ雑魚感。
スライムといえば雑魚の象徴的なモンスターだというのにさらに最下級という種族がついている。
クソザコで最下級ということはステータスで保証されてしまっている。
ひどいよ。
わざわざそんな称号つけなくてよくない?
下級とか上級とかそういう括りで分けるのは良くないと思います。
まあただ精霊というのは気になるな。
魔物の中の精霊なのかそれとも生物の中の精霊なのか。
この2つで違いはありそうだ。
次に霊力。
とは言ってもこれが何なのかわからない。
当初はこれを魔力的な何かだと考え、よくある丹田に集中して感じ取ってみようと試みた。
「ふぉぉぉぉ!!!!」
スライムは集中した!
だが、何も起こらなかった!
…そういえば俺はスライムなので丹田がなかったわ。
丹田はへその緒と股間の間にあったはず…。
俺は自分の体を見た。
丸いぷにぷにの体が見えた。
へその緒どこだよ…?
霊力値13という数字もおそらく少ない方だろう。
そして他のステータスも初日から変化したのはよくわからない貯蓄瘴気が1上がっただけ。当初はゼロだった。
そもそも瘴気ってなんやねん。多分これためちゃダメなやつじゃない?
大丈夫かな。
総評すると本当に雑魚でスライムらしいステータスだろう。
ここから上昇するなんてことあるんだろうか。
ここ数日、食べる以外に特にやることもないものだから暇さえあればステータスを覗くのだが、変化はほぼなかった。
瘴気量が増えてはいるがこれは増やしていいものなのかどうかわからない。
残金100円の通帳をじーっと見つめて増えないかと願っている貧乏人のような気分だ。
辛い。
自身のステータスを見て悲観することに飽きたので、道草でも食べよう
もしゃもしゃ。
どれだけ食べても味がしない。
そして目の前に広がるの相変わらず色のない世界だ。
味もしないし色もない。
夢も希望もありゃしねぇ。
「いい加減スキルでも試すか」
ステータス欄にあったスキルを覗く。
『分裂』『吸収』『変換』
ステータスを発見した当初からこれらのスキルを使うかどうかを迷っていた。
あまりにもステータスがクソ雑魚すぎて、能力を使った瞬間死ぬんじゃないかと思ったんだ。
たまにあるだろう。そういったスキル。
それで取り返しのつかないことになったり自滅したりするんだ。
大概が悪役のする死に方だよな。
そんなこんなで警戒していたんだが、おそらく『分裂』は大丈夫だろう。
だって目の前のスライムが今分裂したのだから。
俺よりも少し大きなスライムが分裂して、俺より小さくなったスライムが2つ現れた。
確かに分裂だ。
このスキルに何の意味があるのかわからないが、俺も使ってみることにする。
『分裂』
スキルを念じると、俺の体が真っ二つに分裂して、視界が左側に移った。
見事分裂できたらしい。
そして右側にいた元俺のスライムを見ると、相手も俺を見た。
お互いが一瞬見つめあう。
じー…。
…。
そして俺じゃない方のスライムが離れていった。
「…え?」
離れた方はスライムの群れの中に混じっていき、やがてどこにいるのかわからなくなった。
「…」
一人森の中にポツンと先ほどよりも小さくなったスライムが残された。
どういうこと? 本当に分裂したってだけ?
分裂した相手を操作できるとか、両方に意識があるとかそういうんじゃなくて本当にただ分裂しただけ?
本当に言ってる?
「使えな!」
無駄に体積減っただけやん。
誰がこんなスキル欲しいんだよ。
これ欲しいのダイエット中の女子高生だけじゃないか。
俺はむしろ太りたいわ。もっと飯が食べたい。全然食った気がしない。
何で他のスライムは『分裂』しているんだろう。
絶対に意味ないじゃん。
…分裂するのってスライムにとってはうんこするのと変わんないんだろうか。
「なんかもう考えるのはバカバカしくなってきたな…」
他のスキルも使ってみることにするか。
『吸収』
スライムはスキル『吸収』を使った!
しかし何も起こらなかった!
むぅ…。
『吸収』と言うからには吸収する対象がないとだめなのかな。
目の前に落ちている道草に対して『吸収』を使う。
…。
反応がない。
他にも周囲に落ちていたものに『吸収』を使ってみたが何も反応がなかった。
「…フッ」
何だろう。
一般的なハズレスキルだって発動ぐらいはするのに。
このモンスター界最底辺にふさわしい外れスキル感。
「つ、次だ! まだ希望はある!」
『変換』
スライムはスキル『変換』を使った!
目の前に変換先が表示された!
「おお!」
やっと1つは使えるスキルを見つけたか!
喜ぶ心を胸に変換先を見る。
瘴気を変換します。
霊力
スキル
ほうほう。
つまりは瘴気を集めれば霊力かスキルに変換できるってわけだな。
試しに霊力を選択する。
ポチっとな。
霊力を上昇させるための必要な瘴気が足りません!
…。
次にスキルを選択する。
ポ、ポチッとな。
スキル変換候補がありません!
…。
最後に特に触れなかった転生特典スキルは相変わらず見えない。
「なるほどね」
遠くで魔物が嘆きながら逃げ惑う姿が見えた。
相変わらずの森だ。
空を見上げれば曇り空。世界は回っている。
今日もいい天気だぁ。
…あー。
牛丼食いてぇな。
卵と紅生姜をぶっかけたつゆだく大盛りが食いてぇ。
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