第六章 エーデルヴァイスの騎士
第28話 最期の作戦
絶えず響き渡る爆発と銃声の大音響の中、レンたちの輸送機は赤い空と
窓外では、光の十字架と爆散する機体の光があらゆるところで煌めいては消えていく。爆撃機の大型ロケット弾が発射され、色の違う〈
その隙に、別の戦闘機隊が爆撃機を食らう〈
討っては討たれ、そしてその爆炎が赤い空の至るところで咲き誇る。そんな地獄の様相が、機体の外では繰り広げられていた。
そして。その戦闘の様子は、敵地の深奥に近づくに連れて刻々と激化して、そして劣勢に立たされていく。
浄化の領域へと侵入してから、約二時間程が経った頃。各自で武器の点検を行っている最中に、レンたちはそれを聞く。
『まもなく投下地点に到達します。各員、降下準備を開始してください』
言い終わるのと同時に。機体後方の投下扉のロックが外れる音が響いた。
と思うと、その扉は徐々に下開きに開いていく。吹き込む風はなく、けれど鮮烈な戦場の音だけが入り込んでくる。
開いた扉から見えるのは、相変わらずの紅い空と
眼下の白黒の大地を見て、イヴがぽつりと呟く。
「あれ……時空断絶だっけ」
「正確には、時空“断裂”だな。浄化の力が強くなると、普通なら起こるはずのない圧縮が起きる。その結果が、あれだ」
詳しいことは、未だに何もわかっていない。ただ。
静かに目を細めて、レンは警告する。
「あれに落ちたら最後、〈ティターン〉だろうが二度と帰ってこれない。……落ちないでよ」
イヴとフリットは、隣で静かに頷くだけだった。
機内通信から、
『投下地点に到着しました! 各員、出撃開始!』
了解、と全員が返すと。レンは躊躇なく白黒と赤の世界へと飛び込んでいた。
レンを先頭にして、イヴ、フリットが降下に続く。三人の後方につくのが、リーナだ。
降下ののち、頭上の輸送機が来た道を帰ろうと進路を変える。その傍ら、レンたちは身体強化と武器への
身体が宙に浮き、降下が止まる。〈
視界の奥で時空断裂へと墜落する戦闘機を見ながら、レンは告げた。
「これより、第二特戦隊および特別挺身隊は北西方向へと突撃。敵地深奥の〈
通常のそれよりも遥かに巨大な〈ティターン〉の間を潜り抜け、時には撃破しながら、レンたちは〈
通りがかりの戦闘機が、敵に機体をぶつけてレンたちを守る。恐らくは、共和国軍の
たとえ、相手が忌むべき
でないと、この作戦は失敗する。そしてそれは、家族の死とともに人類の滅亡を意味するのだから。
十分ほどを進んだところで、
『なっ……!?』
『えっ……!?』
驚愕するフリットとイヴの声が通信機から聞こえてくる。ぎり、とレンも無意識に奥歯を噛み締めていた。
唯一。そこには、一年前と同じ深淵の黒色が巨大な円弧を形作る姿――〈
全て、一年前と同じ。
〈
周囲の取り巻きと、〈
通信機に、冷徹を装った少女の声が届く。
『ここまでの護衛、ありがとうございました。以後は作戦の司令通り、周囲の〈ティターン〉掃討をお願いします』
それだけ言い置くと。リーナは通信機を切断した。
直後。覚醒紋章を起動すると、立ち止まるレンたちの間をすり抜けて〈
その背中に目を細めて。レンは通信機へと告げた。
「……じゃあ、頼むぞ。フリット、イヴ」
『ええ』
『任せろ』
短く、そう応答するのが聞こえて。
レンは決意のこもった声で答える。
「……行ってくる」
それきり通信を切断すると。レンは覚醒紋章を詠唱しながら、
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