断章Ⅲ Savior of The White Silver
第27話 Savior of The White Silver
「さて……と。これで、未来への保険はつくれたかな」
紅と漆黒の闇の世界の中。
何とかレンを逃すことに成功したエルゼは、
現状の力では、この門を破壊することも、同化した〈セフィラ〉である〈
未来を繋ぐための、希望を紡ぐことはできる。
〈
なにせ、アティルナ共和国は世界随一の科学大国にして、この厄災を己の力のみで耐え切り、そして反抗を可能にした国なのだ。何もできないはずがない。
妹に使命を託すことになってしまうのは、それはとても心苦しいことだけど。
けれど。レンがいるなら、まぁ、大丈夫だろう。彼もリーナも、ボクの自慢の子たちだから。折れても、また立ち上がれるはずだ。
〈
瞬間、エルゼははっとした。……
二重に見える闇と蛇の腕。まず、これは幻覚などではない。そんな魔力の動きは、エルゼは感じていない。
そして。超古代文明に記されていた正世界の“セフィロト”と、それに酷似した〈
どこに繋がっているのかも分からない正体不明の門と、死亡時に魔力の爆発を巻き起こす、厄災の実体化ともいえる〈ティターン〉の存在。
それらの全ては、ある一つの可能性を示唆している。
に、と挑戦的な笑みを浮かべて、エルゼは深淵の闇に言い放った。
「……君の本質は、“そっち”か」
純粋な魔力の集合体。つまり、裏の世界の住人とも言える存在。それが、彼ら〈ティターン〉の正体だと、エルゼは結論づけていた。
先程から幻覚のように見える蛇の腕こそが、〈
〈ティターン〉の爆発は、何からの力で縛っていた魔力が、ダメージの蓄積によって弱まった結果だろう。圧縮の限界を迎えた魔力は、爆発力となって飛散する。
正直、自分でも突飛な考えなのではないかとも思う。けれど。仮にこの考えが当たっているのならば、まだ希望はある。
もし、〈
自然とそんな考えが浮かび上がってきていた。
正直、分の悪い賭けだし、そもそもの前提もただの推論でしかない。けれど。やる価値はあるとエルゼは判断した。
満身創痍の身体を叱咤して、残る魔力を振り絞る。右手の〈
どうせ遅かれ早かれ死に
〈
口の端を微かに吊り上げて、エルゼは呟いた。
「残りは、頼んだよ」
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