第3話 ナイト・オブ・コスモス
コスモス帝国騎士。
メインディッシュとしては、なかなか悪くない。帝国の上位兵種として、彼らは通常に高い防御力と攻撃力を持っていて、さらに副業としてサイオニックを使う。文字通り、帝国の剣であり盾でもある。彼らは要人の護衛任務でよく見かける。大量のバフを自分に積み重ねてから、数値的な優位を活かして一騎打ちを挑むのが得意だ。要するに、噛み応えのある肉だ。
ほら、見ろ。こいつ、早速スキルの詠唱を始めたじゃないか。
相手のスキル詠唱を途中で止めないのも一種のロマンだ。昔の特撮みたいに、変身シーンを途中で邪魔しないっていう暗黙のルールがあるだろう?詠唱を中断させて、主導権を握る?なに、それって美味しいのか?じっくりとヒーローが準備を整えるのを待ち、バフを積みまくった自信満々の彼らを地面に叩きつけて思う存分踏みつける。それこそが悪党の流儀ってもんだ。
「おおお!行くぞ!デュエル!」
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スキル:背中の傷は騎士の恥
-宣誓
-サイオニック
-指定
-デュエルエリアを生成し、一方が死亡するまで離脱不可
-デュエルエリアは1秒ごとにMP最大値の1%を消費
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スキル:正々堂々たる戦い
-宣誓
-サイオニック
-指定
-自身のステータスを公開する。代償として、相手のステータスを取得できる
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スキル:騎士は徒手で死なず
-宣誓
-サイオニック
-武器を所持しているときに限定発動
-STRが1.15倍上昇
-CONが1.05倍上昇
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スキル:忠誠は炎のごとく悪を払う
-宣誓
-サイオニック
-1秒ごとに自身の最大HPの1%を燃焼し、5m以内のすべての敵に固定ダメージを与える
-固定ダメージはWISに基づいて加算
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さすが上位プレイヤー、これらのスキルの組み合わせは明らかに短期決戦向けに特別設計されている。拘束、固定ダメージ、自身強化。時間が経つにつれて相手にとって不利な状況を積み重ね、最後に強化されたステータスと技術で相手を剣で斬り伏せる。やはり、帝国騎士らしいスタイルだ。
だが、これらのスキルを発動している間、自分も消耗しているんだろう?時間が経つにつれて、私たち双方のHPはどんどん削られていく。そうなれば、たった一撃でも受けたら即死。まるで綱渡りのように、生と死の境界を行き交う戦い。いいぞ。実にいい。お前もよくわかっているじゃないか。命を懸けた一騎打ち。これこそが、闘争の醍醐味ってやつさ。
「あはっ。来い。死合いをしよう」
「おおおおおおおっ!!!」
騎士の第一撃。まるで示現流のように大剣を高く掲げ、咆哮と共に突撃して斬りかかってきた。私はそれを正面から受けず、シールドで斜めにいなしながら防いだ。大剣がシールドに覆われたバリアを削り、火花が散る。私は足に力を込め、騎士の側面を突き、ショットガンの銃口を相手の身体の正中線に向けた。
パン!トリガーを引いた瞬間、騎士の周りに展開されたバリアが一瞬輝き、弾丸を防いだ。騎士は体勢を立て直し、大剣の空振りの勢いを利用して身をひねり、横薙ぎの一撃を繰り出してきた。それに対し、私は一歩踏み込み、シールドを大剣の軌道に差し込んで斬撃を阻止した。
シールドバッシュを見舞い、ショットガンを連続で撃ち込むと、火花が散り、騎士のバリアが点滅する。しかし、騎士は私の攻撃を意に介さず、再び大剣を高く掲げた。
脈動のように、騎士の身体から外側へ向けて烈焰の波が広がった。私はそれを防がず、そのまま炎のエフェクトが自分の身体を通り抜けるに任せた。HUDの隅で、HPが一気に減ったのが見える。なるほど、このダメージ量だと、一分も持たないだろうな。
「うおおおおお!」
騎士は再び咆哮し、手にした大剣をまるで神罰の雷のように振り下ろしてきた。
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スキル:帝国の裁き【霸】
-帝国剣術
-貫通ダメージ
-STRを加算
-CONを加算
-WISを加算
-スーパーアーマー効果付与
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私は斜めに身を翻して大剣をかわし、騎士の突き出した拳を頭を傾けて避ける。そして、シールドバッシュとショットガンのコンボをお見舞いする。まるで砂時計のように時間と共にHPが削れていく。
「なんでだ!なんで倒せない!」
「お前の帝国剣術、かなり高レベルに鍛え上げたんだろう?でも、それゆえに読みやすい。大技を使いすぎなんだよ。」
再びシールドで突撃し、相手の構えを崩すと、ショットガンをもう一発撃ち込む。騎士のバリアは、すでに半分以上が削られていた。
「焦ってきてるんじゃないか?ダメだよ。もっと楽しめ!」
「くそっ!」
「あ。だから言っただろう、焦りすぎなんだよ。」
「なっ!」
相手が雑な一撃を振り回す瞬間を見逃さず、シールドにスキルを付与して剣を力強く弾き上げた。全身の力と重量を込めて騎士に突進し、完全に相手の構えを崩した。ショットガンが愉快に火を吹き、ついに、騎士のバリアを打ち砕いた。
騎士は地面に尻餅をつき、慌てて剣を持ち上げて防御しようとした。しかし、私は彼の持剣する手首を足で踏みつけ、銃剣を彼の胸に深く突き刺した。引き抜いて、再び突き刺す。騎士は痙攣し、もがき始めた。私の往復する動作に伴い、彼の最後のHPが徐々に削られ、ついに底を突いた。
「あはっ。」
「やめ……!待っ……!」
最後の一刺しと共に、私はトリガーを引いた。赤いカーペットは徐々に暗い紅色に染まり、騎士は反応を失った。
まあ、サンドバッグとしては合格点ってところかな。次のキャラクターも頑張ってくれたまえ、帝国騎士君。
「ふんふんっ。では。」
私は銃剣を引き抜き、ショットガンを肩に担ぎながら、遠くの王座に座る皇女に視線を移した。少女は私の視線に気づくと、体を小さく震わせた。すぐに椅子のそばに置かれた軍刀に手を伸ばそうとする。
「やめる方がいい」
「っ」
「さっきの話、聞こえてただろう?私の原則。武装した者は、例外なく殺す。今のところは、お前を船の貨物として扱ってやれる。でも、その軍刀を装備する瞬間、お前を殺す。」
少女の手は宙で止まり、少し躊躇した後、力なく下ろされた。
「……これから私はどうなるの?」
「さあ?私はただ、依頼を受けてこの船にいる武装した連中を全員殺しにきただけだ。お前の処遇は、私の雇い主が決める。帝国の皇女か何かだろ?たぶん人質にされて身代金を要求されるんだろうな。まあ、利益がある限り、しばらくは命は保証されるんじゃないか?」
「……もしそうなら、私は終わりね。」
「ん?」
「だって、今の私は帝国にとって、何の価値もない厄介者だから。私を排除しようとしている兄上が、私のために身代金を払うとは思えない。」
「あっそ」
「でも、まだ死ぬわけにはいかないの。だから、あなたと取引をしたいの。海賊さん。」
少女は一瞬、達観したような自嘲気味の笑みを浮かべたが、すぐに凛とした、覚悟を決めた表情に変わった。
無力ながらも、強い意志を持つ皇女、か?なかなかいい設定じゃないか。
このゲームでは、外見だけではプレイヤーとNPCを区別するのが難しい。プレイヤーは没入感を高めるために、ロールプレイを好むし、このゲームの高性能なAIは、まるで魂を持っているかのようなリアリティを感じさせる。まあ、どっちでも構わない。いずれにしても、目の前の皇女は死の恐怖に直面しながらも、私と取引をしようという度胸を持っている。それは確かに、私の興味を引き起こした。
「ほう、取引か?まあ、聞いてやろうじゃないか。」
「さっき言ってたわよね。あなたは雇われているんでしょう?」
「ああ、その通りだ。お前、彼らよりも高い報酬を出せるのか?先に言っておくが、私は相当高額だぞ。」
「――宇宙の半分をあげる。」
「はあ?」
「宇宙の半分をあなたにあげるわ。だから、私の共犯者になってちょうだい。」
「……へえ?」
鋭い目つきの少女は、きっぱりと言い放った。
「それは、どういう意味だ?」
「――おいおい、本当に一人で乗組員を皆殺しにしたんだ。すげえ。」
私が詳しく聞く前に、少女の表情が再び強張った。振り返ると、海賊の男たちが悠然と船内に入ってきた。彼らはタバコをくわえ、不満げな表情を浮かべている。
「けど、俺たちが払った金にしては、この船にはあんまりいいモノがないな……あ?」
男たちは皇女を見つけると、下卑た笑みを浮かべた。その視線はまるで舐め回すように、少女の全身をじろじろと見回していた。
「――でも代わりに、上玉がいるじゃねえか。損失を埋めるには足りねえが、楽しませてもらえそうだな。」
哄笑する男たち。少女は何かを悟ったように、両手で自分の体を庇った。
ふむ。
どうやら、少女の提案の続きを聞くには、少し交渉が必要になりそうだ。
言葉を頭の中で整理し、私はリーダー格の海賊に向き直った。
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