第12話 ひさしぶりの夢

「黒住!DC持って来い!!!!!」


横田先生の怒声が響いた。


「はい!!!」


ナースステーションから除細動器を死ぬ気で病室まで運ぶ。


馬に乗りになって胸骨圧迫している、横田のそばにカートをつけるとジュールのダイヤルを回してパッドにゼリーをこすりつける。


横田先生はそれを強引に奪うと、ショックを入れた。


心電図の反応はない。


さっきまでなんともなかったのになんで。


ブロンコのあとのバイタルはおかしくなかった。


「黒住!!!心マ再開!!!」


半泣きになりながら、横田先生にかわって心マを再開する。


滴り落ちる汗の感覚もすでに無くなっていた。


----------------------------------------------------------------------------------


自然と涙がこぼれていた。


曇天の空から漏れ出す、汚い光に気づく。


暗い部屋。整理されていない机。服を投げ出したままのソファ。


新しく買い替えたベッドの感覚はまだ固い。


あぁ最悪な夢をみた。


最近はあまりこういう夢を見てなかったのに。


一日の始まりが最悪過ぎる。


今日は健診の非常勤に行く日だった。


こんなメンタルでマジカルプリティドームには絶対行きたくない。


秋葉原に出勤日じゃなくてよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る