第10話 ダンディーな男、上杉

「ところで先生、もう診療前だぜ。大丈夫なのかい。」


救急車を見送って一息ついたところで、上杉先生が身なりを整えながら、ちらと時計をみる。


あまりブランドには詳しくないが、相当高そうな時計だ。


ネクタイを締め直すその姿はダンディーなナイスガイそのもの。長身と筋肉質な肉体はスーツの上からでもわかる。


長髪が似合う男性は限られていると思うが、上杉先生はその一人だ。整えられた髪は後ろで束ねられている。


....


いや、姿と時計に見とれている場合ではない。


店の時計は12時45分を指していた。13時の診療開始まで15分しかない。ここからクリニックまで走ってやっと間に合うかどうか。


「やばい!!!」


放り出していたカバンを手元に引き寄せるとすぐに駆け出す。


「あ、上杉先生ありがとうございました!」


「おう、気をつけてな!」


ぺこり一瞥してすぐにヨヨギカメラを出る。


駅前のロータリーに出ると、秋にして強い日差しが降り注いでいた。



あ、スマホを店に預けたままだ…。


それと折角上杉先生にも会ったのにメールの返信をそのまま口で伝えなかった。


悔やまれるが、今は時間がない。


今日も秋葉原うえすぎ内科の外来予約はパンパンだ。

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