第13話

「う……うん。ここは……?」

「目が覚めたか?霜山。」

「あ、ああ……神代先輩じゃん………」

「頭でも打ったか?『〜じゃん』とか言うなんて珍しい。」

「あ、やば……」

少しは明るくなれたのか?有栖さん、何をしたんだ?

まあいいか。会話が可能ならさっさと作戦を伝えよう。

「霜山、目覚めた直後で悪いんだが……お前にしかできないことをやってもらいたいんだ。」

「え?!私にですか?本当に、本当に私ですか?星川さんではなく?」

 さっきまで死んでいたとは思えないくらい目を輝かせて言う。

「ああ、お前にしかできない。」

「何やればいいんですか?」

「あれの動きを止めて。」

と言いながら神代先輩は血の魔神の方を指差す。

「………はぁぁぁ。死ねって……ことですね。期待して……損しました。」

「おい、待て待て。死ねとは言ってないだろ。」

「じゃあ……なんですか?あの悪魔を芯まで凍らせろと言うんですか?無理ですよ、私の能力じゃ。」

「いやいや、芯まで凍らせろとまでは言わないよ。表面だけでいい。それさえしてくれれば、あとは僕と有栖さんでどうにかする。」

「……本当にどうにかなるんですか?」

「門もあの悪魔も僕がどうにかするよ。」

「死なないで……ください。」

「わかってるよ。有栖さん呼んでくる。織姫さん、霜山をお願いします。」

僕は有栖さんを呼びに足跡を辿った。

「ねぇ。空くん、あの子何?まさか浮気?」

鬼哭が首に腕をまわし、後ろから抱きついてくる。

「違うよ、鬼哭。僕らはまだ死ぬわけにはいかない。今はどんな手段を使ってでもあれを処理しないと。」

「そっか。よかったー。私のことを第一に考えてくれてるんだね。」

「君のために幽世に行って呪いを解くって決めたんだから、当たり前だろ。」

「空くん、大好き!!」

「僕もだよ。」

「お熱いですね、おふたりとも。」

目の前に立っていたのは有栖さん一人だけだった。ニコニコしていて少し怖い。

「有栖さん、レムレースさんはどこに?」

「位置についてもらってる。」

「霜山が目覚めたんでさっさと作戦を実行しましょう。」

「そうだね。今ここであいつを討つんだ。」



「ホージャ、お前さっき人の文化や生活が知りたいって言ってたよな。」

「……はい。えっと、……その、名前を……」

「ああ、教えてなかったな。私は、レムレース・ヴァン・キリシュブリューテ。……まあ長いから、ヴァンでいいよ。はぁ。昔はもう少し短かったんだがな……」

「?」

「いいや、なんでもない。ちょっと昔の話だ。」

「えっと、……ヴァンさん。その、さっきの続きなんですけど……」

「ああ。そうだったそうだった。三号が自由の身になった時に、一緒にいてやって欲しい。一人は寂しいだろうから。」

「なんで、そんな話を僕に?」

「それは……」



有栖は境華も含め、この場で戦力として使えそうな人たちを全て集め、作戦内容を話した。

要約すると、

①有栖の能力でわざと血の魔神を回復させ、近くに散らばった血を全て一体に集める。

②有栖は能力の回復で肉体の一部である血の拡散を防ぎつつ、境華に血の魔神の表面を凍らせ動けなくする。

③動きを封じた後、空の奥の手で門も含め消滅させる。

とのことだった。

「この作戦に何か質問はある?」

「レムレースさんは足止め役ですか?」

「ああ、あいつなら血の攻撃による体内破壊は効かない。故に今この間も足止めしてもらってる。」

「あの………私の能力じゃ……表面を凍らせるなんて……無理ですよぉ。」

「剣に霜を纏わせたようにすればいい。あの巨体を包み込むには時間がかなりかかるだろうが、どうにかしてくれ。二分でお願いね。」

「………どうにか、します。」



「みんな準備はできたか?じゃあ、作戦開始だ。」

「花籠女」

最初に仕掛けたのは月華だった。表面が籠目状の結界に血の魔神を有栖とともに閉じ込め、有栖が仕込みを完了するまでの時間を稼いだ。

血の魔神はかなり暴れたがうちからの攻撃に強い性質のおかげでどうにかなったがかなりギリギリだった。

「結界式 収束!」

血の魔神の体内に腕を入れながら、有栖は叫ぶ。

途端に周りに広がった血がこの魔神に集まっていく。

「花籠女!」

月華はそう言うと境華を結界で包み込む。そしてかごめかごめとと唱えてすぐに明るく華やかな服を選ばせる。

作戦の第一段階は成功したようだった。

「合図が……来た。私の……出番だ。霜懺悔!」

霜が降り始めた。これまでに見たことないくらい多く吹雪のように視界を真っ白に染めあげる。だが、しばらくすると吹雪のように視界を奪っていた霜は血の魔神に纏わりつき動きを奪う。

普段の彼女ならそんなことできない。しかし、月華の能力でバフをかけることによって一時的に特級レベルの出力を得ていた。

「神代先輩!あとはお願いします!!」

手足の動きを完璧に奪い、彼女は彼に叫び、声を枯らすように合図を送る。

「ああ、後は任せろ!」

瞬間、空気が変わる。重く、しかし威厳を感じるようなものに。

そして彼は人差し指と中指を合わせ、魔神に向ける。そこにエネルギーをどんどん貯めていく。

強大な力。それ故か、髪を逆立て、頭から竜の角を生やし、背中からは竜の翼を生やしている。

「終わりだ!血の魔神!!ジェネシスクライシス!!」

そこから神すら殺せるものを発射する。

それに反応し、血の魔神も顔の穴から巨大なビームを放つ。

放つのは空の方が早かったが、出力は魔神の方が高い。このままだと負ける。

どれだけ神を殺せると言われるモノだろうが蛇口自体が小さければその真価は発揮できない。

けれど、彼は負けるわけにはいかなかった。

この場で戦っている有栖さんや霜山、織姫さん、さっきまで足止めをしてくれてたレムレースさんのために。

そして何よりーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「空くん!!負けないで!!!」

愛している彼女を地獄から助けるために

「僕は、負けるわけにはいかない!!!」

その瞬間、身体の限界を超え、魔神の出力を上回った。

「いっけぇぇぇぇぇ!!」

血のビームを空が放ったビームがどんどん飲み込んでいく。血の魔神は押し合いで負けたと察し、逃げようとするが手足は凍らされてるので逃げることはできない。

血の魔神の抵抗は虚しく、ジェネシスクライシスをくらい魔界の門と共に完全に消滅した。

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