第9話
「空くんはどうしてこんな女なんか助けろって言ったの?……ちょっとムカつくなー。」
和服を身に纏い、黒色の眼帯で右眼を隠している女性。眼帯の上には動物の骨を装飾としてつけている。鬼哭は怪我をした境華を背負って移動していた。
「……空くん?………ああ、先輩のこと……ですか。なら……逃げるよう言って……ください。あの人、私と……同じ一級……なんですよね?相手は推定準特級………勝てるわけがない!」
「は?空くんが負けるわけないでしょ。空くんを過小評価しないで!」
この人、特定の人にすごい依存するタイプの人かも……もしそうなら、過大評価してるかもしれない。
「君は、空くんの本気を見たことあるの?」
「……い、いや。ないです。」
「そうでしょうね。だって、空くんは眼鏡に組み込んである術式によって常に能力を抑え込んでるの。それにいざとなったら切り札もある。負けるわけないよ。」
「は?!……じゃ、じゃあどうして……能力を抑えてるんですか?」
「それは、………その、私のためなんだ。」
「殺すとかカッコよく言ってたのにもう終わりか。案外、大したことないんだね。」
念動力によって夢冥を壁にめり込ませながら空は言った。
「こんなのにアリスリーさんが負けるとは思えないね。君の能力は空間の操作だろうし、裏技とかで場合によっては即死させられる、くらいしかできなそうなのに………どうやって殺したの?」
「お前が喰らえばすぐわかるでしょ!」
パッと夢冥は空の背後に一瞬で移動し、手で例の構えを取り、潰そうとした。
「なるほど、不意打ちか。」
神代は腕を背後に、いや夢冥の方に向け、拳を強く握った。
「いい手だけど、僕には効かないよ。」
次瞬間、夢冥の顔は誰もいない方向を向いていた。
「……き、貴様!」
「無理に動かないでね。君には色々と聞きたいことがあるんだ。」
両手、両足を念入りに潰してから神代は携帯電話を取り出した。
「ましまし、鬼哭?主犯の首と両手両足捻って捕まえたよ。霜山の治療が完了次第こっちに来てね。じゃあ、よろしく。」
「ど、どうして電話が使える?ここは電波が届かないように結界を張っているんだぞ!」
「そんな大きな声出さなくても聞こえてるよ。少し黙れ。」
「………………」
「うん。黙ったね。じゃあ特別に教えてあげよう。まあ特に難しくともなんともないことなんだけどね。電話から出る電波を相手の携帯電話に無理矢理念動力で送って-----------
バンッ!
「なんで避けれるんだよ。」
「手以外でもできるのか。クソッ。」
さっきまで装着していた眼鏡の大半が削れ、床に落ちた。
そんなことお構いないしに空は視線を夢冥に向けた。
「じゃあね。これはこういう使い方もあるんだよ。」
そう言い、夢冥は口の中に何かを転移させ、飲み込んだ。
「潰れろ!」
そう空が叫んだ瞬間、夢冥の身体は弁当箱ほどの大きさになった。
「何をしたんだあの女……」
なんだこの違和感?なんでこんなにあっけなく………いや、抵抗せずに潰されたんだ?
「境華ちゃん!どうしたの?その怪我。」
「静かに……して、ほしい。」
「わ、わかった。そこの和服の女の子、回復魔法をかけるの手伝ってくれない?」
「それができないからこっちにきたの。少しは頭を使ったら。」
「…クッ。そ、そうよね。言葉使いが酷いけど確かに正論ね。」
「私は空くんのところに戻るわ。彼女のことはよろしく。」
「わかった。任せてちょうだいな。」
私は境華ちゃんの傷に手をかざし、体内にある魔力を流し、治療していく。有栖ちゃんほどではないが、応急処置にはなるはず。私は一生懸命、術式を起動させた。
-------------------------------------------------------え?
後ろに何かがいる。こんな気配さっきまでなかった。周りには黒い天使の羽が舞っている。誰だ?誰がいる?悪魔?
和服の少女が必死に私の方に向かってくる。やっぱり何かいるんだ。私は振り向くと同時に手に剣の作品を出現させて斬り伏せた。
「え?夢冥ちゃん?どうしてこんなところに?」
斬られたにも関わらず夢冥ちゃんは私の顔を掴み無理矢理口を開けさせた。
「ど、どうしてこんなこと」
「私の、私たちのためにも死んでくれ。」
夢冥ちゃんは私の口に例の石を入れようとしている。まずい。
「そんなことさせない。」
和服の少女は夢冥の手や私の身体をすり抜けて石だけを取った。
「どういうこと?急に石が消えた。まさか私と星川以外にも人がいるの?」
私は教室の方に投げ飛ばされた。
「……そうか。そういうことか。貴様が怪異というわけだな。魔力を目に送らんと見えんとはめんどくさい怪物だね。」
「怪物とか傷つくなぁ。」
「さっきは見えなかっただけ。見えるなら特に怖い要素はない。」
夢冥が和服の少女の方に手で作った枠を向け、
潰そうとした瞬間---------------------------------------------------------------
コツコツコツコツ。
何かが階段を登る音がする。誰だ?
「嘘だろ、なんで、なんでだ。どうしてお前がここにいる?」
前髪は真っ白。なのに他は真っ黒の不思議な髪。それをカチューシャでとめ綺麗な境界を作ってる女性。その女性は人1人簡単に入れられそうな旅行鞄を持っている。
そうつまり、夢冥の前には朱輪有栖が立っていた
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