第8話
「ーーーーーーーは?」
「『は?』じゃないですよ。君はこれを幻覚だと信じたいのでしょうけどこれは本物の生首。朱輪有栖は私が殺したの。」
夢冥は女の首を地面に投げ捨てた。
「そんなの……見たら分かります。なら、どうして?」
「そんなに不思議ですか?こいつ、私の目的に邪魔だったんですよ。なら、殺すでしょ。」
「そんな…ことじゃない。どうして……私を不意打ちで殺さなかったんですか?」
「なーんだ。そんなことね。そんなの君がよくわかってるでしょ。君、弱いじゃん。だからわざわざ正体を現して、どんな顔するのか見てみたくてさ。思いついたらやるしかないでしょ。それに、君に何ができるの?」
確かにこの人は倒すことができない。けど、私の能力で目眩しをして、毒で弱体化させれば逃げることくらいはできるはず。今は時間を稼ぐ。能力をより強く発現させるために。
「あなたの目的は何?」
「死ぬ前に聞くことがそんなことでいいんですか?人間っていうのはよくわからないなぁ。……まあいいや。私の目的を当てられたら生かしてあげましょう。ほら、こっちの方が気分が乗るのでしょう?人間は。」
能力で霜の量と毒の効力が最大になるまであと一分。元々能力を使ってたおかげでいつもより早い。
「さあさあ、回答してくださいよ。一分以内に。」
都合がいい。適当に言って、すぐに逃げ出そう。
「そう…だね。君は………」
「ごめん。気が変わった。」
夢冥は片手で軽く枠を作り、それを潰した次の瞬間。バンッ、と音が鳴り、私の傘を持っていた方の手を消した。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「逃げようとしたでしょ?だめだよ。そんなことしちゃ。君の能力の弱点はちゃんとわかってるんですから。傘でしょう?霜に含まれる毒成分は君自身にも有効なんですから当たり前ですよね。」
「そこまで、…わかって…」
「早く答えてよ。私は待つのが嫌いなんだ。あってたら逃してあげるんだからさ。早く答えろよ。」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
…………落ち着け。深呼吸しろ。
夜桜は何がしたい。転生石を使って何をしたかったんだ?何を集めたかったんだ?
「ガハッ、ゲホッゲホッ」
「まだ能力を解除してないとか、君は死にたいの?」
どうせ死ぬならなんとかしてコイツを少しでも傷つけないと。それくらいはしないと自身の生に意味を見出せない。
「夜桜、夢冥…お前は、生徒の魂を回収して、それを…使い“門”を開く…ことが、目的……でしょ!」
「それは目的じゃなくてただの過程に過ぎません。あの方は世界の危機にしか駆けつけられない。だから、作らないといけないんです。あの方に会うために。」
目的じゃなくて手段?どういうことだろう?会わないといけない?会わないとできない何か……………
あの能力の火力。そして“あの方”という発言。コイツは悪魔で確定でよさそうだ。
悪魔にとって大切なもの……契約?…………いや、違う。もっと他の何か………………
夜桜夢冥、夢冥………ムメイ……無名?まさか……
「名前か?お前が欲しいのは?」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー。そうか。君は察しがいいね。正解だよ。逃げていいよ。早く行きなよ、足はまだ消してないんだから。」
言ってることが理解できなかった。逃げてもいいと言ったのか?そ、そうか。なら逃げよう。毒でクラクラするが、どうにか戻って伝えないと。私は階段に向かって歩きはじめる。
「あ、これは持っていってね。邪魔ですから。」
何かが背中に当たった。振り返ると朱輪さんの頭が………え?
そこには手で四角形を作っている夜桜が立っていた。
「バイバイ、人形師の取り巻き!」
手で作られた四角形が潰される瞬間、パリンッ!
窓を蹴り割って、神代先輩が入ってきた。首に手を絡めて抱きついているのは鬼哭さん?
「鬼哭、霜山を連れて逃げろ!」
「……わかったよ、
和服の女がこっちにきて、私の腕を掴んで……
ーーーーーーーーえ?
あるはずの足場をすり抜け、下へ落ちた。
「霜山、だっけ?急に消えたけど何かしたんですよね?で、君は誰です?あの人形師の親族ってわけでもなさそうだけど。」
「え?なんであなたに教えないといけないんだい?僕の中では、君の評価は最悪なんだけど。名前も知らないし、余計に言う必要がないね。」
「怒ってるんですか?君。けど、弱いあの子が悪いんですよ。私の故郷じゃそれが常識。だから私は悪くないです、白黒眼鏡君。」
「ん?僕、眼鏡は白黒じゃないよ。あと、髪は黒と灰色だし。」
「そんなことどうだっていいじゃない?どうせ殺すし。」
「それも、そうだね。まあ、君に僕を殺せるとは思わないけど。」
「舐めないで欲しいな、白黒頭君。」
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