第7話
境華は神無に言われた通り、校舎内で待機していた。が、何も連絡が来ない。暇なので今はもう使われていない
旧校舎の方を勝手に調べることにした。いずれ調査をするのなら早めにやっておこうと思ったのだ。有栖に、人に褒められたことによる喜び、そして一時的に訪れている全能感。それらが自身が勝手に行動することを肯定してしまった。こんな埃の被ったところいつ調べても同じ同じ。などと考え旧校舎の中を調べる。旧校舎は今は物置として使われているのもあり、ものが散乱している。ここから探さないといけないのかと思い、境華は億劫になっていた。
しかし調べると決めたからには少しは探さないといけないよね。がんばれ私、やればできる子だから。そう自分に言い聞かせて散らかってるところを無視して上の階に行った。三階から調べよう。具体的にいうと旧生徒会室。そこから調べよう。そう心に決めたそこへ向かった。
「え?何…これ。」
三階だけが綺麗に掃除されているのだ。何かがおかしい。うん、明らかにおかしい。それと何か変な匂いがする。旧生徒会室の方からだ。向かってみよう。
変な匂いは旧生徒会室の方に行くほど強くなっていた。何かあるかもしれない。私は三階全体に能力で霜を降らした。私は所持していた傘を開く。少しは足止めになるはず。……つまり逃げれる可能性がある。行こう。私は恐る恐る扉を開けた。
その部屋には何かの結晶が散らばっていた。
「これ……転生石?話ではピンク色って、聞いてたけど………白色のものもあるんだ。純度の差とかが、原因………なのかな?」
「何をしているの?」
「誰?」
そこには夜桜会長がいた。
「休んでないで大丈夫なんですか?」
「君たちに頑張ってもらってるのに私だけ休むのは悪いと思ってね。霜山さんがここに来るのが見えたから手伝おうと思ってね。」
「そう………なんですね。」
「まさかこんなところで転生石の生産が行われているだなんて。気づかなかったよ。」
「そんな……演技いいです。あなた、どうして毒に侵されていないんですか?」
「こんな弱い能力で私が傷つくわけないでしょう。この学園の実質的な支配者は私ですよ。こんな弱い毒で倒されてしまったら生徒会長の名が泣くでしょう?まあ、そんなことどうでもいいですね。これを片付けましょう。」
会長は両手でカメラの画面のように長方形を作り、それを中心に近づけ、そして潰した。
バンッ!音をあげ、転生石があったところが床ごと消滅していた。
「驚かせたよね。これが私の能力。指定した空間を消滅させることができるの。」
「正直、驚き……ました。」
こんな能力を所持していながらアルタイルがノーマークだった?準特級レベルだぞ。この人がまさか……
「は、早くここから離れましょう、夜桜夢冥生徒会長。……お身体に障りますよ。」
ふと、朝聞いたバスのことを思い出す。あの犠牲者が全く確認できなかった事故。
この能力ならバスの謎の事故を起こせるかもしれない。バスの中に乗客も運転手も死体も何もかもがなかったことも説明がつく。けど、誰を殺したんだ?……まさか朱輪さん?その可能性は大いにある。口封じのためにわざわざ殺しに行くほどのことにあの人は気づいてた?まさか、朱輪さんは敵の目的や正体が分かってたってこと?
………ないな。あの人が気づいてたのなら私に何か伝えるはずだし………いや、けど、私を敵のマークから外すためにあんな行動に出た?あの人の性格的にこれもないし……………………
考えがまとまらない。
神代先輩には考えすぎる癖があるって注意されたばかりだし、きちんと自身の中で結論を出せるように根拠を少しずつでも集めていかないと。
「えっと……夜桜会長は、今朝………何をしてましたか?」
「急な質問ですね。そうだなーーー、具体的に何時くらいの話をすればいいんだい?」
「じゃあ、私たちに会う前くらいで、お願いします。」
「えっと、確かジョギングをしてましたね。」
「どのようなルートで?」
「尋問みたいになってきたね。まあ、いいです。学園の所有する裏山を走ってました。」
「そう………なんですね……。」
「もしかして私のこと、疑ってますか?」
「いや…あの……違うんです…。朱輪さんが死んでる可能性があって……それで、あなたの能力見た時に、この能力ならできるんじゃないかって思って……。早とちりでしたよね?すみません。」
「謝らないでください。誰にでも間違いはありますから。」
そもそも私が前を歩いていて、会長が後ろを歩いているんだからそもそもこんな質問しちゃいけなかった。
けど、よかった。もし、彼女が犯人だったら私はもう殺されている。疑ってた自分が恥ずかしい。警戒しすぎていたのかもしれない。
「あ、そうだちょっとこっち向いて。」
「なんですか?」
私は勢いよく振り返った
霜山が唯一したミス。それは自身で変に自信をつけてしまったことと、なんとなくいけるという確信を得てしまったことによる判断。普段の彼女なら絶対にしない行動だった。しかし彼女はそんなことにも気づいていない。なぜなら人間は自身の一途期の感情に流されやすい生物だからだ。そして全てが終わった、もしくはもう自分たちの手ではどうにもならない時に気づくのだ。その時の判断が間違いだったと。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーは?
夢冥は有栖の生首を持っていた。
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