第6話

「会長は動けないので、僕たちだけで石を回収しましょう。」

「りょ、了解です。あ…あの、ちょっと………いいですか?」

「はい。なんでしょう?」

「私たちには、……朱輪さんみたいな…物を簡単に探せる手段はありません。それは…どうするんですか?」

「その件でしたか。それは私に任せてください。こう見えて、僕は人の思考が読めるんです。実際、さっき星川さんはさっき仕事をしてないから焦っていましたよ。」

「そんなこと言わないでよー。……恥ずかしいから。」

沙絵は顔をあからめる。

「こんな具合にわかるので隠し場所くらいすぐにわかります。」

「すごーい。神無ちゃんの超能力はこう言う時に役立つものなんだね。」

「僕は超能力を持ってないんです。家が少し特殊で、無能力にこだわってて。他人と違うのは怖いから一生懸命覚えたんです。こんなのにしか縋れなかったのが悲しいですけど。」

「………そうなんだ。神無ちゃん、その特技は誇っていいと思うよ。大変だったよね、それを身につけるの。周りと違うのが怖いのはよくわかるよ、私もそうだったから。自分が世界の異物として扱われるのは辛いよね。」

少し神無の口角があがっていた。自身の気持ちに共感してくれる人がいたのが嬉しかったのだろう。

しかし、同時に目を曇らせた。自身がしていた誤解。ありていに言えば、偏見に。

神無は言葉を探す。自身の過ちのために。

「あなたも同じだったんですね。僕、勘違いしてました。星川さんを何にも苦しいことは経験していない陽キャだと思ってました。すみません。」

「気にしないで。よく言われることだから。」



「僕と星川さんは一緒に各クラスを回ってクラスの人から回収、霜山さんは隠し場所がわかり次第連絡するので、そこに行って石を回収してください。あ、あと能力を使って生徒の動きにくくしてください。」

「私は神無ちゃんと一緒に行動するっぽいけど、私にはやってほしいことはないの?」

「電話がこの学校内では使えないので、連絡手段を出していただきたいです。」

「私の能力知ってたんだ、神無ちゃん。」

「詳しくは知りませんが、夜桜さんから手数を出せる能力とだけ聞きました。ちなみに具体的にどんな能力なんですか?」

「私の能力は作品に命を与える能力なんだー。」

「……えっと。つまりどういうことですか?」

「つまり従者を作って操れることができるってこーと。」

「日常生活で欲しいですね、その能力。」

「そうだろう。そうだろう。まあ時間はかかるから少し待ってて。」



 「こんにちは。生徒会の黒崎です。ここにきたのは、最近校内で噂になっている転生石を回収しにきました。持ってる人は速やかに渡してください。……というか、出せ。お前らに割く時間がもったいない。」

「ちょっと言い過ぎでは?神無ちゃん。」

「全クラスから今日中に回収するんですよ。こいつらのくだらない価値観の連中に合わせてると終わりません。それに、会長の仕事も増やしたくない。ですので、これから協力的じゃない人には精神的に追い詰めます。」

待って待って。怖い怖い怖い。神無ちゃん、まさか認めた相手以外にはこんな塩対応して生きてきたの?

そりゃいじめられるでしょ。私はこの時、初めてイジメにはいじめられる方にも問題があることがあるということを学んだ。

ギロッ。え?睨んできたよ。ほんと怖い。境華ちゃん、早く合流したいよーーー。



 ニクラス目での回収作業が始まった。妨害してくる人もあまりいなかったので順調に進んでいる。……けどそのことが逆に不安でならない。先生方にも協力してもらっているとはいえ、例の石は飲み込むだけで効果が発動するらしい。私の不手際で人が死ぬなんて起きちゃいけない。私は人を助けるために生かしてもらったんだ。頑張らないと。しかし、今のところは石をどうこうする音もないのでホッと息をついた。

 カンツンカンツンカン

金属と何かがぶつかる音がする。私の耳からじゃない。HOT鳥スからだ。

HOT鳥スは鳥の身体の首から上にHOTって文字が顔面としてくっついてる私の自身作のうちの一つである。

確かHOT鳥スは次回る三組を監視させていたはず。何かあったのかな?リアルタイムで情報を共有できるとはいえ、私の技量じゃまだ視覚共有まではできない。

ちょっと嫌な予感がする。私は隣の教室に急いだ。実際走れば十五秒もかからず着くはずだった。

扉を開け、中に入る前に気がつくべきだったのだ。必ずしも隣の教室が次の番号の組ではないことを。

そう、隣の教室は社会科準備室だったのだ。

 何かを急いで取り出し、何かしようとする音がする。私が走ったことが事態を悪化させたのだ。

ヤバイヤバイヤバいやばいやばいヤバい。どうにかして止めないと。私は服から手帳を取り出し、あらかじめ描いておいた紙をちぎった。それも二枚。

「キャップ、ユリー、石を持ってる学生の行動を妨害して。」

ちぎった紙から妖精とカラスが出てきた。私の命令通り妨害に向かった。

よかった。これで間に合う。扉を開けて勢いよく教室に入る。学生の一人が石を今まさに飲み込むために石を持った腕を天に向けてあげようとする。妨害しているのに全く動じていない。これが私のエゴだってことはわかってる。

けど、ごめんね。

「命令ッ!今すぐそいつの腕を反対方向にへし折れ。」

少し乱暴してしまったが、よかった。これで石をすぐには飲み込めない。ホッと息をついた。



………………………は?

その教室にいた先生が転生石を服のポケットから取り出し、飲み込んだのだ。

熊太さんの言っていたことが確かなら、もう間に合わない。

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