第4話
朝になった。全滅させることはできたが、境華を労働させすぎた。彼女にはここで休んでもらって、ボクはその間に熊太さんに状況を説明しよう。
ボクは電話を鞄から取り出し、熊太さんにかける。
「………あれ?繋がらない。」
何かおかしいぞ。なんだ?黒幕が結界の術式で妨害しているのか?けど、直接伝えに行けばいいし。まあいいや。
僕は熊太さんのところに直接報告に行くことにした。生徒会の奴らには、まあ境華から伝えてもらおう。
「境華、ボクは熊太さんに報告しに戻るから、そっちの報告はお願いね。」
「え?!ちょっと……困ります。」
「大丈夫大丈夫。まだ敵は動かないから(多分)」
「わかり……ました。」
「じゃあ、よろしくね。」
「文明の力ってサイコー!」
ボクは行きの辛かった道のりを思い出しつつ帰還する。やはり暖房があるのは素晴らしい。行きがあんなんだったからより強くそのことをを実感する。バスにはボク一人しか客はおらず、一人旅をしている気分だ。あと三十分くらいで着くな。そこまでゆっくり休んでーーーーーー痛ッ
バスが急に停車した。何か事件だろうか?
「何かありましたか?」
運転手に事情を聞こうとする。
しかし、返事がない。どういうことだ。私は前の方を確認するために歩く。眠い目を擦って確認する。
ボクの目がおかしいのか?木にバスがぶつかっている。
……………いや、違う。おかしいのはそこじゃない。おかしいのは運転手の頭も含めて定規で測ったかのようにバスの前方が削られていたのだ。敵にやられたのか?………焦るな。まだ助けられる。リスクはあるけど結界術を使ってでも助ける。
「結界式 演算」
結界式、自身の能力を強化する手段の一つ。術者の心象風景を核とし、結界を張る。
これはかなり難しい技術であり、通常は心象風景をイメージできるようにきちんと詠唱を入れるが、緊急時なので彼女は詠唱破棄をした。
世界が暗転する。そして何もない黒い世界に入れ替わる。
私の技術なら彼をまだ助けられる。
よし、あと……少し。いける。……………ふぅ。なんとか治せた。あれ?この人、魂がない。
「敵に襲われるリスクがあるのに他人の心配できるなんてよほどのバカだな。そんなに善意の塊なのになぜ、こんな何もないつまんない世界しか持ってないのかは理解できないね。」
「誰だ?」
勢いよく振り返る。
「お前は…………そうか、そういうことか。………しくじったな。」
「今回はきちんと殺しに来てよかったよ。」
「……ごめんなさい、御母様。」
ごめんね、境華。
意味、あったのかな?ボクの、記録。いや、人生か。
………そうか。僕は、彼女に自分を重ねて見ていたのか。
ああ。ならきっと、御母様はお喜びしてくださる。だって、僕が完璧な個としての自分を得れたのだから。
喜びと、悲しみとがボクの、僕の胸の中を交互にまわり、器の中を濁らせる。
僕の意識はそこで途切れた。
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