水星と金星    

世界政府は過密になり過ぎた月面の人口対策として、火星への移住を

進めているが、いずれは火星の人口密度も限界になると予想されるため、

水星や金星の環境を人が住みやすいように人為的に変えるという大事業が

始まっている。


水星と金星については環境が厳しいため、惑星の環境を人為的に変えて、

人が住みやすいようにするというテラフォーミングと呼ばれる

プロジェクトが検討・計画されいる。


水星に関しては、まだまだ口述の重力問題があり、研究・検討段階と

だが、金星については一部の実行が開始されているが、その計画年数は

非常に長い年月を必要としている。


このため、水星と金星には本格的な移住は開始されておらず

宇宙ステーションなどに研究者やテラフォーミング事業に携わる人々が

滞在しているという状況である。





【金星テラフォーミングの必要性】

金星は、分厚い二酸化炭素の雲に覆われた星であり、その温室効果による

高温と、高い気圧で地上は人が居住できる環境ではない。

この温度と気圧の問題を、数百年かけてでも改良しようという気の長い

大事業となっている。


【金星と水星のテラフォーミングの優先度】

同じように水星のほうもテラフォーミングが検討されてはいるが、

金星のほうが先行している理由は、大きくわけて3つある。


(1)一番の問題は太陽の重力

水星は大気が少なく大気圧の問題はないが、太陽に近いためその重力井戸

を深く降りなければ到達できず、水星の軌道に入るときにも、出るとき

にも多大な燃料を消費するので、人や物の輸送にコストがかかるという

問題があった。

この問題はテラフォーミングに必要な物資の輸送にも大きく影響する。


この重力の問題は、温度や圧力といった、人為的に変えられる可能性の

あるものではないため、金星のテラフォーミング事業が進んでいる

理由の一つである。


(2)二番目の問題は、惑星の重力の差

 もう一つの理由としては、水星と金星自体の重力の差である。

 金星の重力は 8.87m/s2 (約0.90G)

 水星の重力は 3.70m/s2 (約0.38G)

という差がある。


水星の重力は、ほぼ火星とおなじであるが、地上で人が暮らすためには

遠心力を用いた疑似重力を発生させる居住施設の建設が必要となる。


その一方、金星の約0.90Gという重力は、疑似重力を使用しないでも

人類が健康に生活ができるというラインに入っており、地上の居住施設

は地球上と同じように疑似重力の発生を考慮しない建築でもよいと

考えられている。


このことから、高温/高圧の問題を解決できれば、

水星よりもはるかに移住施設の建設が楽になると考えられている。



(3)三番目の理由は惑星の大きさ

水星と金星では惑星の大きさが全く異なるため、テラフォーミングが実現

できたあとの、移住可能な人口は金星のほうがはるかに大きい。



【金星テラフォーミング計画の概要】

金星の大気の大部分は二酸化炭素であり、その分厚い大気による温室効果

で地上は、平均460度という鉛が溶けるほどの高温であり、

大気圧は約92気圧(地球での水深920メートルに相当)という

大きな気圧になっている。

また、分厚い二酸化炭素の雲によって太陽光は地上に届かず、地上は

暗闇の世界になっている。


これを解決する方法は、ごく簡単に言えば下記の3段階になる。

(1)冷やす (2)海を創る (3)二酸化炭素を海に溶かす


いずれも、言葉でいうほど簡単ではない。各工程は下記。

(小説第31話では、ルビーが『実際は神様にしかできない所業』と表現)


(1)冷やす 

太陽の側に反射シールドを張って太陽光を防ぐ。

金星の公転速度に合わせた周回軌道に人工衛星を配置し、その人工衛星間に

極薄の反射シールドを張り巡らすという計画になっている。

現在はまだ七基の人工衛星が配置されて、数枚の反射シールドを設置し

その安定性を確認している研究段階。


(2)海を創る

金星には二酸化炭素(CO2)は豊富にあるが水素原子が希少である。

このため、木星で採取した水素ガスを液化してタンクに詰めたものを、

木星から高速で発射し金星の宇宙域で受け取るという実験が始まっている。


類似するシステムは、燃料水で行われており燃料水の補給ステーションが

すでに実用化されている。


酸素については、二酸化炭素を電気分解することで得られるため、木星

からは液化水素だけを輸送すればよいため、燃料水の補給ステーション

に類似した液体水素輸送ステーションが、木星宇宙域に建設されている。


しかし、実際に海を創るほどの水を貯えるためには、膨大な量の

水素を輸送する必要があり、技術力の発展で輸送効率がアップすることを

考慮しても、数百年はかかるという見通しになっている。



(3)二酸化炭素を海に溶かす

二酸化炭素は条件によっては水によく吸収されるが、金星の膨大な二酸化

炭素を溶かすには、広大な海が必要となるため、まだまだ先の話に

なっている。(1)(2)の工程が十分に進行したあと、二酸化炭素の

海洋への吸収を早めるための諸設備が建設される計画となっている。



【水星と金星の宇宙防衛部隊】

SGの水星部隊はSG1、金星部隊はSG2であるが、

両者ともにテラフォーミング事業に携わる宇宙ステーションや施設を

守るだけの組織であり、かなり小規模な部隊となっている。

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