第48話

「取り返しのつかないことをしたと、反省してもらいたい。もしも、ユアンの気持ちが手に入らなくとも、自己満足にひたることで彼を苦しめるのはいけないことだ」


「せっかく彼の気持ちがリゼルさんに向いているところを、別の方向へ行ってしまいますよ。まっすぐな愛情が一番嬉しいでしょう?」


マクシミリアンさんがちらりと視線をやると、そっちからユアンがやってきた。


「店長、ここを辞めたいんです」


「辞めてどうするつもりだい?」


ユアンはヴェリルを見て、驚いたように目を丸くした。


「先生のところへ……行くつもりでした」


「私が何もしないと言ったら、どうするんだい?」


「リゼルを連れて、旅に出ます。魔法を勉強しながら、力になってくれる魔法使いを探します」


「君は一生を、彼女への救済へあてると言うんだね。それが償い? そこまでしなくてもいいのでは?」


少し意地悪な言い方をするヴェリルに、ユアンは姿勢よく顎をあげて、はっきりとこたえてくれた。


「いえ。それが僕の役目です。僕はリゼルの……婚約者ですから」


ああ、ユアン!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る