第46話

私を見ていたユアンは、目を見開いて、次に驚いたように口を開けた。


「リリアナ……、いや……リゼル……?」


そうよ! 気づいてくれたのね!


心が通じた。私たちは、お互いの心で会話ができるようになっていた。


「リゼル、どうして? どうして、こんなーー!」


リリアナに願いをかなえてもらったの。これからは、私がずっとそばにいるわ。


「リリアナがこんなことを? まさか!」


リリアナを非難しないで。彼女には何も言っていない。ただ、願いをかなえてくれるって言われたの。私の「願い」を、ただ、かなえてくれただけなのよ。


「こんなことが君の願いなのか?」


そうよ。私の願いは、ずっとユアンのそばにいること。


ユアンはうつむいて、肩を震わせていた。泣いてるの? 怒ってる?


ユアン。ユアン。笑顔を見せて。


彼は顔を上げると、不思議な表情を見せた。泣いているような、怒っているような、諦めているような、何かを決意しているかのような。


「この魔法は僕には解けない。でも、必ずどうにかする。僕が必ず、君をもとに戻してみせる」


私はこのままでいいのよ。だって、幸せなんだから。ユアンが笑ってくれたら、もっと幸せ。





ーー本当に? 後悔はしていない? するはずないわ。でもーー。

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