エピローグ

第45話

エピローグ



「店長、外の仕事は終わりました」


「ありがとう。では、商品のほこりをはらって、陳列の乱れを直してくれるかな?」


「はい」


ユアンとマクシミリアンさんの会話を聞きながら、私は考えていた。

今、私はリリアナになっている。リリアナという人形になっている。

動けないし、話せない。けれど、見ることはできる。


それでも、しばらくすると不便さを感じるようになった。だって、視界に入るものは見えるけれど、そこからはずれると、見えないんだもの。ユアンが見えない。


ユアン。ユアン。ここにきて。話しかけて。笑って。


私は祈ることしかできなかった。


どのくらい時間がたったのだろう。やっとユアンがきてくれた。


「リリアナの髪が乱れているな」


ユアンは親指と人差し指でちょいちょいと私の髪を直して、しゃがみこんで下から私の顔をのぞきこんできた。


嬉しい。こんなに近くで顔が見られるなんて。少し恥ずかしい気もしたけれど、今の私なら、動けないことを理由にして、顔を見返せる。


綺麗な顔だ……と思った。こんなに綺麗な男の人を、見たことはない。私はユアンの顔も、声も、後ろ姿も、すべてが大好きだった。

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