第43話

「ただのお人形ですよ。でも、とても可愛らしいでしょう? 大事にしてあげれば、同じように気持ちを返してくれますよ。今までとは違う、お人形ですけれどね」


マクシミリアンさんがいつものように「いらっしゃいませ」と言いながら、穏やかに営業スマイルを浮かべている。


「店長さんは、最初からわかってたの? この人形に、魂が入っていたこと。ユアンが、別の世界からきた魔法使いだってことを」


「最初からすべてはわかりませんよ。じよじょに、ですね。人形が何か訴えているとか、ユアンには特別な力あるようだ、とかね。少しずつです」


「店長さんは、ヴェリルと同じような魔法使いなの? 猫に変身は、できる?」


マクシミリアンさんは優雅な手つきで顎に指を当て、少しばかり考えた。


「猫に変身は、したことはありませんが……。あの方は、私たちとは少々違うようですね」


「ヴェリルは人間ではないってこと?」


「精霊……と考えておけばいいのでは? 別世界の方ですしね。それを言ったら、ユアンもですが。

あ、ちなみに、私は人間ですよ」


人間でも、魔法使いだ。魔法使いだなんて、物語の中だけに出てくるものだと思っていたのに。


ユアンも魔法使い。リリアナも、魔法を勉強していた。


(あ、願い事……)


「あのね、リリアナに、願いを一つかなえてあげるって言われたの。私、口には出さなかったんだけど、伝わっちゃったみたい……なの」


「どんな願い? よかったら、聞かせてもらえますか?」


私がユアンを好きなことなんて、とっくにばれているんだろうし……。この人に隠し事はできないだろう。

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