12 願い事は……

第42話

12 願い事は……



今日は土曜日。学校はお休みなので、開店の時間きっかりに、私は『虹色の羽』へ行った。


ユアンは外の花や木に水やりをしていた。


「ユアン」


「やあ、リゼル。おはよう」


「おはよう。……リリアナが、行ってしまったわ」


ユアンはじょうろを片づけながら、窓の汚れなどもチェックして、忙しそうに動き回っている。


「ユアン!」


「うん、ちゃんとお別れはしたよ。僕のところにきてくれて、それから君のところへ行くと言っていた。おつきの天使も一緒だったね」


わざと、平気なふりをしているの? 大人だから、悲しみは見せないの? それとも、本当に、もうリリアナがいなくても平気なの……?


私はなんと言っていいのか、わからなかった。


「リリアナは、いつもの場所にいるよ」


「え?」


「あの人形だよ。もうリリアナの魂はないけど、持ち主はリゼルだ。クリスマスまではここに置いておくんだろ? それとも、もういらない?」


「ううん! ほしいわ。……ていうか、本当はユアンのものでしょ。いいの?」


「……まあ、いずれは僕のものとも言えなくも……ない……なくなるかも、しれないから……」


「?」


ユアンは変な言い方をしたけれど、私はすぐにリリアナに会いたくなった。店内へ入り、リリアナのところへ行く。


銀の髪、エメラルドの瞳は変わらない。表情も変わらないのに……この子は、昨日までのこの子ではないのだと実感した。

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