第41話

「何もかも、あなたのおかげよ。本当にありがとう」


ユアンを止めてくれた。気持ちをわかってくれた。伝えてくれて、そばにいさせてくれて、ありがとう。


リリアナの感情が流れてくる。


「お礼がしたいの。願いを一つ、かなえてあげる」


願いを一つーー。


本当にかなえてくれるの? 私の願いは、リリアナにとっては面白くないことなんじゃ……。


口には出さなかったけれど、彼女には伝わってしまったのかもしれない。


男性の天使が、鈴をちりんと鳴らした。


「ユアンを、お願いね」


天使にうながされて、リリアナは笑顔のまま、この部屋を出て行った。窓から外へ。そして、空へ。


大きな羽で、軽やかに舞い上がっていく。


ふたりの天使を見上げなから、私は少し不安に思っていた。リリアナは、私の願いを知ってしまったのかしらーー。それでも、笑ってくれたの?


やっぱりリリアナは、天使だったんだ。最初から。

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