第39話
病気になる前に、その病気にならないようにするには、どのくらいさかのぼればいいのだろう……。
自分が正しいことをしていると思いこんでいたユアンは、師匠であるヴェリルに相談したが、注意を受ける。
それはしてはいけないことだ。そんなことが許されるなら、世の理などないのと同じこと。
わかっている。それはわかっているのだ。でもーー!
「その当時から、僕はちょっとおかしかったのかもしれない。先生や兄さんの注意を聞かずに、リリアナを復活させることばかり考えていた」
ユアンはリリアナのお墓へ行き、そこにリリアナの魂が漂っていることを知った。過去へ行かなくても、今ここに、リリアナがいる!
「僕は人形のリリアナに、本物のリリアナの魂を入れようとして……色々と、失敗したんだ」
リリアナには拒絶され、逃げられ、それを追いかけて、知らない世界へ。記憶を失い、覚えているのは自分の名前だけだった。
「僕は、罰せられるかもしれない。先生には破門され、リリアナを迎えにくる天使には、どんな処罰を受けるか……」
「ヴェリルは、ユアンを見守ってるわ。ユアンが間違った方へ行きそうになったら、きっとまた注意してくれるわよ。天使だって、同じだと思う。罰を与えるなら、とっくにそうしてるんじゃない? きっと、リリアナの気持ちも考えてくれたんだと思うわ」
「そうかな」
話しているうちに、私の家に着いた。これ以上遅くなったら、ママが心配する。でも、まだユアンと話していたかった。
「こんな話を聞いても、君はまだ僕を好きでいてくれるの?」
少し自信なさげに言う表情が、子どもみたいだと思った。なんと言うか……可愛い。……不謹慎かしら?
「当たり前よ! ひとめぼれなの。交差点で助けてもらったときから、私はユアンが好き」
言ってしまった。はっきりと、言ってしまった!
「リゼル、僕は……」
「返事はまた今度でいいわ! 送ってくれて、ありがとう!」
恥ずかしかったし、ユアンが何を言うのか怖かったので、私は慌てて門を開けて中へ入った。
そしてそのまま振り返らずに、玄関へと走った。
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