第37話

リビアンがすぐに手を離してくれた。


「じゃ、俺は帰るよ。お母さん、あまり遅くなるなよ!」


「わかってるわよ~。すぐに帰るわ」


ユアンはやんわりと私の手を離し、マクシミリアンさんに聞く。


「店長、リゼルを送ってきても、いいですか?」


「もちろん。リゼルさん、またきてくださいね」


その横で、ルチルさんも手を振ってくれた。


私たちはお店を出て、のんびりと歩き出した。私の家は、ここから歩いて十五分ほどだ。ゆっくり歩くなら、二十分以上はかかるかな。


なるべく長く、ユアンと一緒にいたかった。いつもみんながいるから。それはそれで楽しいんだけど、たまには二人で話したい……とも思うの。


「ユアンは……リリアナの魂が天界へ行くことに、納得してるのーー?」


突然はっとした。もうリリアナの魂は、旅立ってしまったのかしら? 私とのんびり歩いている暇なんてないんじゃーー!


「いいんだ。もうとっくに、お別れは言ってある。そもそも僕は、リリアナのことを忘れていたんだから。あの人形にリリアナの魂が宿っているだなんて、知らなかったんだから。ーーリリアナにも、悪いことをした」


「そんなことはないと思うわ。リリアナはユアンのそばにいられるだけで、幸せだったんだから」


私にはわかる。それより。


「ユアンは心を読むの? テレパシーみたいなもの? 魔法使いだから?」


彼はおかしそうに笑うと、違うよと言った。


「君はわかりやすいから。喜怒哀楽がはっきりしていて、素直だ。そういうのは……とてもいいと思うよ。好感がもてる」


それって私を好きってこと? でも、私の気持ちとは同じではないわね。

やっぱり、子どもにしか見てくれないんだな。

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