10 ユアンの過去

第36話

10 ユアンの過去



足が地面から浮いた……と思うと、私たちは何もない空間を飛んでいた。

重力がないというのは、こういうことを言うのかな?


けれど、あっちこっちをふらふらするというのではなく、ユアンに導かれて、まっすぐに進んで行く。


薄暗い世界から、少しずつ明るい世界へ。


そして、私たちは雑貨店『虹色の羽』へと戻ってきた。


「おそーい! 待ちくたびれちゃったわよ!」


みんなで店内に到着したところで、ルチルさんの声を聞いた。


「えっ! ルチルさん、どうしたの?」


「誰もいないし、何かあったのかと思うじゃない」


「お母さん、勉強会は?」


「終わったから、ここにきたのよ。あ、店長、かってに閉店にしちゃったけど」


誰もいないお店にお客様がきても困るしね、と笑うルチルさんに、店長さんはお礼を言ってたずねた。


「勉強会とは?」


「スピリチュアルの勉強会です」


「それは興味深いですね。お話を聞かせてくださいませんか?」


「ええ、喜んで」


二人は気が合うのだろう。魔法使い同士みたいなものだから。そこにはユアンも入るのか。


「俺、リゼルを送ってくるよ」


リビアンが私の手を取り、歩き出した。


「あ、僕が!」


ユアンが反対側の私の手を取る。

私は二人に手をつかまれて、動けなくなった。三人で仲良く……という感じではない感じだ。

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