第35話

ええっ! マクシミリアンさんて、魔法使いなの? そんなような気はしていたけど。


「わかりました。私が責任をもって管理いたします。リゼルさんは何も心配することはありませんよ。あなたは今までと、何も変わりません」


マクシミリアンさんがユアンを助けたのは、偶然ではなかったのかもしれない。

ユアンが知らない世界で無意識に助けを求めて、それを察知したのでは? ユアンが魔法使いだって、わかっていたのでは? 無意識に、ユアンが悪いことをしないように見ていたのでは?


じゃあ、リリアナという人形に、リリアナの魂が入っていると……最初からわかっていたということも……ありえる……?


私の中にあるという、小さな魔法のかけらにも、気づいていたのかも……。


マクシミリアンさんは私を見ていた。意味ありげな視線に、ドキリとする。彼はわざとらしく腕時計をちらりと見て、声を張った。


「あまり帰りが遅くなると、リゼル嬢のご両親が心配されます。彼女だけでも帰したほうが……」


「いやよ! こんな中途半端に一人だけで帰れないわ!」


「では、続きは後日にでもいたしますか」


ヴェリルはユアンに言った。


「私はもう少しここに残る。君のお兄さんに会って行くよ。君は……ガルデニアに帰るんだろう?」


「はい」


「帰り方はわかるな? 任せる」


ユアンのお兄さんの幸せを確かめ、弟の無事を伝える。ヴェリルにはここでの仕事があるようだった。


記憶を取り戻した魔法使いユアンは、私たち三人をつれて、もとの世界へと飛び立った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る