第34話
「さて、天使に選ばれた少女リゼルよ。君はどうしたい?」
天使って、リリアナのことだったんだ。私の中には、まだリリアナの気持ちが残っている。
「リリアナは、天界に行くことを望んでいるようよ。ユアンには、前に進んでもらいたいって」
「でも、僕は兄さんのために……」
「ユアンのお兄さんは、今でもリリアナのことを思っているの? 忘れられないのはユアンでしょ?」
彼は顔を上げると、私の目をじっと見つめてきた。
きついことを言った?
きらわれるかもしれない。
でも、ユアンには幸せになってもらいたい。
「……兄さんは、去年結婚した。今さら兄さんとリリアナをくっつけようとしたら、義姉さんを不幸にすることになるな。……そんなことも、僕はわからなかったのか」
自分を責めるように言うユアンだけど、それは「理由」なのだとわかった。本心は、やっぱり自分がリリアナに、そばにいてほしかったんだよね。
「リリアナのことは、彼女の迎えの天使に任せよう。では、ユアン。リゼルの中にある、盗んだ時間はどうする? 自分で返していくのか?」
「はい……。毎日、一秒ずつでも返せば、それほど問題はないかと……」
リビアンが「それはどうかな」と口をはさんだ。
「俺が気づいたみたいに、気づくやつがいないともかぎらないし」
今度はマクシミリアンさんが「そうですね」と同意する。
「一分くらいなら、何かのためにとっておいてもいいのでは? ここぞというときに、使える一分は重宝しますよ」
ヴェリルは何も言わず、マクシミリアンさんを数秒見つめた。
「では、時間の管理は君に任せよう」
「私が?」
「ガルデニアの魔法使いは君だからな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます