第34話

「さて、天使に選ばれた少女リゼルよ。君はどうしたい?」


天使って、リリアナのことだったんだ。私の中には、まだリリアナの気持ちが残っている。


「リリアナは、天界に行くことを望んでいるようよ。ユアンには、前に進んでもらいたいって」


「でも、僕は兄さんのために……」


「ユアンのお兄さんは、今でもリリアナのことを思っているの? 忘れられないのはユアンでしょ?」


彼は顔を上げると、私の目をじっと見つめてきた。

きついことを言った?

きらわれるかもしれない。

でも、ユアンには幸せになってもらいたい。


「……兄さんは、去年結婚した。今さら兄さんとリリアナをくっつけようとしたら、義姉さんを不幸にすることになるな。……そんなことも、僕はわからなかったのか」


自分を責めるように言うユアンだけど、それは「理由」なのだとわかった。本心は、やっぱり自分がリリアナに、そばにいてほしかったんだよね。


「リリアナのことは、彼女の迎えの天使に任せよう。では、ユアン。リゼルの中にある、盗んだ時間はどうする? 自分で返していくのか?」


「はい……。毎日、一秒ずつでも返せば、それほど問題はないかと……」


リビアンが「それはどうかな」と口をはさんだ。


「俺が気づいたみたいに、気づくやつがいないともかぎらないし」


今度はマクシミリアンさんが「そうですね」と同意する。


「一分くらいなら、何かのためにとっておいてもいいのでは? ここぞというときに、使える一分は重宝しますよ」


ヴェリルは何も言わず、マクシミリアンさんを数秒見つめた。


「では、時間の管理は君に任せよう」


「私が?」


「ガルデニアの魔法使いは君だからな」

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