第31話
「ユアンは無意識に魔法を使っていた。毎日二秒、昼と夜とで一秒ずつ、時間を盗んでいたんだ。君がガルデニアに行ってから、何日たった? 毎日盗んでいた時間は、一分くらいにはなっただろうね」
厳しいヴェリルの声に、ユアンは目を丸くして叫ぶ。
「時間を盗んでいた? 僕が!?」
「リリアナを救うために時間をどうしようとしていたのかは、私にはわからない。でも、君は、してはいけないことをしようとした。いや、すでにしている。リリアナを人形にしたのは、君だね。ユアン」
ユアンは何かを言おうとして、そのまま口を閉じた。それは肯定の意味なの?
「正しく言えば、リリアナの魂を人形の中に封じこめたということだが」
私はヴェリルの服の袖をつかんで、知っていることを伝えた。
「リリアナがそうしたかったの。ユアンのそばにいたかったから」
ヴェリルは、ユアンとリリアナの魔法の先生だ。二人は魔法の才能があったので、もっとも偉大な魔法使いヴェリルに、魔法を教えてもらっていた。
リリアナはユアンと一緒に魔法を勉強できることが嬉しかった。小さいときから、ユアンのことが大好きだったからだ。
ユアンもリリアナのことが好きだった。お互いに同じ気持ちでいたのに、それを伝えられなかったのは、ユアンのお兄さんがリリアナのことを好きだったから。
ユアンはお兄さんに幸せになってもらいたくて、リリアナには何も言えなかった。
(何これ。何これ。どうしてこんなことがわかるの。私、今度はユアンとシンクロしてるの?)
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