第30話

石碑にはリリアナの名前。そして、その前で涙をこらえているのは、少年のユアンだった。


これは過去の幻影? 現実の大人のユアンは、過去の自分を見つめていた。


リリアナの気持ちが私の中に入ってくる。


ああ……、リリアナは、病気で亡くなったんだ。苦しまなかったことが救いだったと、喜んでいる。


ただ、悲しいのは……もうユアンのそばにいられないこと。


一緒に魔法の勉強をしているのは、とても楽しかった。


魔法使いとして、人の役に立つことをするのが夢だった。


ユアン、立派な魔法使いになってね。


(リリアナは、十六歳でなくなったんだ)


リリアナはこの地で大好きな人々を見守り、納得して、天界へと旅立とうとしていた。


大人になったユアンは、魔法使いと呼べるようになっていた。彼はリリアナが亡くなった過去の世界へ行き、魔法の力で彼女を救おうと考えていた。


『過去を変えるなんて、いけないことよ。諦めて、ユアン!』


『いやだ! 僕は諦めない!』


ユアンのしようとしていたことを察知したヴェリルは、なんとか阻止した。

その衝撃で、ユアンを止めたかったリリアナは人形になり、ユアンは記憶を失って、二人はガルデニアへと飛ばされたのだった。


『この知らない世界で、新しく人生をやり直すのもいい。穏やかに生きていくのならば、私は静観しよう』


ヴェリルは二人を見守るつもりでいたのに。

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