第28話

「君は彼女と似ていると思うよ」


いきなりヴェリルが現れた。夢で見たときと同じ、大人の姿だ。


「君が彼女を羨ましいと思うように、彼女も君を羨んでいる」


「どうして?」


リリアナが私を羨むなんて。


「彼女はもう人ではないから。彼のそばにいられないから」


だから! ユアンが私と結婚すれば、二人はいつまでも一緒にいられるんじゃない。


(ーーん? ……それは……なんだか、いやだわ……)


「ははっ。君って面白いね」


ヴェリルは本当におかしそうに笑っている。


「ちょっと、そんなに笑わなくたって……」


人数分のお茶の用意をして、ユアンが店内に入ってきた。

彼はヴェリルを見て、一瞬かたまり、トレーをそっとあいているスペースへ置いた。そして数秒後に、ゆっくりとこちらを向いた。


「……先生……?」


「やあ、ユアン。久しぶりだね」


えっ? えっ! どういうこと? ユアンとヴェリルは知り合いだったの?


先生って? なんの?


大人の二人は歳が近いように見えるけれど。


ヴェリルって、ガルデニアの精霊じゃなかったの?


ユアンは人間だって。


私はわけがわからずに、ただ二人を交互に見ていた。


「ユアン、思い出してくれたようだね」


「夢で……あなたに会いました」


「では、出向いたかいがあったというものだ。リリアナのことは、思い出した?」


ユアンは「リリアナ……」とつぶやき、私の隣にきた。リリアナの前に。


「リリアナ……? どうして、こんな……。僕が……!?」


ヴェリルの身体から、冷気が漂ってきた。そして、声を荒らげてこう言ったのだ。


「ユアン、思い出しなさい! 自分の犯した罪を!」


罪って? ユアンが何をしたの?


マクシミリアンさんとリビアンが、驚いてやってきた。

私たちは雑貨店から、どこか知らないところへと飛ばされたのだった。

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